四国アイランドリーグplusは、香川オリーブガイナーズが後期優勝を果たした。2015年前期以来となる11度目の優勝について、西田真二監督は「センターラインを中心にしたディフェンスでつかんだ勝利」だと語った。センターとして外野の要を務めた岡村瑞希は、攻撃面でも俊足を活かして盗塁王に輝きチームを牽引した。3年目でつかんだ初タイトル、その先に見る夢は?

 

 ケガと戦いながらの盗塁王

 15年、18歳で香川に入団して、そのときは周りの選手は年齢も離れているし、何よりも野球のレベルが高くて驚きました。打球の速さも飛距離も高校時代とはケタ違いで、「本当にここでやっていけるのか」と不安になったものです。

 

 野球を始めたのは小学3年生から。父がやっていた草野球チームに参加したのがきっかけでした。当時はピッチャーをやっていてシニアリーグの途中、中学2年からショートに転向しました。高校は熊本の私立校で野球を続けていたのですが、高2のときに中退して、そこからはたまに草野球をするくらいでした。でも、野球を教えてくれた父に恩返しがしたいという思いが強く残っていて、それでアイランドリーグの門を叩いたんです。

 

 周りのすごい選手たちに追いつくために、「練習、そしてトレーニングを積まないと」と思っていたのですが、入団してすぐに腰の故障が再発するなどケガに泣かされました。不安の中でスタートしたアイランドリーグ生活でしたが、3年目の今年、ようやくレギュラーとして使ってもらえるようになり、実質1年目という気持ちです。

 

 香川に入って最初のシーズンを終えた後、秋のフェニックスリーグに参加してNPB球団の選手とも戦い、そして練習を見る機会がありました。すごいなと思う反面、案外自分とレベルが変わらない選手もいるな、という気持ちもありました。フェニックスリーグではとにかく周りの選手を観察して、それで野球への取り組みなどを勉強しましたね。

 

 とはいってもどこか甘い部分があったな、と今振り返れば思います。そういう気持ちを変えたのが、昨年春、故郷・熊本を襲った地震でした。市内の実家も被災して、仮設住宅での生活を余儀なくされました。でも家族は僕の応援のために四国に来てくれるんです。そのときに「もっと真剣にやらないとダメだろう」と意識が変わりました。

 

 今季もシーズン当初に肉離れをして、つらいときもあったのですが、決して休みたいとは思いませんでした。そういう状況だったので盗塁王をとれたのはとても嬉しいですね。このタイトルは来季も防衛したいと思います。

 

 振らない打者は大成しない

 香川の西田監督には「選手としての可能性を広めるために」と、入団したときから外野の練習も命じられました。結果、センターのレギュラーを得て、外野守備も想像以上におもしろくてやり甲斐を感じています。

 

 西田監督は常々、「(バットを)振れないバッターは成功しない」と口にしています。これは追い込まれても当てにいくのではなく、思い切りバットを振ってこい、という教えです。だから追い込まれても逆方向に強く打つことを意識して打席に入っています。

 

 盗塁に関しては、自分はそう俊足じゃないんですよ。だから闇雲にスタートを切ってもアウトになる。塁上では配球を読んで変化球のときに走ったり、ベンチにいるときもピッチャーのクセをいつも観察しています。今季は3番を打つことも多かったのですが、そのとき、塁上で配球を読んでいたことが役立ちました。打席でも「ここは真っ直ぐだろうな」と読み、それを狙い打ったこともあります。

 

 将来の夢はもちろんNPB入りです。そのためには一芸を磨けと周りの方に言われるのですが、NPBに入った後はやはりトータルでの実力が求められるでしょう。理想の選手はトリプルスリーを達成するような、全ての面ですぐれている選手ですね。

 

 そのためにこのオフはウエイトトレーニングをして筋力をアップしてパワーをつけたいと思っています。ケガをしない強い体を作り、そしてシーズン最後までバテないスタミナも養いたいですね。

 

 例年、オフになると早めに熊本に帰ってトレーニングをしていましたが、今年はできるだけ香川に残ろうと思っています。というのも、やはり地元に帰ると友人がいるので遊んでしまうんですよ(笑)。

 

 来季は連続盗塁王と、それとチャンピオンシップを勝って日本一になることが目標です。そのためにも遊ぶ暇はないと思っているので、香川で体を作って、熊本に帰るのはその後です。震災からの復興もまだまだ道半ばですので、自分も早くNPBに行って故郷のために少しでも力になれたらと思っています。これからも応援よろしくお願いいたします。

 

<岡村瑞希(おかむら・みずき)プロフィール>香川オリーブガイナーズ外野手
1996年10月12日、熊本県生まれ。小学3年で野球を始め、シニアリーグの中学1年までポジションはピッチャー。中学2年からショートに転向。東海大附属熊本星翔高の2年時まで野球部に所属したが同校を中退し通信制のクラーク国際記念高に入学。通信課程修了後の15年、18歳で香川オリーブガイナーズに入団。登録は内野手だが入団時から外野もこなし、3年目の今季からセンターのレギュラーに定着。62試合に出場し打率2割7分7厘。22盗塁で盗塁王に輝いた。右投右打、身長177センチ、体重72キロ。


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