(写真:優勝が決まった瞬間、エース上野を中心に歓喜の輪ができあがった)

 5日、第50回日本女子ソフトボールリーグ決勝トーナメント最終日が愛知・ナゴヤドームで行われた。リーグ戦1位のビックカメラ高崎BEE QUEENが同3位の太陽誘電ソルフィーユを3-0で破り、2年ぶりに日本リーグを制覇した。初回に幸先良く先制したビックカメラ高崎は、4回と6回に着実に加点。投げてはエースの上野由岐子が4安打完封と太陽誘電に反撃を許さなかった。決勝トーナメントのMVPに2試合連続完投の上野、優秀選手賞には3戦2発の佐藤みなみ(太陽誘電)が選ばれた。昨年女王で同2位のトヨタ自動車レッドテリアーズは3位決定戦で太陽誘電に敗れたため、8年続いていた決勝進出を逃した。

 

◇決勝

 エース上野、9奪三振無四球完封

ビックカメラ高崎BEE QUEEN   3 = 1001010

太陽誘電ソルフィーユ       0 = 0000000

勝利投手 上野(2勝0敗)

敗戦投手 藤田(2勝1敗)

本塁打 (ビ)内藤1号ソロ

 

(写真:上野は2試合連続完投。14イニングで失点はわずかに1)

 ビックカメラに移管してから3年目のシーズン。エース上野の活躍で、2年ぶりに王座を奪還した。

 

 初回、先頭の森さやかが藤田倭のストレートを弾き返し、二塁打を放った。続く市口侑果がバントで送り、1死三塁の場面をつくった。3番の大工谷真波はライトフライに倒れて森を還すことができなかったが、4番の山本優がライト前へ運び、ビックカメラ高崎が先制に成功した。

 

 先行逃げ切り。今季13勝0敗の上野を擁するビックカメラ高崎にとって、リーグ戦の得意パターンに持ち込めたのは殊更大きい。「リーグ戦と同じ入り方ができた。自分たちのリズムで試合に入れた」と、岩渕有美監督も振り返る理想的な展開。森は「ヒットを打って流れをつくろうと思っていた」とリードオフマンとしての職務を全うした。彼女をホームへ迎え入れた山本は「森が出た時は皆で還すことしか考えていない」と当然のように語った。

 

(写真:我妻は今季からキャプテンに就任。チームと共に成長した)

 上野は1回裏こそピンチをつくったが、尻上がりに調子を上げていく。打線は3回に内藤美穂がソロホームラン、6回に我妻悠香がタイムリーを放ち、得点を加えた。キャッチャー我妻とのコンビネーションも良く、スコアボードにゼロを並べていった。最終回は決勝トーナメントで2本塁打を放っている佐藤を空振り三振に切って取ると、残りの2人にもバットで空を斬らせた。三者連続三振を奪って、試合を締めくくった。

 

 リーグ戦でも強さを発揮したビックカメラ高崎。終わってみれば、今季日本リーグでは1敗しかしていない。チーム打率の3割4厘、総得点112点、防御率0.66はリーグトップの成績だ。大黒柱の上野は最多勝(13勝)、最優秀防御率(0.56)の2冠。攻撃陣は山本が4割7分1厘で首位打者、糟谷舞乃が打点王(26点)を獲得した。個の力もひとつの要因だが、岩渕監督が「毎試合ヒロインが違った」と口にしたように総合力がアップしたことが大きい。

 

「昨日のトヨタ戦のように負け試合を拾って勝てるのが強さ」(山本)。決勝トーナメント初戦で7回に先制を許しながら、その裏に逆転サヨナラ勝ちができたのは底力が付いてきた証拠だろう。若いチームだけに更なるのびしろも期待できる。狙うは当然連覇だ。

 

◇3位決定戦

 二刀流・藤田、投打にわたる活躍

トヨタ自動車レッドテリアーズ   1 = 00000001

太陽誘電ソルフィーユ       2 = 0001001×

勝利投手 藤田(2勝0敗)

敗戦投手 アボット(0勝2敗)

本塁打 (太)佐藤2号ソロ

 

(写真:藤田のピッチングを山路監督は「波が減った」と評価する)

 前回の決勝カードが3位決定戦で実現した。前日にビックカメラ高崎に敗れたトヨタ自動車と、リーグ4位の豊田自動織機シャイニングベガに勝利した太陽誘電。両チームは約1週間前の10月27日にリーグ予備節(雨天順延分)で対戦したばかりで、その時は5-4でトヨタ自動車が勝っていた。

 

 先発マウンドに上がるのはトヨタ自動車がモニカ・アボット、太陽誘電は藤田。決勝進出のために負けられない両チームはエースをぶつけてきた。先にチャンスをつくったのはトヨタ自動車。初回は1死二塁の場面で、3番の長﨑望未がセカンドライナーでダブルプレーに終わった。3回は2死満塁で長﨑に回ってきたが、大きな当たりはレフトのグラブに収まり、得点を奪えなかった。

 

 ランナーを出しながら凌いできた藤田に待望の援護点が入ったのは4回裏。先制点をもたらしたのは女房役の佐藤みなみ。先頭でバッターボックスに立つと、アボットの4球目をレフトスタンドへ叩き込んだ。その後は両チームゼロ行進が続いたが、6回裏には1死一、三塁で藤田がレフトへ高く上がるフライを打ち上げる。犠牲フライには十分。三塁ランナーが生還し、貴重な追加点が入った。

 

(写真:詰め掛けた大応援団の前で思うような結果は残せなかったトヨタ自動車)

 7回表、女王トヨタ自動車も意地を見せた。山崎早紀のサード強襲のヒットから連打で無死一、三塁のチャンスをつくる。しかし、古澤春菜の犠牲フライで1点を返すのみ。最後は1番の山下りらが空振り三振に終わり、ゲームセット。2009年から決勝に出場し続けてきた女王は3位で、シーズンを終えることとなった。

 

(文・写真/杉浦泰介)