「はっきり言ってくださって本当にありがとうございます。感謝します」

 


 そう告げて男は球団事務所を後にしたという。巨人の村田修一が戦力外通告を受けた。言葉は悪いが“お払い箱”だ。


 賞味期限が切れた選手とは思わない。今季はケーシー・マギーの加入により、118試合の出場にとどまったが、規定打席数に19不足していながら14本塁打、58打点は立派である。打つだけではない。この36歳は守備も巧い。サードでゴールデン・グラブ賞に3度輝いている。


 これだけの選手をヨソが放っておくわけがない。サードを固定できない千葉ロッテ、東京ヤクルトあたりは早速、獲得に向け、調査に乗り出したようだ。


 常々、不思議に感じることがある。若返りはいいとして、ポジションは自動的に「与えられる」ものなのだろうか。自らの力で掴み取ってはじめてレギュラーのありがたみがわかるのではないだろうか。


 今季の巨人は11年ぶりのBクラス(4位)に沈んだ。3位までのチームに、勝ち上がれば日本シリーズ出場の権利が与えられるクライマックスシリーズ(CS)がスタートしたのは2007年だが、巨人が姿を見せないのは初めてである。


 確かに巨人は高齢化が進んでいる。5月25日から6月8日にかけては、球団ワーストを2つも更新する13連敗を記録した。球団の“黒歴史”とも言える13連敗目の野手スタメン平均年齢は32.3歳だった。


 翻ってV2を達成した広島。主力の田中広輔、菊池涼介、丸佳浩、安部友裕は同学年の28歳。4番の鈴木誠也、勝負強さを売り物にする西川龍馬に至っては23歳だ。


 巨人には、「このままでは置いてきぼりになる」との危機感があるようだ。世代交代に向け、カジを切るにはインパクトのある人事が必要だ。ある意味、村田はスケープゴートにされたとも言える。


 世代交代は大いに結構だ。だが若手には村田や阿部慎之助らがバリバリやっているうちにレギュラーの座を奪って欲しかった。エサを与えられて育つイケスのサカナと、エサを求めて大海を生き抜くサカナとではたくましさが違う。巨人でそれを感じるのは高卒2年目でスタメンショートの座を確保した坂本勇人くらいのものだ。


 最後に、もう一度、村田の話を。2000安打まで残り135本。1年間フルに働けば達成できる数字だ。3度目のホームラン王を狙うくらいの野心を秘めてシーズンに臨んでもらいたい。

 

<この原稿は2017年11月10日号『漫画ゴラク』に掲載されたものです>

 


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