13日、ボクシングのダブル世界戦がエディオンアリーナ大阪で行われた。IBF世界スーパーバンタム級タイトルマッチは同級3位の岩佐亮佑(セレス)が王者の小國以載(角海老宝石)を6ラウンド2分16秒TKOで破った。岩佐は2度目の世界挑戦で初の戴冠。WBOライトフライ級タイトルマッチは王者の田中恒成(畑中)が同級13位のパランポン・CPフレッシュマート(タイ)を9ラウンド1分27秒TKOで下し、2度目の防衛に成功した。

 

 黄色のボクシンググローブが何度も赤く染まる。挑戦者の岩佐がパンチを当てるたびに、王者・小國の血が付いたのだ。口元は真っ赤。レフェリーが一旦、試合を止める。ドクターが出血を確認すると、続行は不可能と判断した。この瞬間、IBF世界スーパーバンタム級の王座は小國から岩佐へと渡った。

 

 高校時代に対戦経験のある両者。当時は大差の判定で1学年下の岩佐が小國を破っている。試合は1ラウンドから動いた。2分22秒、岩佐の左ストレートが小國の顔面をとらえた。被弾した小國は尻餅をついてダウンした。サウスポースタイルの岩佐。2ラウンドに入っても、その左は健在だった。強烈な左ストレートが王者を襲う。小國はこのラウンドは2度のダウンを喫した。

 

 3ラウンド以降もほぼ岩佐のぺース。左ストレートを軸に小國へプレッシャーをかけ続けた。そして6ラウンド2分を過ぎたところで、小國はドクターストップ。TKO勝ちにより、新チャンピオンが誕生した。

 

 岩佐は高校3冠の肩書きを引っ下げて、2008年にプロデビュー。無傷の8連勝で日本バンタム級のタイトルに挑み、当時の王者・山中慎介(帝拳)にTKO負けを喫した。その後、バンタム級で日本タイトルとOPBF東洋太平洋のベルトは掴んだが、世界のベルトには縁がなかった。試合後に語った「本当に長かったっす」とは岩佐の本音だろう。

 

「長らくお待たせしました。『世界チャンピオンになる』と言われて、もう数年も経ちました。順風満帆なボクシング人生じゃないですが、世界チャンピオンになることができました。いちから応援してくれた人たちのおかげです」
 プロデビューから9年。岩佐は2度目の世界挑戦でベルトを掴んだ。

 

「自分にがっかりしています」
 2度目の防衛も表情は冴えなかった。田中は9ラウンドTKO勝ちをしたものの、内容に不満が残った。

 

 1ラウンド終了間際に相手のパンチを食らい、田中はダウンを喫した。序盤は挑戦者に押される波乱の展開で幕を開けた。それでも王者は徐々にペースを掴み、相手を押し込んでいく。コンビネーションも決まり始め、ダウンこそ奪えなかったが、中盤は盛り返した。

 

 8ラウンドには田中が挑戦者をグラつかせる場面も。田中のパンチの回転数が上がり、相手を追い込んでいった。そして9ラウンドに試合は再び動いた。田中のワンツーが挑戦者を襲い、ダウンを奪った。田中はラッシュを仕掛け、トドメを刺しにいく。挑戦者も耐えていたが、足は完全に止まっていた。最後はレフェリーが2人の間に割って入り、両手を振った。田中は苦しみながらも王座を守った。

 

 かねてから熱望しているWBA王者の田口良一(ワタナベ)との統一戦。負けなかったことで、その望みは繋いだ。田中は「こういう試合なんで……なんてことは言いません。やります!」と宣言。年末に向けて交渉を進めていくことを明らかにした。

 

(文/杉浦泰介)