2日、J1最終節の川崎フロンターレ対大宮アルディージャが神奈川・等々力陸上競技場で行われ、2位の川崎Fが17位の大宮に5対0で大勝した。前半1分にMF阿部浩之のゴールで先制すると、前半アディショナルタイム、後半15分、36分とFW小林悠が得点しハットトリック。終了間際にはFW長谷川竜也が決め、最終勝ち点を72とした。勝ち点71で首位だった鹿島アントラーズはジュビロ磐田と0対0で引き分け。川崎Fが勝ち点で並んだが、得失点差で大きく上回ったため、鹿島をかわし、クラブ史上初となるタイトルを獲得した。

 

 キャプテンの小林、初の得点王獲得!(等々力陸上競技場)

川崎フロンターレ 5-0 大宮アルディージャ

【得点】

[川] 阿部浩之(1分)、小林悠(45+2分、60分、81分)、長谷川竜也(90+6分)

 

 シルバーコレクターの汚名返上となった。今年1月の天皇杯決勝、11月のルヴァンカップ決勝で苦杯をなめた川崎Fがついに頂にたどり着いた。タイトル獲得には最終節での白星が絶対条件。かつ鹿島が磐田に引き分け以下でなければならなかった。

 

 試合はいきなり動いた。開始早々、MFエウシーニョからゴール前でパスを受けた阿部。ワンタッチから左足を振り抜くと見事にゴール右サイドネットを揺らした。先制点で波に乗った川崎Fはリズムよくボールを回し続ける。攻撃サッカーが売りの川崎F。“確変”のごとくゴールが生まれる。

 

 前半アディショナルタイム、左サイドに流れたMF家長昭博のクロスにゴール中央で小林がヘディングで合わせて2点目。スタートポジションは右サイドだった家長が流動的にポジションを変えたことでチャンスをつくり、小林はDFのエアーポケットを見逃さなかった。2人の息のあった得点だった。

 

 後半に入っても終始、川崎Fペースだった。15分、2点目と同じような形で家長が左サイドでボールを持つ。今度はGKとDFラインの間に低いボールを供給。このボールを小林がファーサイドで合わせる。スライディングしながら懸命に伸ばした右足でゴールに押し込んだ。これで今季22得点。得点ランキングトップに並ぶ。こうなると、スタジアムは小林のハットトリックに期待が集まる。

 

 36分、そのチャンスが訪れた。DF車屋紳太郎がペナルティーエリア内で倒されると主審はPKを宣告。真っ先にボールを拾いに行ったのが“リーチ”のかかった小林だった。30歳のストライカーは憎いほど落ち着いていた。相手GKをあざ笑うかのようにど真ん中に蹴り込んだシュートが決まり、ハットトリックを達成。リーグ戦23得点とし、得点王もちらついた。

 

 ゴールラッシュの最後は途中からピッチに立った長谷川だ。カウンターからペナルティーエリア内に侵入すると左足でゴールを捉え、5対0と大勝で最終節を締めた。試合終了のホイッスルが鳴ったと同時にベンチからスタッフ、メンバーが飛び出す。ピッチのイレブンもその意味を理解した。同時刻にキックオフした鹿島は磐田を相手にスコアレスドローだった。

 

 その場で倒れ込み涙を流したMF中村憲剛にMF大島僚太や小林が駆け寄る。スタッフやメンバーが抱き合い緑のキャンバスの上にはいくつもの歓喜の輪が描かれた。ホームで最高の雰囲気を演出したサポーターに向かい、今年キャプテンに就任した小林はユニホームのエンブレムを力強く握りしめ、愛情を表現した。ハットトリックを達成した小林は、試合前までは得点ランキングトップだったセレッソ大阪のFW杉本健勇がノーゴールでリーグ得点王に輝いた。キャプテンは「個人のタイトルよりチームのタイトルの方が嬉しい」と語った。

 

 川崎F一筋15年の中村は、優勝に手に届きそうになりながら幾度も涙をのんできた。ベテランMFは念願成就の喜びをこう表現した。

「この光景を見たかった。みんなが(ベンチから)飛び出してきて、意味がわかり涙を止めることがでなかった。長かったです。長すぎて長すぎて、タイトルを獲れずにこのまま辞めるんじゃないかと思った。サポーターはずっと後押ししてくれて本当にみんなでつかんだタイトルだと思います。僕が入団した時、3000人、4000人が当たり前だったスタジアムが、毎試合満員になるなんて夢にも思わなかったです。本当に皆さんのお陰です。ありがとうございました」

 

 日本フットボールリーグ(JFL)に参入してから20年。Jリーグ加入後、急速に力をつけてきた。だが、いつも大一番で結果を残せず、ついたあだ名がシルバーコレクター。勝利の美酒の味がわかるときがついにきた。このリーグ制覇を足掛かりに、タイトルを獲得し続けられるクラブになれるかに注目したい。

 

(文/大木雄貴)