二宮清純: 今回のゲストは1998年フランスワールドカップ(W杯)に出場された中西永輔さんです。宜しくお願いします。中西さんと言えば、四日市中央工高時代、小倉隆史さん(名古屋グランパス元監督)と同期で92年の高校サッカー選手権で優勝を果たし、卒業後にジェフユナイテッド市原(当時)に入団。ゴール後のバク宙パフォーマンスで人気を博しました。お会いするのは16年ぶりです。

中西永輔: こちらこそ、宜しくお願いします。

 

 

二宮: (昔の取材掲載誌を見せながら)この時は、まだお若いですね。

中西: 本当ですね。あとでじっくり読み返したいのでもらってもいいですか。

 

二宮: どうぞ、どうぞ。ところでお酒はよく飲みますか?

中西: 飲む時は結構飲みますね。ビールが多いですが、焼酎も好きですよ。

 

二宮: 今回はそば焼酎『雲海』の「そばソーダ」を飲みながらサッカー談義に花を咲かせたいと思います。

中西: このお話をいただいた時、そば焼酎のソーダ割りってどんな味なんだろうと興味津々で、今日がとても楽しみでした(笑)。

 

二宮: それでは、乾杯といきましょう。

中西: 凄く爽やかな味わいですね。焼酎なのでクセが強いと思っていましたが、後味がすっきりしています。今の季節にぴったりですね。

 

二宮: ソーダがいいアシストをしてくれているでしょう。

中西: ソーダのおかげでそば焼酎の香りが引き立っているような気がします。サッカーもアシストが重要ですからね(笑)。

 

二宮:「どんな料理にも合う」とゲストの方々にも好評です。

中西: 今日はイタリア料理のお店ですが、料理とのマッチングが楽しみです。お酒が美味しいと食事も進みますからね。

 

二宮: 日本が初めて世界の舞台で戦ったフランス大会メンバーの中西さんに伺います。先日、サッカー日本代表が埼玉スタジアムで行われたオーストラリア戦に2対0で勝利。この結果、6大会連続6度目となるW杯出場を決めました。率直な感想は?

中西: ホッとしました(笑)。選手、監督、チームスタッフもホッとしたと思います。

 

二宮: 今回は、FW浅野拓磨(シュツットガルト)やMF井手口陽介(ガンバ大阪)など、若手が活躍しました。

中西: ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は今回のアジア予選でいろいろなフォーメーションや選手を試していました。それにしても、勝てばW杯が決まる大一番で若手を使うことは凄く勇気がいる決断だったと思います。

 

二宮: ハリルホジッチ監督はメンバーを固定せず、コンディション重視で選手を選びましたね。

中西: 今まで代表の中軸を担ってきたFW本田圭佑(パチューカ)やMF香川真司(ドルトムント)をスタメンから外すのは勇気が要ります。それだけハリルホジッチ監督やチームスタッフは選手のコンディションをしっかり把握して、若手を使ったのだと思います。

 

二宮: 若手が結果を出したことで本田、香川は厳しい立場に追い込まれました。

中西: 本田は「競争は大歓迎」と発言したみたいです。ある意味、それは本心だと思います。日本サッカー界のために若い選手が出てくることは喜ばしいこと。その反面、自分が出場できないとなると、選手としては少し複雑な心境ではあると思いますね。

 

二宮: 悔しさがなくなったら、現役としては終わりでしょう。

中西: もちろんです。だから、本田も香川もこれからどんどんコンディションを上げていくと思いますよ。W杯まではまだ、9カ月もありますからね。

 

 脱ポゼッションサッカー

 

二宮: 試合内容についてはいかがでしょう? ボール支配率、いわゆるボールポゼッションは日本が33.5%。対するオーストラリアは66.5%。指揮官の“脱ポゼッションサッカー”が成功したかたちです。

中西: オーストラリアがパスを繋ぐサッカーに切り換えたことで、日本は戦いやすかったと思います。

 

二宮: 以前のオーストラリアは前線に大柄な選手を置き、ゴール前にロングボールを放り込むパワープレーを得意としていました。

中西: 背の高い選手を目掛けて後方からロングボールを蹴られると、こちらの陣形がどんどん後ろに下がってしまう。そうなると、攻撃の時に全体を押し上げにくくなってしまうんです。オーストラリアがパスサッカーで挑んできたので、日本は中盤でボールを奪うチャンスがありました。

 

二宮: DFの立場からすると、オーストラリアにはパワープレーを仕掛けられる方が嫌ですか?

中西: 嫌ですね。競り合いに負けて相手の2列目の選手がどんどん押し上げてくる。こうなると、セカンドボールも拾われてしまって、防戦一方になってしまいます。

 

二宮: 日本の中盤はアンカーに長谷部誠(フランクフルト)、インサイドハーフに山口蛍(セレッソ大阪)と井手口。この3人が機能しました。

中西: この3人が前方でボールを奪って攻撃に繋げていた。長谷部はもちろん、山口と井手口もボール奪取の能力は高い。ハリルホジッチ監督の采配がうまくハマりました。

 

二宮: オーストラリアの戦術が180度変わったことを見越しての起用だったのでしょうね。

中西: そうだと思います。ただ仮に途中からオーストラリアがパワープレーに切り換えてきても、何とか対応できそうな人選ではありましたね。

 

二宮: センターバックの成長著しい昌子源(鹿島アントラーズ)とイングランドでプレーするディフェンスリーダー・吉田麻也(サウサンプトン)もいい仕事をしました。

中西: 吉田はイングランド・プレミアリーグで屈強なFWと渡り合っています。ハリルホジッチ監督はある程度、安心して任せていたのではないでしょうか。

 

二宮: ハリルホジッチ監督は「デュエル」(決闘)という言葉を好みます。

中西: 昔は“球際”と言われていました。ハリルホジッチ監督が就任して口酸っぱく“デュエル”という言葉を使うことによって選手の意識は相当変わったのではないでしょうか。

 

二宮: ボール支配率は低いにも関わらず、シュートチャンスは日本の方が多かった。日本が17本のシュートを放ったのに対して、オーストラリアはわずかに5本でした。

中西: ショートカウンターが機能した証拠でしょうね。それに今までだとオーストラリアに球際で負けていた場面でも、今回は負けていなかったことも大きいと思います。

 

二宮: フィジカルが強くなってきたと?

中西: それももちろんですが、体の当て方がうまくなった印象があります。相手FWに自分の体重を預け過ぎない。体勢を低くして、相手の重心のバランスを崩すために力で押すばかりではなく、引くことも大事なんです。真っ当に当たるのではなく、少しかわしながら相手に勝負を挑んでいます。

 

二宮: 現役時代、手強かったFWは?

中西: 浦和レッズに在籍していたワシントンです。

 

二宮: 彼は身長189センチ、体重88キロの巨漢ながら足元もうまかった。ブラジル代表歴もあるストライカーでした。

中西: 駆け引きの中で、ワシントンのボディバランスを崩そうと当たりにいくのですが、全く動かない。逆に、僕の押す力をうまく使われて綺麗に反転されてしまいました。まともに当たってもダメなんだと、その時に痛感しました。

 

二宮: 中西さんが力を入れたら、相手はその力を利用して踏ん張ることもできてしまう。そういう時は力を抜くことが有効になる。まさに“柔よく剛を制す”ですね。

中西: おっしゃる通りです。こういったテクニックをこの前のオーストラリア戦で日本代表の選手たちは実践できていたと思います。

 

二宮: ハリルジャパンのもう1つのコンセプトは「タテに速く攻める」――。

中西: 僕は日本に合っていると思います。日本人は器用だからポゼッションサッカーもできますよ。これまで、日本人は生真面目過ぎるから“綺麗にパスを回そう”と意識し過ぎて決定機を逃すことも多かった。

 

二宮: パスを回すのはゴールを奪うための手段のはずが、目的に変わっていた時期がある。

中西:「何でそこでタテにパスを入れてシュートを打たないの!?」という場面が多かったですよね。ユース世代なども世界レベルの国を相手にパスは回せるのですが最後の決定的は仕事ができない。

 

二宮: 求められているのはうまい選手より恐い選手ですよね。

中西: ハリルジャパンになってかなり積極的なタテへのトライが増えた印象が強いです。日本人には「タテに、タテに」とばかり言い過ぎると、それしかやらなくなってしまう(笑)。今の代表選手のレベルは高いですから、遅攻と速攻を使い分けることは可能だと思います。

 

 監督と呼んでほしい

 

二宮: 中西さんの代表時代について伺います。97年にA代表初キャップを記録しました。ちょうどフランスW杯アジア最終予選の年ですね。イランとのプレーオフを制して初めてW杯出場を決めました。いわゆる“ジョホールバルの歓喜”です。

中西: 決まった当初は本当にうれしかったですが、予選はかなり苦戦しました。

 

二宮: ジョホールバルには私も行きました。イランとのプレーオフ前日、相手の主力FWコダダド・アジジが報道陣の前に車いす姿で現れましたが、翌日の日本戦にはスタメン出場するなど心理戦もありました。

中西: アジジの情報を聞いて「絶対ウソだろ」と日本代表のみんなと話したのを覚えています。イランは過剰に演出し過ぎましたよね(笑)。

 

二宮: 最終予選は第3節、ホームでの韓国戦に1-2と敗れ、第4節のアウェーでのカザフスタンとの戦いに引き分け。この結果を受けて当時監督だった加茂周さんは更迭。岡田武史コーチが監督に昇格といろいろありました。

中西: 慌ただしく加茂さんの更迭が決まってしまった。初めて代表に選んでくださった監督だったので僕もショックでした。選手間でもいろいろと話し合いました。

 

二宮: 部屋にお酒を持ち寄って話し合ったと伺っています。

中西: みんなで集まり、お酒を飲みながら話をしましたね。お互いに溜まっていることもあるから、包み隠さずに話し合おう、と。

 

二宮: 以前、当コーナーに出ていただいた城彰二さんは先輩FWの三浦知良さん(横浜FC)に「カズさん、明らかにコンディション悪いですよね? オレが出場すればもっといいプレーができますよ」と言ってのけたそうです。

中西: どうでしたかねぇ(苦笑)。確かに「言いたいことを言え」と部屋に呼ばれた記憶はあります。

 

二宮: チームを預かるにあたっては岡田さんも悩まれたでしょうね。

中西: そうだと思います。やると決めてからは岡田さんは自分でスイッチを切り替えたんです。

 

二宮: スイッチとは?

中西: 今までは年齢が上の選手は「岡ちゃん」と呼んでいたんです。ですが、「もうこれからは岡田さん、もしくは岡田監督と呼んでほしい」とみんなに伝えたんです。コーチは選手と監督の繋ぎ役なので「岡ちゃん」で良かったのですが、自分が監督になったら選手との間に良い意味で1枚壁を作ったんです。それが奏功し、チームは良い方向にいきました。

 

二宮: コーチ時代とは、選手との関係も大きく変わりましたか?

中西: 驚くほどガラリと変わりました。W杯出場にかける岡田さんの覚悟が伝わってきましたね。

 

二宮: やはり、岡田さんは中西さんの人生の中でも重要な人物ですか?

中西: はい。すごく大きな影響を与えてくれた人だと思います。僕の人生を変えてくださった方です。

 

二宮: 中西さんが高校を卒業してジェフに入団した時、岡田さんはジェフのコーチでした。

中西: 入団3年目の時に少し出場機会が減り、クサりかけたことも一度や二度ではなかった。その時に岡田さんが「諦める前にやれるだけのことはやっておけ。それでダメなら諦めろ!」と声をかけてくれた。叱咤激励してくれたことは凄く嬉しかったです。

 

二宮: もう23年も前の話ですね。気がつくと中西さんのグラスが空いてしまっています。後編ではフランスW杯本戦のこと、Jリーグ草創期の思い出などもたっぷりと。

中西:“球際”の話が多くなりそうですね。その前におかわりをいただけますか?

 

(後編につづく)

 

中西永輔(なかにし・えいすけ)プロフィール>

1973年6月23日、三重県鈴鹿市出身。鈴鹿市立白子中からサッカーの名門・四日市中央工業高へ進学。高校時代は小倉隆史、中田一三とともに「四中工三羽烏」と呼ばれ、1992年の高校サッカー選手権を制する。同年4月にジェフユナイテッド市原(当時)に入団した。身体能力の高さとGK以外はこなせるユーティリティープレーヤーとして活躍。バク宙を披露するゴールパフォーマンスで人気を博した。04年に横浜F・マリノスへ移籍し、06年に現役引退。A代表デビューは97年。98年フランスW杯にはアルゼンチン戦、クロアチア戦に出場。Jリーグ通算309試合、34得点。国際Aマッチ出場14試合。身長174センチ、体重73キロ。

 

 

今回、中西さんと楽しんだお酒は本格そば焼酎「雲海」。厳選されたそばと、宮崎最北・五ヶ瀬の豊かな自然が育んだ清冽な水で丁寧に造りあげた深い味わい、すっきりとした甘さと爽やかな香りが特徴の本格そば焼酎です。ソーダで割ることで華やかな甘い香りが際立ちます。

提供/雲海酒造株式会社

 

<対談協力>

イタリアンバー ボッチャーノ ビア&ワイン 恵比寿ガーデンプレイス店

東京都渋谷区恵比寿4丁目20-3 恵比寿ガーデンプレイス タワー棟39階

TEL:03-6447-7885

 

営業時間

月~金 ランチタイム11:00~16:00/ディナー17:00~23:00 

土・日・祝日 11:00~23:00

(定休日は施設の休業日に準ずる)

 

☆プレゼント☆

 中西さんの直筆サイン色紙を本格そば焼酎「雲海」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はこちらのメールフォームより、本文の最初に「中西永輔さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、郵便番号、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)を明記し、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は10月12日(木)までです。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。

 

◎クイズ◎

今回、中西永輔さんと楽しんだお酒の名前は?

 

お酒は20歳になってから。

お酒は楽しく適量を。

飲酒運転は絶対にやめましょう。

妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

 

(構成・写真/大木雄貴)


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