サッカーJ1、横浜F・マリノスの中澤佑二をして「Jリーグの鉄人」と呼んでも過言ではあるまい。

 

 

 さる7月1日、大宮アルディージャ戦でリーグ戦140試合連続フルタイム出場を達成。この時点でフィールドプレーヤーとしてはJリーグ史上歴代1位に立った。

 

 その後もフルタイム出場を続け、今では記録を153にまで伸ばしている。チームもリーグ戦16勝7敗7分。勝ち点55で3位につけている。

 

――長持ちの秘訣は?

 そう問うと、いたずらっぽい笑みを浮かべて、掌の上でゴマをする仕草をしてみせた。

「若い時って、どうしても監督に反発しがちなんですけど、齢をとってくると、自分のことよりチーム全体のことを考えるようになるんですよ。自分のやりたいことばかり言ってもしょうがないですから」

 

 齢を重ね、多少、人間的には丸くなっても、サッカーに対するストイックな姿勢は昔と変わらない。早寝早起き、アルコールは一滴も口にしない。

 

 これほどイメージとかけ離れた選手も珍しい。デビュー当時は奇抜なアフロヘアーで話題を集めた。見かけは“遊び人風”だが、どうして超の字のつくほどの真面目人間なのである。

 

 以前、こう語っていた。

「だいたい夜10時くらいには寝て、朝6時くらいには起きます。高校の時は夜の9時に寝て、朝5時に起きる生活をしていました」

 

 アフロヘアーも本意ではなかった。

「ヴェルディのテスト生時代、普通にサッカーをしていても、誰にも目に留めてもらえなかった。どうやったら顔と名前を覚えてもらえるか。そこで誰もやってないような髪形を思いついたんです」

 

 誰が名付けたか「ボンバーヘッド」。アフロヘアーの長身選手はやがて日本を代表するセンターバックに成長し、06年ドイツW杯、10年南アフリカW杯では主力として最終ラインを支えた。

 

 屈強で均整のとれた体つきは、20代の頃と少しも変わらないように映る。それでも本人によると、体脂肪率の数値は少しずつ上昇しているとのこと。

 

「20代前半は7%、後半は8%、30代になってからは10%。昔は体脂肪という言葉が大嫌いだったんです。もう不摂生の象徴だと思って目の仇にしていました。

 

 しかし、齢をとるとある程度の体脂肪率を保っていないとパフォーマンスが落ちるという情報を仕入れたんです。それからは(体脂肪を)目の仇にするのではなく、上手に付き合うようになりました」

 

 以前は体脂肪率の上昇を嫌って食事はサカナ中心だった。しかし、それでは体がもたない。肉も含めてバランスよく食べることでコンディション面が改善されたという。

 

 このように自らの身体と厳しく向き合い続ける中澤だが、来季限りでユニホームを脱ぐことを決めている。かくなる上は、自らの持つフルタイム連続出場記録を、誰にも手が届かないところまで伸ばしてもらいたいものだ。

(数字はJ1第30節終了時点)

 

<この原稿は『サンデー毎日』2017年10月27日号を一部再構成したものです>

 


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