10月26日、NPBドラフト会議が行われ、四国アイランドリーグplusから徳島インディゴソックスの伊藤翔、大藏彰人の2人が指名を受けた。伊藤は埼玉西武からドラフト3位、大藏は中日から育成1位。13年、中日に2位指名された又吉克樹に次ぐ上位指名となった伊藤は「正直、びっくりした」と、その瞬間を振り返った。高卒1年目でNPB行きの切符を手にした伊藤は、1年先にNPB入りした同期のライバルを全開で追いかける。

 

 すべて初めての環境で成長

 ドラフトで自分の名前が呼ばれた瞬間は、嬉しいというよりもびっくりした気持ちの方が強かったです。その後、いろいろな人から祝福のメールや電話をもらい、取材とかも受けるうちに気持ちが落ち着いてきました。今はプロ(NPB)でやってやるぞ、という気持ちです。

 

 プロ野球選手は子供の頃からなりたかった夢の職業でした。地元が千葉なのでテレビでマリンスタジアムの中継を見ていたし、どの選手もキラキラと輝いていて憧れの存在でしたね。あの舞台に立てるという興奮と同時に、まだスタートラインに立ったばかりだという冷静な気持ちの両方があります。

 

 高校卒業時には社会人や大学も進路として考えましたが、独立リーグの四国ILに進みました。これは大学で4年間待つよりも、1年でドラフト指名のチャンスがある独立リーグの魅力に惹かれたからです。

 

 生まれてからずっと家族と一緒でしたが、徳島に入団して初めての一人暮らしになりました。食事も自分で作らなきゃいけないし、洗濯だってしなきゃいけない。すべてが初めての経験でしたが、そういう厳しい中でも野球に集中できた1年でした。厳しい環境だからこそ成長できたんだと思っています。

 

 徳島の養父鐵監督は選手と一緒になって汗を流すタイプで、とても戦いやすい環境を作ってくれました。NPBを目指しているボクには、こんな話をよくしてくれました。
「ピッチャーというのはマウンドに立ったら1人。誰も助けてくれない。だからそれまでにどれだけ準備しているかが大切だ」

 

 試合で投げることだけでなく、日々のトレーニング、コンディショニング、すべてをきちんとやることが重要だということですよね。あとはストレートを生かすための変化球の使い方なども教わりました。

 

 鈴木康友コーチはNPBでも選手として活躍された経験もあり、レベルの高い牽制やサインプレーを教えていただきました。セカンドランナーを釘付けにしたり、「ああ、こういうプレーもあるのか」ととても勉強になりました。四国アイランドリーグで1年過ごし、そのおかげでNBPに行けたと本当に感謝しています。

 

 パ・リーグには強打のバッターが揃っているので、そういう一流選手との対戦が今から楽しみです。ストレートに自信があるので、それがどこまで通用するのか。またカットボールなど変化球もこれからさらに磨きをかけていきたいですね。

 

 同世代には東北楽天の藤平尚真がいます。1年先を越されていますが、ようやく同じ場所に立つことができました。先にNPBに入った同世代に追いつき、追い越せるようにオフの間もトレーニングを積みたいと思っています。NPBでの目標は、球界を代表する投手になること。「伊藤翔ってすごいな」と子供たちに憧れてもらえるような、そういうプレーヤーになりたいです。

 

 最後に、1年間応援してくださった徳島の皆さん、ありがとうございました。チームが日本一になれたのも、そして僕がNPBへ行けたのも、ファン、そしてスポンサーの方々に支えられたからです。1年でも早くNPBで活躍する姿を見せて、徳島に恩返しができるように頑張ります。これからも応援、よろしくお願いいたします。

 

<伊藤翔(いとう・しょう)プロフィール>徳島インディゴソックス投手
1999年2月10日、千葉県生まれ。横芝敬愛高(千葉)では高2からチームのエースとなる。高3夏は県大会3回戦まで。高校卒業にあたり四国ILのトライアウトを受験し、徳島インディゴソックスに入団。1年目からチームの主力投手として投げ、前期優勝、シーズン制覇の原動力となった。香川オリーブガイナーズとのチャンピオンシップで2勝、信濃グランセローズと対戦したグランドチャンピオンシップで1勝とポストシーズンでも活躍。年間MVP、ベストナイン、年間グラゼニ賞、チャンピオンシップMVP、グランドチャンピオンシップMVPと表彰多数。17年秋、埼玉西武からドラフト3位指名を受けた。レギュラーシーズン16試合登板、8勝4敗、防御率2.18、97奪三振。身長177センチ、体重72キロ。右投右打。


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