(写真:帝京大・堀越主将は今年5月にジャパンで初キャップを刻んだ Photo by S.IDA)

 帝京大時代が続くのか、それともピリオドが打たれるのか――。

 大学ラグビー、2017年度シーズンの見どころはまさにここに集約される。9月にスタートしたシーズンは、中盤戦のヤマ場を迎えている。

 

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 盤石の王者・帝京大

 

 主役はやはり大学選手権9連覇、関東対抗戦Aグループ7連覇を目指す王者・帝京大学だ。

 

 昨季は大学選手権決勝で2年連続の対戦となった東海大の強力FWに押され、序盤にリードを許す展開ながら追いつき、後半に3トライして逆転勝ち。勝負強さは相変わらずだが、スクラムで苦しんだ印象も残った。

 

 今季は“スクラムに強い帝京大”の復活が近い。春から強化ポイントとして取り組んできており、HO堀越康介主将(4年)を中心に仕上げてきた。9月17日、成蹊大との対抗戦開幕戦は70-0と圧勝。同30日の日体大戦は70-3、10月14日の青山学院大戦は89-5と他を寄せ付けない戦いを続けている。ラン、スクラム、セットプレーとどの要素を切り取っても、大学チームのなかで飛び抜けていることは間違いない。

 

 ルーキーながらパナソニック・ワイルドナイツの主力で日本代表SO/CTB松田力也や主将を務めたFL亀井亮依(現NECグリーンロケッツ)らが抜けたが、優勝メンバーの多くが残っている。現キャプテン堀越のほかCTB矢富洋則(4年)、WTB竹山晃暉(3年)らが中心だ。加えて日体大戦でトライを挙げたFL安田司やSO北村将大などルーキーも粒揃い。総合力で一歩リードしている。

 

 タレント豊富な早大

 

(写真:早大の加藤主将は秋田工時代に花園ベスト8を2度経験 Photo by S.IDA)

 その帝京大と28日に対戦するのが、来年に創部100年を迎える早稲田大だ。大学OBで2002年度には主将として13年ぶりとなる大学選手権優勝に導いた山下大悟監督の手腕に期待が集まっている。

 

 ブレイクダウン、スクラム、チームディフェンスの強化を図ってきた。夏の練習試合で帝京大に0-82、東海大に5-52と完敗してワセダファンをやきもきさせたが、ベスト布陣で臨めなかったことも背景にはある。対抗戦は9月16日、日体大との開幕戦に54-20と勝利し、青山学院大に94-24(10月1日)、筑波大に33-10(同14日)とジリジリと調子を上げてきている。

 

 タレントは豊富だ。1年時からスタメンを張ってきたFL加藤広人(4年)が主将を務める。2年生SO岸岡智樹は8月にウルグアイで開催された「ワールドラグビーU20トロフィー」にU20日本代表として出場。FB、CTBとポリバレントぶりを発揮し、飛躍を遂げた。

 

 また山下監督が務めたCTBに入るのは飛び級でU20日本代表に招集された中野将伍(2年)。186cmの長身と快足を誇り、ダイナミックなプレーは将来性を感じさせる。昨年12月にはフジテレビの次世代アスリート応援番組「ミライ☆モンスター」でも紹介されている。また同じく2年のSH斎藤直人も山下監督が大きな期待を寄せている選手。彼らの成長次第で早大が躍進する可能性は十分にある。

 

 重戦車復活の明大

 

(写真:明大・古川主将は帝京大・堀越主将とは桐蔭高の同級生 Photo by S.IDA)

 対抗戦からもう一つ注目のチームを挙げるとすれば、明治大だろう。

 

 今年は「重戦車復活」が近づいている。春は集中的にスクラム強化に取り組んだという。夏の練習試合では早大と対照的に、王者・帝京大にこそ27-56で敗れはしたが、天理大、同志社大を撃破。そして2年連続大学選手権準優勝の東海大を相手に42-19と快勝したことで新シーズンへの弾みをつけた。FWの強みを武器に、バックスがチャンスを確実に得点につなげている。

 

 ケガで長期離脱していたLO古川満(4年)主将が今夏に復帰。バックスの中心であるCTB梶村祐介(4年)も同じく夏にケガを克服してチームに戻ってきた。注目のルーキーはLO箸本龍雅。東福岡を主将として高校日本一に導き、飛び級でU20日本代表にも選ばれている。CTB石川貴大とともに1年生パワーが、チーム力を向上させている。

 

 9月16日の開幕戦では青山学院大を108-7と圧倒。10月1日の筑波大戦は68-28、同15日の成蹊大戦は87-0と順調に白星を重ねている。28日に同じく3連勝の慶應義塾大とぶつかる。

 

 夏の練習試合で東海大を35-24で破った慶大の評判もまずまずいい。帝京大が実力上位であることに揺るぎはないが、早大、明大、慶大が勢いに乗ってくると面白くなりそうだ。

 

 雪辱に燃える東海大

 

(写真:東海大・野口主将は既にジャパンで2ケタキャップを誇る Photo by Yuuri Tanimoto)

 関東リーグ戦はやはり東海大が頭ひとつ抜けている。

 

 FL藤山裕太朗、CTB鹿尾貫太らの4年生、No.8テビタ・タタフ、FL西川壮一、WTBアタアタ・モエアキオラらの3年生、そして2年には8月の「ワールドラグビーU20トロフィー」でU20代表SO眞野泰地と各年代にタレントが揃う。層の厚さは帝京大と双璧と言っていい。“今度こそ日本一”と目標に向かって一丸となっている。

 

 タレント集団の中でも最も注目を集めているのが、日本代表でブレイクしているFB野口竜司だ。6月に行われたアイルランド2連戦。第1戦でトライを奪い、第2戦ではスタメンの座を勝ち取った。その野口は今季、東海大の主将を務めている。飛躍の1年とするためにも、「打倒・帝京」を果たしたいところだ。

 

 リーグ戦は対抗戦よりひと足早く開幕し、東海大は10月21日に拓殖大を相手に80-12と快勝して開幕4連勝。29日にはここまで3勝1敗の中大と対戦する。

 

 東海大を追うのがここまで4連勝の流通経済大と大東文化大。29日に2チームの直接対決が行われる。

 

 関西Aリーグは昨季覇者の天理大が9月30日の開幕から3連勝を挙げている。10月8日には開幕戦で同志社大を下した関西学院大を47-0と無失点に封じ込めており、本命優位は動かない。対抗は同じく3連勝をマークしている京都産業大。一方、既に2敗を喫している同志社は厳しい戦いを強いられている。

 

 大学選手権は今季も14チームによる変則トーナメントを実施。1回戦は11月26日に行われる。関東対抗の1位と2位、関東リーグと関西リーグの1位がシードされ、準々決勝(12月23日)から出場する。決勝は来年1月7日、東京・秩父宮ラグビー場で開催される。

 

 J SPORTSで関東大学対抗戦、関東大学リーグ戦、関西大学リーグ戦を放送中!

 

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