(写真:大河チェアマン<前列右から2番目>も2季目の「BUILD UP」に自信を覗かせる)

 華々しいスタートを切った男子プロバストボールのB.LEAGUE。「BUILD UP」をテーマに掲げ、進化を目指す2シーズン目が今月29日からスタートする。昨季はB1初代王者に田臥勇太擁する栃木ブレックスが輝いた。仙台89ersと秋田ノーザンハピネッツがB2へ降格し、代わりにB2から西宮ストークスと島根スサノオマジックが昇格した。

 

 東北2クラブがB1から去り、西日本の2クラブが加わったことにより、地区分けも再編成された。西日本の昇格2クラブは西地区へ。西地区のシーホース三河と名古屋ドルフィンズが中地区に移った。東地区には川崎ブレイブサンダースとサンロッカーズ渋谷が中地区から移籍した。

 

 これにより超激戦区と化したのが東地区である。栃木、川崎、アルバルク東京、千葉ジェッツふなばし、渋谷と昨季チャンピオンシップ(CS)を経験した5クラブとレバンガ北海道。大河正明チェアマンも「ルールに則って決めた。やってみなければ分からない」と語ったが、栃木の遠藤祐亮は「昨シーズンから厳しい地区だった。それがさらに厳しくなった」と胸の裡を明かす。

 

 一方で、こんな声もある。昨季準優勝・川崎のキャプテン篠山竜青が「毎週CSレベルのチームと対戦できる。今は楽しみの方が強い」と口にすれば、昨季新人王を獲得した渋谷のベンドラメ礼央は「厳しい中でもまれてうまくなれるのであれば東地区で良かったなと思います」と歓迎ムードだ。

 

 激戦区・東の前哨戦となったのが、9月の関東アーリーカップである。北海道を除く東地区5クラブと中地区の横浜ビー・コルセアーズが参加した。A東京が優勝。準優勝は千葉、3位は川崎、4位は栃木、5位は渋谷、6位は横浜と続いた。

 

 優勝候補は雪辱に燃える川崎

 

 ディフェンディングチャンピオン栃木は司令塔の田臥、守備職人の遠藤、リバウンドの要ライアン・ロシターとジェフ・ギブスの両外国人らが残留したものの、トーマス・ウィスマンHCと昨季CSMVPの古川孝敏(→琉球ゴールデンキングス)らがチームを去った。彼らの多くがバックアップメンバーとはいえ、栃木は組織力が売りのチーム。ファイナルで左アキレス腱を負傷したギブスも開幕には間に合わず、連覇へ暗雲が立ち込めている。

 

(写真:北HC<中央>率いる川崎。今季も篠山<右端>がキャプテンを務める)

 そうなると優勝候補の本命は、昨季の雪辱に燃える川崎だろう。リーグ最高勝率を誇りながらファイナルで栃木に敗れ、涙をのんだ。「昨年は悔し涙を流したので今年はうれし涙で泣きたい」と篠山。川崎は北卓也HC体制を継続し、昨季からの「BUILD UP」を図る。

 

 北HCは昨季の敗因をこう分析する。

「精度ですね。ここ一番のミスが勝ち負けの分かれ道になった。例えばファイナルの残り5分を見るとターンオーバーがありましたし、試合におけるチームルールもディフェンス面では徹底できていなかった。そこを我慢して徹底できるチームが勝つんだと思います」

 

 まず北HCは新加入の選手が合流して最初のミーティングでファイナル残り5分の映像を流したという。「“悔しさを忘れるな”という意図もありましたが、選手が気付かないミスがある。僕からはちょっとしたことを選手たちに指摘しました。“一発勝負だから、細かいところが勝負の分かれ目になる”と言いたかったんです」。それを受けて篠山は「負けた試合はあまり見たくない。でも皆で見ることによって、チームのモチベーションも上がったんじゃないかと思います」と効果を話した。

 

 川崎のアドバンテージは昨季リーグトップの得点力を誇った攻撃陣だ。シーズンMVP&得点王のニック・ファジーカスは今季も健在である。アーリーカップ準決勝のA東京戦では両軍最多の33得点をマークした。内外とシュートエリアの広いオフェンスマシンがリーグ屈指の攻撃陣を牽引する。北HCは、こう意気込む。

「強みはオフェンス。バックコート陣は大きく変わっていません。そこに新戦力のジョシュ(・デービス)と小澤(智将)と(ジュフ・)バンバがどう絡んでいくか。特にジョシュはリバウンドが強く、ボールハンドリングも巧い。そこから去年より速い展開ができる。インサイドのディフェンスが弱いところがあったので、そこはジョシュとバンバで補っていきたい」

 

 新加入で一番の注目株はデービス。島根をB1昇格に導いた身長203cmのビッグマンだ。「ディフェンスとリバウンドが優れています。手も長いですし、連続して高いジャンプができる。ファイナルでは要所でリバウンドをとられたので、そこを期待したい」と指揮官からの信頼も厚い。デービスは「チームのために何でもやりたい。自分の役割を果たし、コーチ陣が望むプレーをする」と語った。

 

 今季のチームスローガンは「CHACE」だ。追い求めるのはB.LEAGUE、全日本総合選手権の2冠。北HCは「速い攻守の切り替えでトランジションを狙って、チームでいいシュートチャンスをつくる。個人ではつくり出せないチーム力、連動したチームパフォーマンスを創出したバスケットボールを展開していきたい」と進化を追い求める。

 

 チームカルチャーにこだわる千葉

 

(写真:司令塔の富樫が操るアップテンポのバスケが魅力だ)

 昨季、千葉は全日本総合選手権を制するなど躍進を遂げたチームのひとつだ。今季も引き続き大野篤史HCが指揮を執る。アーリーカップは準優勝し、プレシーズンも好調だ。今月11日に行われたティップオフ・カンファレンスでは主力の富樫勇樹が「チームとしても個人的にも良い結果でした。準優勝は悔しかったですが、去年のチームと開幕1カ月前の状況を比べると、すごく良いプレーができた。今シーズンがすごく楽しみです」と手応えを口にしていた。

 

 20日からの5日間は海を渡り、中国・マカオで開催された「THE SUPER8」に出場した。日韓中台の強豪クラブが集う中で、千葉は予選リーグを3戦全勝で通過。その余勢を駆って、初代王者に輝いた。大会ベスト5には富樫と新加入のギャビン・エドワーズが選ばれた。大野HCは大会をこう振り返る。

「5試合タフな状況で戦って、疲労もありますが、それ以上の収穫があったと思っています。自分たちの速い展開のバスケは海外チームを相手にも通用したので、選手たちも自信になったと思います。一方でまだまだプレーのクオリティーに関しては課題があったと、僕も選手も自覚ができました」

 

 充実のプレシーズンを送った千葉。今季もアグレッシブなディフェンスから走るバスケを志向する。ゲームメイクを担当する富樫は「千葉の特長は走るバスケ。ファストブレイク(速攻)からの得点だと思うので、そこは変わらずやっていきたい。その中でひとつひとつの質を高めていきたいと思っています」と抱負を述べた。

 

 その千葉がこだわるのがチームカルチャーの熟成である。今季から新しく加わったのはエドワーズ、アキ・チェンバーズ、トニー・ガフニーの3名。千葉のスタイルにフィットし、足りないピースを補える選手を選んだ。特に三河から加入したエドワーズは昨季1試合平均14.6得点、同7.6リバウンドを記録し、チームのベスト4進出に貢献したビッグマンだ。「ギャビンは元々走れる選手。インサイドで強さを発揮してくれる。ジェッツのバスケにフィットする選手だと思っていた」と指揮官は期待を口にした。

 

 渋谷から移籍してきたチェンバースは日本人の父とアメリカ人の母を持つハーフ。スモールフォワードを本職とする彼を、大野HCはこう評する。「ディフェンスが良くてリバウンドが強い。去年、ジェッツにはリバウンドのところで問題あった。彼にはディフェンスとリバウンドを期待しています。シュートも巧いユーティリティープレーヤー。チームに足りないところを補ってくれる選手です」。新戦力の中で最後の契約となったガフニーに対してはこうだ。「チームとして戦うマインドを持っていて、ハードワークができる。スタッツに残らない地味のプレーを一生懸命やってくれる。ひとつになって戦うことをジェッツに植えつけてほしいなと思って獲得しました」

 

 千葉は昨季全日本総合制覇、CS出場と躍進を遂げた印象は強いが、指揮官は納得していない。

「悔しい思いの方が強いです。バスケのプレーというよりもチームカルチャーやアイデンティティを大事にしていたので、そこを最後の試合で発揮できなかったことで後悔が残っています。試合に勝った負けたよりも、1年間積み上げてきたものがまだまだ足りなかったなと。やってきたことをもっとコートの中で表現できるようにやっていける環境をつくっていかないといけないと思いました」

 それはシーズン最後の試合となったCS初戦(対栃木)の内容を指している。

 

 悔やんでいるのは、最後までチーム一丸のプレーを貫けなかったこと。勝負を焦って個人技に走る外国人選手もいたという。だからこそ今季はチームのフィロソフィーに応じた選手を獲得した。

「楽な試合は1試合もない。危機感を持って、60試合でもっと自分たちがステップアップできるように1試合1試合を大事に戦っていきたいと考えています。“去年よりもエナジーをコートで表現できる”“去年よりもタフになる”。“去年よりもひとつになって戦う”ことをチームのゴールにしています。それが達成できれば、自ずと良い結果が生まれるんじゃないかと思っています」

 

 変化を求めた名門・A東京

 

(写真:モンテネグロ代表の指揮を執った経験もあるパヴィチェヴィッチHC)

 スター軍団のA東京が求めるのもチームバスケである。今年6月まで日本代表HC代行を務めるなど、指導力に定評のあるルカ・パヴィチェヴィッチが新指揮官に就任した。厳しいトレーニングを課すことで知られるが、キャプテンの1人、正中岳城が「コーチが望むことですし、チームのベースとなるところ。どのチームもそれなりやっていると思いますが、その先をやらないと勝てないと思う。ただ単にしんどいのではなく意味のあるキツさだし、自分たちが戦う時に迷わないものになるはずと信じています」と語れば、日本代表の田中大貴も「疲労はありますが、充実した練習ができている。練習しないことには強くなれない。そういった意味では順調にきている手応えは感じています」と応じる。

 

「去年は勝ちを期待されていながら、達成できなかった。チームも勝つために大きな変化を選んだ。その変化が結果に結びつくように手応えを感じながらやっていますが、結果を出すことに努力していきたいと思います」

 正中が語るように今季のA東京は変化の大きいチームだ。指揮官も代われば、目指すバスケスタイルも変わる。日本人エースの田中は「昨年より激しいプレースタイル。今年に関しては激しいディフェンスがアルバルクのカラーになると思います」と明かした。

 

 メンバーも大きく入れ替り、ディアンテ・ギャレットとジェフ・エアーズという元NBA選手が抜けた。新加入の6人は安藤誓哉、小島元基、馬場雄大、ランデン・ルーカス、ジャワッド・ウィリアムズ、アレックス・カーク。ウィリアムズ以外は23歳以下とフレッシュな陣容となっている。中でも注目はルーカスと馬場だ。

 

 23歳のルーカスはアメリカの名門カンザス大から日本にやって来た。15年のユニバーシアード光州大会ではアメリカ代表にも選ばれた。父親が日本リーグのジャパンエナジーでプレーしていたこともあり、小学校卒業までは日本で育った。身長208cm、体重109kgの偉丈夫で、新しいA東京のゴール下の番人となる。バスケ専門誌や解説者も注目選手に挙げている逸材である。

 

 日本のホープも負けていない。馬場は筑波大学4年生。“飛び級”でのB.LEAGUE参戦となる。198cmの長身に加えて機動力もある日本代表。正中は「物怖じしない図太さがある。代表などでの経験がありますし、“とにかくやり抜く”という強い信念を持っている」とメンタル面を評価する。プロデビューとなったアーリーカップでもダンクシュートを叩き込んで、観客を沸かせるなどスター性も十分だ。

 

 前身のトヨタ自動車時代から、日本リーグやNBLの中心的存在だったA東京。正中は伝統と変化のミックスが、チームの武器だという。

「新しい選手がたくさん入ってきたのでフレッシュで、活性化の1つになる。彼らが持ってきてくれたものと、チームとして勝ち続けなければならないという立ち位置をミックスして戦える。それが組織としてマンネリ化しないで、勝ちを求めていけることが強みだと思います」

 NBLの名門が、逆襲に転じる。

 

 このほかでは古川をはじめ、二ノ宮康平、石崎巧、アイラ・ブラウン、ヒルトン・アームストロングなど大型補強を敢行した西地区の琉球も要チェックだ。関西アーリーカップを制するなど、熱狂的なブースターで知られる琉球に注目したい。中地区の優勝候補は三河。日本代表エース比江島慎、シューターの金丸雄輔ら得点力の高い既存のメンバーに加え、シューターの松井啓十郎がA東京から加わった。昨季CS準決勝では栃木に惜しくも敗れた。リベンジに燃える三河は開幕戦でいきなり栃木とぶつかる。

 

 2季目を迎えるB.LEAGUEがどのような「BUILD UP」を見せるか。白熱した試合はもちろんだが、各チームのアリーナ、ブースター、チアリーダーなどのエンタテインメント性も見所である。約8カ月間に及ぶ熱き戦いの幕が開ける。

 

 今年もBS11では「マイナビ Be a booster! B.LEAGUEウィークリーハイライト」(毎週木曜22時~22時30分)を放送します。レギュラー放送第1回目は10月5日(木)です。開幕戦のハイライトと川崎ブレイブサンダースの篠山竜青選手を特集します。是非ご視聴ください。


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