59年ぶりのセ・パ同日優勝決定はなりませんでしたが、セ・リーグは広島、パ・リーグは福岡ソフトバンクがリーグ優勝を決めました。

 

 広島は成熟したチーム

 セ・リーグを制した広島は昨年のリーグ優勝を果たした自信と、日本シリーズで敗れた悔しさ。その両方を糧にしてチームが成長した印象です。

 

 勝因はなんといっても12球団一のチーム打率2割7分3厘を誇る強力な攻撃陣です。ただ広島の強みはそういう相手と戦って「勝った負けた」だけではないんですね。ちょっと説明が難しいんですが、野球は相手があることです。それが、今季の広島は相手と戦っていなかった。もっと先を見ていたというか、チームとしての理想があって、選手全員がそれを理解して、そして個々にやるべきことをきちんとやっていた。それ故の強さという感じです。

 

 だからケガ人が出てもまったくチーム力が落ちない。ひとつピースが欠けたとしても、代わりのピースがあって、しかもきちんと機能するんです。鈴木誠也の4番の穴は松山竜平が埋めて、先発の穴は薮田和樹が埋めましたが、いずれもまったく気負いも背伸びもなかった。実力通り、普段通りのプレーでスッと穴が埋まる。選手層というよりも野球に対する意識の高さというんですかね。時代は違いますが、黄金期といわれた西武に通じるものがあります。

 

 広島は去年は若手や中堅選手の勢いで勝っていた印象ですが、今年は非常に成熟したチームだといえます。2位の阪神以下、他のセ・リーグのチームはそれに比べるとまだまだ発展途上、熟していません。それが順位の差になったのでしょう。

 

 セのCSは荒れ模様

 パ・リーグはシーズン序盤と中盤以降では大きく勢力図が変わりました。序盤、東北楽天が首位を突っ走り、オリックス、埼玉西武がAクラス。優勝候補だったソフトバンクはBクラスをうろうろしていました。ところが結局、ソフトバンクが6割7分に迫ろうかという高勝率でリーグ制覇を果たしました。

 

 パの球団の中ではソフトバンクだけが開幕当初からどっしりと構えていた印象です。ソフトバンクが強かったというのもありますが、他のチームがバタバタと序盤から慌てすぎた、浮き足だったのかなという面もありましたね。

 

 パ・リーグはクライマックスシリーズ(CS)でもソフトバンクが優位でしょう。CSでは主軸の内川聖一も戻ってくるでしょうし、さらに強力な布陣になると思われます。

 

 セ・リーグは3位争いを含めて、まだまだ不透明な状況です。どちらが出場するにしてもサウスポーの好投手を揃える横浜DeNA、そして巨人は不気味な存在です。特に巨人は菅野智之、田口麗斗、マイルズ・マイコラスと三本柱がしっかりしているのが強みです。野手ではケーシー・マギーが好調で、さらに坂本勇人の調子が上がれば下克上まであり得るでしょう。

 

 ファーストステージだけでなくファイナルステージまで、セ・リーグのCSは荒れそうな予感がプンプンしています。

 

image佐野 慈紀(さの・しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商高で甲子園に出場し準優勝を果たす。卒業後に近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日、エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)、ロサンジェルス・ドジャース、メキシコシティ(メキシカンリーグ)、エルマイラ・パイオニアーズ、オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。


◎バックナンバーはこちらから