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男子競歩・荒井、年間最優秀選手! ~JAAFアスレティックス・アワード~

(写真:プレゼンターのJAAF横川会長<左>と並んで記念撮影するMVPの荒井)

 19日、日本陸上競技連盟(JAAF)は「JAAFアスレティックス・アワード2017」を都内ホテルで開催した。年間最優秀選手賞にあたる「アスリート・オブ・ザ・イヤー」には世界陸上競技選手権ロンドン大会男子50km競歩で銀メダルを獲得した荒井広宙(自衛隊体育学校)が初受賞した。競歩からの選出は15年の谷井孝行(自衛隊体育学校)以来2人目。優秀選手賞は同大会で銅メダルを獲得した男子4×100mリレー日本代表の多田修平(関西学院大学)、飯塚翔太(ミズノ)、桐生祥秀(東洋大学)、藤光謙司(ゼンリン)、ケンブリッジ飛鳥(Nike)と、男子200m7位入賞のサニブラウン・アブデル・ハキーム(フロリダ大学)が選ばれた。多田は東京運動記者クラブが選出する男子新人賞も受賞した。

 

 そのほか東京運動記者クラブが選出する新人賞には男子は多田が、女子は長距離の安藤友香(スズキ浜松AC)が選ばれた。JAAFからは男子競歩の小林快(ビックカメラ)が受賞。9月に男子100mで日本新記録となる9秒98をマークした桐生は特別賞に輝き、ファン投票の「Most Impressive Athlete 2017」にも選出された。

 

(写真:アワードに出席した今年の日本陸上界の“顔”たち)

 日本陸上界の顔が集う表彰式は今年で11回目を迎える。JAAFの横川浩会長は出席した選手たちに対し「2020年の顔になってもらわなければならない」とエールを送った。今シーズンを振り返り、「日本の陸上も心地良い風を受けながら年を越せます」と挨拶した。

 

「心地良い風」を吹かせたのは、JAAFの強化方針で「ゴールドターゲット」に置かれている男子競歩と男子短距離・リレー種目だろう。8月の世界陸上でメダルを獲得したのは男子競歩50kmが2個(銀、銅)、男子4×100mリレーが1個(銅)である。いずれも前年のリオデジャネイロ五輪に続く表彰台。今や日本のお家芸と言ってもいい種目だ。

 

 アワードでも男子50km競歩から2選手の名前が呼ばれた。MVPの荒井はロンドンで競歩種目初の世界大会銀メダルを獲得した。昨年はリオ五輪で銅メダルを手にしており、今や押しも押されぬエースである。「このような素晴らしい賞をいただき、光栄な気持ちでいっぱいです」と壇上で喜びを語った。初出場の世界陸上で荒井に次ぐ3位に入った小林は新人賞。「今後の活躍を期待される賞。今年で終わることなく2018年、19年と一歩一歩着実に成長していって2020年を迎えたい」と意気込んだ。

 

「今年の世界選手権は個人でメダルを獲ったいいシーズンだったと思うんですが、出場した3人全員が5位以内に入ったことが一番うれしい。1人が強いのではなく日本の競歩は誰が出ても強いということを証明できた」と荒井。世界陸上で日本の層の厚さを世界に示した。来年はアジア競技大会(ジャカルタ)開催年。五輪も世界陸上もないシーズンである。荒井は5月にある世界競歩に照準を合わせている。

 

 目指すは団体でのメダル。近年の好調ぶりを考えれば十分に手が届くところにある。荒井は先頭を引っ張っていく存在だ。

「競歩は陸上の中でもまだまだ競技人口も少なくマイナーな部類に入る。もっともっと盛り上げて陸上の発展に繋げて日本のスポーツ界が充実するように全力を尽くして頑張っていきたいと思います」

 

(写真:メディアでも大きく取り上げられた100mの日本記録更新は最大のトピックだ)

 昨年はMVPに輝いた男子4×100mリレーはメンバーが変わった今年も世界大会で結果を残した。日本が世界に誇るバトンパスの精度に加え、個人の走力が上がったことも一因だろう。優秀賞にはリレーメンバーの多田、飯塚、桐生、藤光、ケンブリッジの他にサニブラウンも受賞している。サニブラウンは日本選手権で短距離2冠。世界陸上では100mで準決勝進出し、200mではファイナリストになった。

 

 日本陸上界の悲願だった男子100mの日本記録更新も9月に達成された。JAAFの河野洋平名誉会長は「スポーツ界の快挙」と称えた。“10秒の壁”を破ったのは日本選手権で振るわず世界陸上はリレーのみの代表選出となった桐生だ。インカレで9秒98を叩き出し、日本最速の称号を手にした。

 

「悔しい思いの方があった1年だった」。4年前に高校生ながら10秒01をマークし、多くの注目を集めた男は常に9秒台を期待されてきた。思うような結果を残せず苦しんだ時期もあったが、1つ大きな壁を超えた。「速さと強さを持つ選手になりたい」。目指すのは最速にして最強のスプリンターである。

 

(文・写真/杉浦泰介)