(写真:先にお湯を入れて、そこになみなみと木挽BLUEを注ぐ。芋焼酎の香りが際立つ)

二宮清純: プロゴルファーの鈴木規夫さんをお迎えしている「この人と飲みたい」。後編は「鈴木流」で作った本格芋焼酎『木挽BLUE』のお湯割りをいただきながらお話を伺います。
鈴木規夫 鈴木流なんて大げさですよ(笑)。


二宮: いやいや、鈴木さんに教えていただいたお湯を先に入れてそこに『木挽BLUE』を注ぐ7:3のお湯割りは、芋焼酎の香りがふわーっと漂って、それだけでいい気分です。
鈴木 お酒の飲み方は季節、相手、アテ(つまみ)により変えています。今日はこの7:3のお湯割りで、いい気分でお話できそうです。

 

二宮: これからの寒い季節にぴったりですね。では、もう一度、乾杯。
鈴木 乾杯! いただきます。

 

 

 

 

 

 レジェンドから全英の誘い

 

二宮: 若いころからお酒と付き合ってきた鈴木さん、いろいろと武勇伝がありそうですが……。
鈴木 そりゃあ過去にはお酒で失敗したこともあります(笑)。誰でもそうだと思うのですが、やがて節度が出てくるものです。常々思っているのはゴルフもお酒も自己制御が大事なんだな、と。

 

二宮: 自己制御ですか。なかなか難しいことです。特にお酒に関しては(笑)。
鈴木 ゴルフもお酒もやみくもに攻めるだけじゃ面白くない。攻めるところ、引くところ。じゃんじゃん飲むところ、チビチビ飲むところ。そういう線引きをできるようになるとさらに面白いんですね。

 

二宮: どちらも強弱、緩急が肝心だ、と。一番美味しかったお酒というと、やはり勝利の美酒ですか?
鈴木 そうですね。やはり勝った後に仲間と飲んだお酒は格別でした。アスリートにとって何にも代えがたい瞬間です。

 

二宮: 1976年、全英オープンに挑戦して初日トップ。そして最終的に10位と日本人最高の成績を残しました。あのときのお酒も美味しかったのでは?
鈴木 私は当時、24歳のまだ若造でした。イギリスはスコッチウイスキーの本場ですが、そんなものは日本でも飲んだことがない。ビールは黒ビールがありましたが、ぬるくてとても……。最初は面食らいましたね。

 

二宮: 食事はどうでしたか?
鈴木 レストランに行ってメニューを見ても何が出てくるのか分からない。ただそれもやがて楽しくなりましたよ。「ディス、プリーズ」で「何が出てくるんやろうな」と。だから日本食が恋しくてどうしても食べたいという気持ちはなかったです。

 

二宮: それはどうしてでしょう?
鈴木 「郷に入れば郷に従え」という諺があります。それが私のモットーなんです。松山英樹がメジャーで活躍できているのは「適応力」「対応力」があるからとお話しましたが、それと同じことです。

 

二宮: 全英に出場したら、英国流に従え、と。
鈴木 そうです。海外に限らず、私は日本国内どこでもそうですね。四国から流れて九州に本拠を構えて、やがて「九州の鷹」と呼ばれるようになった。そこで「いや、わし四国、香川の出身ですねん」とは言わない(笑)。「九州の鷹」で結構でございます、と。

 

二宮: あはは。昔から臨機応変だったんですね。さて、もう少し全英について伺いましょう。そもそも挑戦することになった経緯は?
鈴木 ピーター・トムソンに誘われたんですよ。

 

二宮: ピーター・トムソン!? 全英5勝のレジェンドですよね。彼が日本にスカウトに?
鈴木 当時、TBSが全英を放送することになって、その目玉として日本人選手が欲しかった。それでピーターがスカウトとしてやって来たというわけです。

 

二宮: レジェンドに声をかけられるとは、すごいじゃないですか。
鈴木 どういう風の吹き回しで私の所まで話が来たのかは分かりませんが、前年ランキング10位でしたからね。山本善隆、中村通、宮本康弘、吉川一雄という上位陣から声をかけて、私はその後にリストアップされていたんじゃないですかね。

 

二宮: 「全英に出ないか」と言われた時の気分はどうでしたか?
鈴木 当時はグローバルという言葉はまだ一般的ではなく、ワールドとかインターナショナルと言っていた。「日本だけじゃなくヨーロッパ、アメリカで活躍しなきゃいけないんじゃないか……」と漠然とは思っていたけど、まだ遠い世界のことでしたね。

 

 帝王との会話

 

二宮: 渡航費も当然、高かった。
鈴木 ピーターには「全部で100万円だ」と言われました。渡航費、滞在費などを込みの値段ですよ。

 

二宮: それは自腹ですか?

鈴木 いやいや。年間で賞金1000万円を稼げば一流という時代ですから、とてもとても……。それで所属していた会社に「全英行きたいから出してくれないか」と頼んでみました。

 

二宮: なんと言われましたか。
鈴木 「自信はあるのか?」って。もちろん「あります!」と即答しました。「いやあ、自信はないんですよ」なんていうヤツに大金を出すわけありませんからね(笑)。

 

二宮: で、晴れて全英行きが決まった。実際に行ってどうでしたか?
鈴木 行くのが決まったときは、とにかく世界を見たいという思いが強かったから嬉しかった。約16時間のフライトも苦痛じゃなかった。ある意味で舞い上がっていたんでしょう。ただ、実際に到着してコースに行ったら、「とんでもない所に来たな」と思いました。

 

二宮: 全英の舞台となるコースはロイヤルバークデールにしてもセントアンドリュースにしても、強風の印象があります。
鈴木 後になって一度、長嶋茂雄さんと全英の解説をしたことがありますが、長嶋さんはセントアンドリュースを「いやー、ここは一線級河川敷コースですね」と表現していました(笑)。

 

二宮: あははは、名だたるセントアンドリュースが河川敷ですか。実に長嶋さんらしい。
鈴木 長嶋さんは吹きっさらしという意味でそう言ったみたいなんですが、とにかくユニークな方でしたね。

 

二宮: さて全英に話を戻すと、初日をトップで終えて、"これは勝てるんじゃないか"という気にはなりませんでしたか?
鈴木 いや、それは思いませんでしたが、世界が近くなったということは実感しました。初日トップの後、2日目でスコアを崩したんです。それで練習場から帰るときのことです。向こうからジャック・ニクラウスがやって来たんですよ。

 

二宮: おお、帝王じゃないですか!
鈴木 そうです。誰もが知るビッグネームですよ。大勢の取り巻きというか報道陣を引き連れて向かってくるわけですよ。それで「ハイ、ジャパニーズヤングボーイ!」って。

 

二宮: 24歳の鈴木さん、舞い上がったでしょう。
鈴木 「おっ、なんやなんや」って感じですよ。「ナイストゥミーチュー、オレはジャック。お前は?」「ノリオスズキ、ナイストゥミーチュー」「昨日はすごかったな」「サンキューサンキュー」「今日はどうだったんだ」「いや、今日はちょっとバッドだった」「そうか。でもまだ明日もある。頑張れよ」って。

 

二宮: これだけ話せば、世界が近くなったと感じますよね。
鈴木 ニクラウスとラウンドする機会はありませんでしたが、彼も私も(コースとギャラリーゾーンを区切る)ロープの内側にいたわけです。ロープの中には限られた者しか立てませんから、とても名誉なことでした。

 

二宮: 全英で一緒に回ったのは?
鈴木 3日目にジェリー・ペイトと回りました。全英の前にメジャーで優勝してたと聞きましたが、ヘタクソでしたね(笑)。「大丈夫か、こんなゴルフで」と思ったほどです。

 

 Mr赤ヘル、競輪王とハシゴ酒


二宮: ところで76年の全英は誰が勝ったんでしたっけ。鈴木さんの活躍が鮮烈で優勝者の記憶が……。
鈴木 勝ったのはジョニー・ミラーです。そして2位がセベでした。

 

二宮: セベ? セベ・バレステロスですか?
鈴木 そうです。セベの初めての全英だったんですよ。だから皆の記憶がそっちにいっちゃってるんですよ。

 

二宮: セベは天才と呼ばれていましたが、全英でご覧になってどうでしたか。
鈴木 とにかく鮮烈でした。「こいつのゴルフは一体なんやねんなー」っていう。これまでの物差しでは測れない感じです。そういう意味では日本においては宮里優作や松山英樹の出現とダブりますね。

 

二宮: 鈴木さん自身、初めての全英はどんな体験でしたか?
鈴木 全英で達成したメジャーにマンデーから出て初日トップという成績は、日本人で私だけです。今後も破られることはないでしょう。そういう意味で今も私は全英に食わせてもらっている部分もある。それくらい貴重な体験でした。

 

二宮: さて、鈴木さんは幅広い交友関係で知られています。スポーツ界では元広島の山本浩二さん、元競輪選手の中野浩一さんと特に仲がいいですよね。
鈴木 浩二さんや中野とは今でも一緒にラウンドをしています。中野が弟、浩二さんが兄貴分。私が真ん中で調整役の次男坊といった役割です。

 

二宮: ミスター赤ヘル、世界スプリントV10。ものすごいメンバーですね。
鈴木 我々の間ではそういう肩書は一切、無用です。山本、中野、そして鈴木というただのゴルフ好き、酒好きとして付き合っていたんです。だから長続きしてるんじゃないですかね。我々の真ん中にはいつも酒があり、そしてゴルフがあった。振り返ると酒が取り持った縁というのは長続きしているんです。反対に私の実績に寄ってきた方とは、やがて疎遠になりましたね。

 

二宮: お酒が真ん中に、とはいい言葉ですね。山本さん、中野さんとはどんなお酒を?
鈴木 現役時代、年の始めに集まり各自、目標を紙に書いて茶封筒に封印していました。浩二さんなら「ホームランキング」とか、中野は「世界選手権制覇」。私は「何勝」と数字や目標を書くんです。

 

二宮: ほほう。それをシーズン後に開封した?
鈴木 そうです。それで達成しなかった者が会計係となって食事を奢るんですよ。1人負けだったら2人に、2人負けだったら勝者1人分を折半で、と。

 

二宮: 当然、食事だけでは終わりませんよね。
鈴木 もちろん。おいしい食事とお酒があって、それが1軒で済むわけがなく2軒、3軒とハシゴ酒。全部、支払いは負けたヤツです。

 

二宮: 相当な額になりそうですね。
鈴木 もちろん浩二さん、中野だけじゃなくマネジャーやお連れの方もいるわけだからハンパじゃない金額です。でも、いい仲間と飲むいい酒。最高の時間でしたね。

 

二宮: 「来年こそはオレが勝つ」とやる気にもなったでしょうね。
鈴木 酒を中心にいい出会い、縁に恵まれたと思っています。

 

二宮: 最後に本格芋焼酎『木挽BLUE』をもう1杯だけいかがですか。
鈴木 ぜひ。最後はロックでガツンと締めくくりましょう。うん、やはりパンチがありますね。春になったら水割り、夏はソーダ割りと何でもいけそうです。

 

二宮: 鈴木さんはお住いが大分。雲海は隣、宮崎県のお酒です。
鈴木 今日はいいお酒と巡り会えた、これも縁ですね。

(おわり)

 

<鈴木規夫(すずき・のりお)プロフィール>
1951年10月12日、香川県生まれ。近所のゴルフ場を遊び場として幼少期より芝生やラフの上を走り回っていた。プロテスト合格は72年、21歳のとき。73年、ミズノプロ新人で初優勝を飾り、74年、九州オープンゴルフ選手権に優勝。同オープンは78年まで5連覇を果たし、「九州の鷹」との異名をとった。76年、全英オープンに出場。予選から挑戦し、本戦初日は日本人プレーヤー史上初のトップに立った。この年の全英10位は日本人過去最高。81年、マスターズ出場。ミズノオープン、全日空オープン、太平洋クラブマスターズなど国内ツアー通算16勝。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回、鈴木さんと楽しんだお酒は芋焼酎「木挽BLUE(ブルー)」。宮崎の海 日向灘から採取した、雲海酒造独自の酵母【日向灘黒潮酵母】を使用し、宮崎・綾の日本有数の照葉樹林が生み出す清らかな水と南九州産の厳選された芋(黄金千貫)を原料に、綾蔵の熟練の蔵人達が丹精込めて造り上げました。芋焼酎なのにすっきりとしていて、ロックでも飲みやすい、爽やかな口当たりの本格芋焼酎です。

 

提供/雲海酒造株式会社

 

<対談協力>
山半本店
東京都港区麻布十番1-6-7
TEL:03-3408-7877
営業時間:11:30~24:00(LO23:30)
定休日:無休(元日のみ休)

 

☆プレゼント☆  

鈴木さんの直筆サイン色紙を本格芋焼酎「木挽BLUE」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はこちらのメールフォームより、件名と本文の最初に「鈴木規夫さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、郵便番号、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)を明記し、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストをお書き添えの上、お送りください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は18年1月11日(木)。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。

 

◎クイズ◎

 今回、鈴木規夫さんと楽しんだお酒の名前は?

 

 お酒は20歳になってから。

 お酒は楽しく適量を。

 飲酒運転は絶対にやめましょう。

 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。


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