日本代表がロシアワールドカップの出場を決めました。まずは厳しい予選を戦い抜いた選手たちに「おめでとうございます」と言いたいです。さて、本番までおよそ8カ月。年内にはいくつ試合が組まれています。W杯本戦までの貴重な時間をどうすごせればいいのでしょうか。

 

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はコンディションを重視してメンバー選考を行うタイプです。これからの8カ月はクラブチームでの過ごし方がより重要になってくる。海外組の選手もしっかりと所属クラブで出場機会を確保して試合勘やコンディションを維持することが求められるでしょう。

 

 “真のチーム”になれるチャンス

 

 代表の活動スケジュールも今後は重要になってきます。まず10月6日に豊田スタジアムにてニュージーランド、10日に日産スタジアムにてハイチと試合が組まれました。今後の戦いを見据える上で、一戦一戦が最終調整になると言っても過言ではありません。

 

 この2戦に本田圭佑らある程度計算ができるメンバーの招集は見送られました。親善試合だからこそ試せるメンバーもいます。特にセンターバックのバックアップは試すべきでしょう。好調の鹿島アントラーズでレギュラーを獲得しているDF植田直通あたりにはそろそろチャンスを与えても良いのかなと感じます。DF吉田麻也、DF昌子源の2人にアクシデントが起こってからでは遅いので、是非とも試合に起用してもらいたいです。植田は高さ、強さ、速さを兼ね備えたDFなので期待しています。

 

 11月には欧州遠征が予定されています。ブラジル代表、ベルギー代表など強豪国との試合が組める可能性があるそうです。この遠征でバックアップメンバーを試しつつ、チームとしては格上との戦い方に磨きをかけてほしいです。世界レベルを相手に「今の自分たちには何が足りないのか」ということをしっかり理解する絶好の機会。僕はここで見つけた課題をクリアしてやっと、現代表が“真のチーム”になれるのではないかなと考えています。

 

 アジア最終予選の初期は海外組に頼る場面が多かった中で、後半にはMF井手口陽介のような国内組の活きの良い若手が出てきました。欧州遠征はW杯に向けてさらにチームが結束するために必要不可欠です。今までアジアレベルの相手がほとんどだった中で、井手口のようなフレッシュな人材には強豪国を相手に存分に自分の力を試してもらいたいです。

 

 チームコンセプトの守りを固めて縦に速く攻めるスタイルは変わらないでしょう。遠征に選ばれたメンバーはいかに自分の個性を表現できるかがカギです。個性を生かしつつ、その中で各々が同じ方向にベクトルを合わせることができるか。普段、代表チームは短い拘束期間で試合に臨みます。遠征では長い時間を共にできるのでしっかりと擦り合わせをして欲しいと思います。

 

 天皇杯を盛り上げた筑波大

 

 国内に目を移してみましょう。天皇杯のベスト8が出そろいました。10月25日に行われる準々決勝のカードは次の通りです。セレッソ大阪対大宮アルディージャ、川崎フロンターレ対柏レイソル、ヴィッセル神戸対鹿島アントラーズ、横浜F・マリノス対ジュビロ磐田。顔ぶれを見ると、一発勝負ではやはり鹿島が強いかなと感じます。リーグ戦でも頭一つ抜けていますし、2冠の可能性も十分あり得ると思います。

 

 また、ベスト16で涙をのみましたが筑波大学は健闘しました。天皇杯はアマチュアがプロに挑める唯一の大会。筑波大は2回戦でベガルタ仙台、3回戦ではアビスパ福岡を破り、勝ち上がってきた。ホームタウンが茨城県ということもあり僕も彼らには、楽しませてもらいました。

 

 プロサッカー選手からすれば、アマチュアチーム特有の“若さ”が試合を難しくさせる場合があります。データがさほどなく、これといった抑えどころがない。試合が始まってしばらくは相手の出方を伺いたかったのに、その間に失点をしてしまう。取り返しに行こうと前がかりになると今度は裏を取られたりかき回されたり……。これが天皇杯の恐さでもあり、面白いところなのかなと思いますね。

 

 今回の筑波大学の奮闘劇を見た他のアマチュアチームは“来年はオレたちもやってやる”と刺激を受けたことだと思います。アマチュアチームの意識が高まれば、日本サッカー界全体のレベルアップにつながる。来年の天皇杯ではどこのチームが下剋上を起こしてくれるのでしょう。アマチュアチームからも目が離せません。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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