ロシアW杯アジア最終予選が31日に行われ、B組首位の日本代表(FIFAランキング44位)は3位のオーストラリア代表(同45位)と埼玉スタジアムで対戦し、2-0で勝利した。この結果、日本は6大会連続6度目のW杯出場が決まった。試合は前半41分にFW浅野拓磨(シュツットガルト)のゴールで、日本が先制に成功。後半37分にはMF井手口陽介(ガンバ大阪)のミドルシュートが決まり、勝利を確実にした。守ってはGK川島永嗣(メス)を中心に無失点に抑えた。

 

 井手口、貴重な追加点となる代表初ゴール (埼玉スタジアム)

日本代表 2-0オーストラリア代表

【得点】

[日] 浅野拓磨(41分)、井手口陽介(82分)

 

 2016年9月1日、埼玉スタジアムで行われたアジア最終予選初戦のUAE戦。日本は1-2で敗れた。これまで同予選の初戦を落とした国はW杯本大会に進めていなかった。それから1年後の8月31日。日本が不吉なジンクスを破った歴史的な日となった。

 

 オーストラリアに勝利すれば日本はロシア行きが確定する。相手はロングボールを駆使したパワープレーを捨て、パスワークに特化したチームとなっていた。

 

 試合開始から“新生”オーストラリアは後ろから丁寧につないできた。だが、オーストラリアの縦パスをDF吉田麻也(サウサンプトン)、DF昌子源(鹿島アントラーズ)、MF長谷部誠(フランクフルト)が読んでインターセプト。攻撃の芽を摘み続けると、流れは徐々に日本へ傾いていった。

 

 14分にはMF乾貴士(エイバル)が右サイドで相手DFをかわし左足ミドルを放つ。16分には井手口が左サイドからクロスを供給。ファーサイドに走り込んだ浅野がヘッドで合わせた。いずれもゴールにはならなかったものの、日本が押し込む時間が増えていく。守ってもMF山口蛍(セレッソ大阪)、井手口のインサイドハーフが相手のボランチにプレスを積極的にかけて、リズムを掌握した。オーストラリアのパス回しはさほど脅威に感じられなかった。

 

 このままスコアレスで試合を折り返すと思った41分、日本が先制に成功する。敵陣左サイドでDF長友佑都(インテル)がボールをキープ。するとオーストラリアDFの足が一瞬止まった。長友はその隙を見逃さず、DFラインとGKの間にクロスを入れた。このエアーポケットに浅野が走り込み、左足インサイドで合わせる。冷静にコントロールしたシュートはゴール右に決まった。長友からのボールに反応していたのは浅野ただ1人。まるで浅野以外の時が止まったようだった。

 

 待望の先制ゴールが決まり、日本は1点リードで試合を折り返した。後半に入っても最初にチャンスを作ったのは日本だ。12分、カウンターの場面。浅野の自陣からのクリアーボールをセンターサークル付近でFW大迫勇也(ケルン)が収め、左サイドを駆け上がる乾にスルーパスを送った。乾はスピードに乗ったドリブルでペナルティーエリア左へ侵入し、左足でシュートを放つ。シュートはDFにブロックされたが、流れは日本にあった。

 

 敵将のアンジェ・ポステコグルー監督はしびれをきらし25分にFWトーマス・ロギッチに代えて、FWティム・ケーヒルをピッチに投入した。“日本キラー”の登場にスタジアムは大きなブーイングに包まれた。サポーターにとっても何度も苦渋を舐めさせられてきた存在だ。しかし、パスワーク重視のスタイルがケーヒルの長所を消したのか、この日の彼からはかつての怖さが消えていた。

 

 ケーヒルが投入された6分後、日本代表指揮官ヴァイッド・ハリルホジッチも動く。乾に代えてMF原口元気(ヘルタ)を投入。この交代策が見事にハマった。32分、大迫がピッチ中央でボールを持つと左サイドを駆け上がる原口へはたく。原口がドリブルでペナルティーエリア左までボールを運び、グラウンダーのパスをファーサイドの井手口に送った。このボールを受けた井手口はワントラップして右足を振り抜くが、シュートは惜しくも相手DFに当たり、GKにキャッチされた。だが、この原口-井手口のラインが大仕事をやってのける。

 

 37分、敵陣でボールを奪った原口が相手3人に囲まれつつも、左サイドを走る井手口にパスを渡した。井手口は左から中央へカットインしてペナルティーアーク付近から右足を一閃。井手口が「枠の中に入ればいいかなと思ったくらいです。それで力が抜けてよかったのかなと思います」と振り返ったシュートは、相手GKのマシュー・ライアンの手をかすめつつ、ゴール右に突き刺さった。試合にダメを押す待望の追加点を21歳の若武者が決めた。

 

 その後、日本は無理にパスを繋がず、セーフティーファーストで時計の針を進め、タイムアップ。地鳴りのような歓声がスタジアムに響き、サポーターたちはロシア行きの喜びを分かち合った。試合後、ハリルホジッチ監督は「日本国民全員にとって重要な試合であり、国民全員の勝利。今晩の選手の姿には誇りを感じている」と声援を送り続けた日本サポーターと90分間を戦い抜いた選手をねぎらった。

 

 攻守にわたり活躍し、貴重な追加点を奪った井手口はフル出場。相手ボランチへのプレスをかけ続けたことに関しては、「それは監督の指示。チームとしての戦術でした」と明かした。ハリルホジッチ監督の起用、狙いがズバリ当たったかたちだ。

 

 FW本田圭佑(パチューカ)、MF香川真司(ドルトムント)がピッチにいなくとも、22歳の浅野、21歳の井手口のリオ五輪世代が結果を出してロシア行きを決めた。本番まであと1年。この先、日本がどのような進化を遂げるのか、非常に楽しみである。キャプテンの長谷部が「ここにいる誰1人として、W杯に行ける保証はありません」と語ったように、これからチーム内の競争が一層、激しくなることは間違いない。

 

(文/大木雄貴)