ロシアワールドカップ出場を決めたハリルジャパンは、これから「対世界」のマッチメークに切り替える。

 

 チーム立ち上げから2年半、これまで29試合を消化してきたが、その内訳を見てみれば「対アジア」が26試合と圧倒的である。アジア以外はヴァイッド・ハリルホジッチ監督が初めて指揮を執った2015年3月のチュニジア戦、16年6月のキリンカップ(対ブルガリア、ボスニア・ヘルツェゴビナ)しかないのだ。W杯予選、東アジア杯など公式戦が続いたとはいえ、これには国際親善試合のルール変更と、アジア予選の長期化、そして欧州の事情が大きく影響していると言える。

 

 まずルール変更だが、国際サッカー連盟(FIFA)の規定により、2014年から国際Aマッチデー期間中に連続して行う2試合は同一大陸内でこなさなければならなくなった。たとえば先の試合でアジア予選を中東で戦い、後の試合は予選の日程が組み込まれていないからといって欧州に出て国際親善試合を行うことはできない。

 

 次にアジア予選の長期化。前回の最終予選は1組5チーム制だったが、今回は6チーム制に。日程も6月終了から9月終了に伸びている。最後に挙げる欧州の事情も、無視できない。欧州サッカー連盟(UEFA)は来年から「ネーションズリーグ」をスタートさせる。簡単に言えば国際親善試合を欧州内でリーグ戦形式にするもので、他の大陸との対戦が極端に減ることになる。既に前段階の準備として欧州同士のマッチメークが増えているのが現状である。

 

「対世界」のマッチメークが難しい状況下の中、日本は11月に海外遠征を予定している。一部スポーツ紙によれば欧州に赴き、ブラジル代表、フランス代表、ベルギー代表、スイス代表などが候補に挙がっているようだ。強豪のフランス、ベルギーもさることながら、欧州遠征を予定するFIFAランキング2位のブラジル代表との対戦はぜひ実現してほしいものである。南米予選をぶっち切りで通過しており、ホスト開催で4位に終わったブラジルワールドカップの雪辱に彼らは燃えている。

 

 日本が欧州でブラジルと対戦するとなると、2012年10月以来となる。

 前回の舞台はポーランドのヴロツワフだった。結果は逆に0-4と完敗。筆者は現地で取材したが、意義ある一戦だった。

 

 ザックジャパンはサッカー王国を相手にあくまで主導権を握ろうとした。対アジア、対世界で戦い方を変えるのではなく、短いパスを使いながらスピーディーに攻めていくスタイルをそのままブラジルにぶつけようとした。

 

 ブラジルはネイマール、フッキ、カカ、パウリーニョ、チアゴ・シウバ、ダビド・ルイスなどほぼベストメンバーという布陣。W杯ホスト国で予選が免除されているため、親善試合を無駄にしないとするモチベーションの高さも感じることができた。

 

 立ちはだかるブラジルの強固なディフェンスの前に、日本はプレーの精度を欠き、ミスが重なった。高いライン設定を逆手に取るようにブラジルにはカウンターを狙われ、終始その恐怖にさらされた。

 

 アルベルト・ザッケローニ監督は試合後の会見でこう述べていた。

「私の見解では0-2になった後、選手たちは頭でプレーするのではなくて、本能でプレーしていた。相手がブラジルではなくても相手に何らかの理由でリードを許すケースは必ずや出てくる。そんなケースでも引き続き個人プレーではなく、チームとして戦い続けることを学ばないといけない。このチームは私の性格にちょっと似ていて、決して負けたくないという気持ちを持っている。だからリードされると“何かをしてやろう”という気持ちが出てしまって、個人プレーに走ってチームを忘れてしまうきらいがある。

 ブラジルはスペインと並んで世界最強のチームだ。その相手に日本は良いプレーを見せたと思う。ただ、このチームは勝ちたいというメンタルが強い。だからボールを運ぶべきではないゾーンに運ぶなど悪循環をもたらしてしまっていた」

 

 強敵と肌を合わせて初めて、分かることがある。気づかなかったことに気づかされることがある。

 ハリルホジッチ監督の目指すサッカーはボールを持つ前提に立っていない。組織的にボールを奪って速い攻撃につなげる新たな特徴が、ブラジル相手にどこまで通用するのか。

 

 11月の海外遠征はハリルジャパンにとって非常に大きな意味を持つ。


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