現地時間25日、「リポビタンDツアー2017」がフランス・ナンテールで行われ、ワールドラグビーランキング11位の日本代表(ジャパン)が同8位のフランス代表と23-23で引き分けた。前半5分にSO田村優(キヤノンイーグルス)のPGで先制。8-11で前半を終えると、後半に2つのトライを挙げるなど追いついた。ジャパンは11月のフランス遠征を1勝1分けで終え、年内最後のテストマッチを締めくくった。

 

 充実のフランス遠征だった。ここまで7勝9敗のトンガ代表(ワールドラグビーランキング15位)に39-6で快勝。9戦全敗のフランスにドローと無敗で日本への帰国となった。

 

 まず6年ぶりの白星となった現地時間18日に行われたトンガ戦。課題とされてきたディフェンスが機能した。アタック能力が高いトンガに突破を許す場面もあったが、高い位置から狙う日本の守りで勢いを乗らせない。4日にオーストラリア代表(ワールドラグビーランキング3位)に大量9トライを喫したが、この日はノートライの6失点。攻撃ではラインアウトのモールからWTBレメキ・ロマノ・ラヴァ(Honda HEAT)、No.8アマナキ・レレイ・マフィ(NTTコミュニケーションズシャイニングアークス)がトライを奪うなど、セットプレーも効果的だった。スクラムで押し勝つシーンも目立った。

 

 ジェイミー・ジョセフHCは「体格が大きく、フィジカルの強いトンガ代表の選手に対して互角に戦えていたし、アタック・ディフェンスともに効率のいい仕事ができていた」と評価した。一方で「ノートライに抑えたとはいえ試合の終盤でミスタックルが何本かあったことや、アタックでもチャンスがあったのに取りきれなかったことがあった。そこは修正すべき点」と注文を付けることも忘れなかった。

 

 そして迎えた1週間後のフランス戦。フランスはワールドカップ準優勝3度のティア1に属する強豪だ。2015年イングランド大会はベスト8。19年日本大会では「ベスト8以上」を目指すジャパンにとって、格好の相手と言えよう。“シャンパンラグビー”と呼ばれるパスワーク、そしてスクラムにもこだわりを持つ国として知られている。

 

 速いパス回しでピッチを広く使った。トンガ戦は田中史朗(パナソニック ワイルドナイツ)がSHでスタメン起用されたが、フランス戦は流大(サントリーサンゴリアス)。田中にも増してパス出しが速く、“シャンパンラグビー”のお株を奪うようなアタックを見せた。前半24分には左サイドに展開していくと流のパスから田村がタップパス(キャッチをせずに弾くパス)で繋ぐ。大外で待ち構えていたHO堀江翔太(パナソニック ワイルドナイツ)が飛び込んでトライ。フランス相手にリードを奪う場面もあった。

 

 5点ビハインドで迎えた後半は2分にCTBラファエレ・ティモシー(コカ・コーラレッドスパークス)が強引な突破からトライを決め、田村のコンバージョンキック成功で逆転した。その後、再びフランスにリードを許す。フランスの個人技に手を焼き、何度もゲインラインを突破されたが粘りのディフェンスで追加点を与えない。すると33分にPRヴァル・アサエリ愛(パナソニック ワイルドナイツ)のトライで追いついた。田村のコンバージョンが決まらず、勝ち越すことはできない。このまま23-23でノーサイド。対フランス10戦目にして初勝利とはならなかったが、連敗を9でストップした。

 

 試合後の選手たちのコメントに共通しているのは“勝てた試合だった”という思いだった。ジャパンはティア1のフランス相手にも臆することなく白星をもぎ取りにいった。フランスは敵陣でペナルティーを得た場面でPGを選択。ホームの大観衆からはブーイングが聞こえてくるなど、思うような攻撃させなかったこともジャパンにとっては大きな収穫だ。

 

 2017年のテストマッチは6勝3敗1分け。チームとして成長も見られたが、ティア1相手には3敗1分けと1勝もできなかったことも事実だ。2年後のワールドカップではティア1のアイルランド、スコットランドと同プール。今遠征で機能したディフェンスシステムを成熟させ、アタックに更なる磨きをかけることは必須である。

 

(文/杉浦泰介)