東アジアE-1選手権(女子)が15日、千葉・フクダ電子アリーナで行われ、女子日本日本代表(なでしこジャパン)は女子北朝鮮代表に0-2で敗れた。なでしこジャパンは前半をスコアレスで終えると、後半20分にFWキム・ユンミにゴールを奪われ、北朝鮮に先制を許す。37分にMFリ・ヒャンシムに追加点を決められ、試合はそのまま終了した。なでしこジャパンは2勝1敗で2位。2010年大会以来の優勝はならなかった。勝った北朝鮮は3戦全勝で大会3連覇を達成した。

 

 キム・ユンミ、通算4ゴールで大会得点王&MVP(フクダ電子アリーナ)

女子日本代表 0-2 女子北朝鮮代表

【得点】

[北] キム・ユンミ(65分)、リ・ヒャンシム(82分)

 

「前半はなんとなく日本のペースに見えましたが、結局ねじ伏せられてしまった」

 なでしこジャパンの高倉麻子監督はそう言って肩を落とした。A代表就任後、初のタイトルを狙いにいったが、現状の力では北朝鮮の壁は厚かった。

 

 2連勝同士が迎えた優勝のかかる最終戦。3大会ぶりの東アジア制覇がかかるなでしこジャパンはスタメンを11日の中国戦から5人を入れ替え、4-4-2の布陣で臨んだ。ここ2試合は固定だった両サイドバックは大矢歩(愛媛FCレディース)と万屋美穂(マイナビベガルタ仙台レディース)に代わって、高木ひかり(ノジマステラ神奈川相模原)と宇津木瑠美(シアトル・レイン)が起用された。一方の北朝鮮は11日の韓国戦と変わらぬメンバーだった。

 

 前半は静かな立ち上がり。20分まで両軍これといったチャンスなく時間が過ぎていった。21分、左サイドから宇津木のクロスにFW岩渕真奈(INAC神戸)が頭で合わせたが、これは副審のフラッグが上がり、オフサイド。23分にはMF阪口夢穂(読売ベレーザ)の縦パスを受けたFW田中美南(読売ベレーザ)が振り向きざまにミドルを打った。ペナルティーエリアの外から放たれたシュートはゴール右に外れた。

 

 なでしこジャパンはボールを丁寧に繋いでいる印象はあったが、相手を脅かすほどの攻撃は見せられなかった。一方の北朝鮮もここ2戦で3得点のキム・ユンミを軸に攻撃を仕掛けたが、DF鮫島彩(INAC神戸)らの奮闘もあってゴールネットを揺らせない。前半はスコアが動かぬまま、終了した。

 

 ハーフタイムを迎えると状況は一変する。北朝鮮のキム・グァンミン監督によれば、選手たちに「私たちの方が強いと思わないか?」と声を掛けたという。さらには「思う存分、攻撃をしてこい!」と発破も。先発メンバーの平均年齢21.9歳。若い選手たちはこれで自信を取り戻す。

 

 16分、右コーナーキックからキム・ユンミのヘディングがなでしこジャパンのゴールを襲う。ここはGK池田咲紀子(浦和レッズレディース)が飛びついてキャッチ。事なきを得たものの、主導権は北朝鮮へと移りつつあった。

 

 なでしこジャパンの高倉監督も17分、岩渕に代えてMF中島依美(INAC神戸)を投入する。第1戦(8日)の韓国戦で途中出場から1ゴールと決勝ゴールを呼び込むミドルを放った。中国戦でも田中のゴールを演出したのは中島のスルーパス。ドリブラータイプの岩渕からプレーメーカータイプの中島との交代で流れを変えようと試みたが、なかなかボールは収まらず事態は好転しなかった。

 

 そして均衡を破ったのは北朝鮮のエースだった。後半20分、クロスからのこぼれ球をなでしこジャパンがクリアーし切れない。北朝鮮は拾ったボールをキム・ユンミに繋ぐ。キム・ユンミはペナルティー内の外でボールを持つと、左足を一閃。対峙した阪口も懸命に足を伸ばしたが、届かなかった。シュートはゴール右に突き刺さり、北朝鮮が先制した。

 

 こうなると北朝鮮は俄然勢いに乗る。35分には左サイドからペナルティーエリア内のキム・ユンミに当てたボールはコントロールできなかったものの、こぼれ球にリ・ヒャンシムが反応。シュートはゴール左に決まり、2-0。最終ラインの高木に代えてFW菅澤優衣香(浦和レッズレディース)をピッチに送り、フォーメーションもチェンジした。だが、その後も反撃する術もなく北朝鮮ペースのまま時計の針は進んでいく。

 

「追いかけるパワーを出し切れずに終わった」と高倉監督。終わってみれば0-2の完敗だった。試合後、サポーターからブーイングが浴びせられた。「チームにとって悔しい思いをバネにする大きな財産になったのかなとも思う」。来年4月にはヨルダンで2019年FIFA女子ワールドカップアジア予選を兼ねたAFCアジアカップが行われる。「この悔しさを糧にアジアで1番になれるように頑張りたい」と指揮官。3大会ぶりに東アジアを制することはできなったが、今はまだ種を植え、水を撒いている段階とも言える。この経験を肥やしに春に芽が出し、なでしこの花を咲かせたい。

 

(文/杉浦泰介)