来年6月に開幕するロシアワールドカップに臨む日本代表のベースキャンプ地がカザンに決定した。

 

 カザンはロシア連邦に属するタタールスタン共和国の首都で、モスクワから東に約820kmの大きな商工業都市だ。人口は約120万人。ロシアプレミアリーグの強豪ルビン・カザンの本拠地としても知られている。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が1日の抽選会後に「(3つの試合会場から)カザンは近いのか」と確認を求める発言をしたことからも、カザンが第一候補になっていることは明らかだった。

 

 日本がグループリーグ初戦を戦うサランスク(6月19日、対コロンビア)まではわずか300kmほどで、第2戦のエカテリンブルク(25日、対セネガル)、第3戦のボルゴグラード(28日、対ポーランド)も空路で約1時間~1時間30分とそう遠くない。3都市のちょうど中間地点にあることから日本サッカー協会の西野朗技術委員長は「各会場にスムーズに移動できる。移動の負担は少ないという立地面も考慮した」と強調した。

 

「日々のトレーニング環境を第一に考えた」と語った西野委員長によれば、ルビン・カザンの施設を使用できるのも大きな要因だったという。同じ敷地内にグラウンド、宿泊施設、サウナ、プール、ミーティングルームなどすべてが揃っており、無論セキュリティ面も問題ない。外部をシャットアウトしてサッカーに集中できるという環境も、魅力だったようである。

 

 前回の2014年ブラジルワールドカップでの反省を踏まえての選定作業だったと推察できる。

 

 サンパウロから内陸に100kmほど入ったイトゥは施設や空港のアクセスは非常に良かったものの、朝夕は冷え込んだ。筆者も同地に滞在したが、日本で言えば秋の気配に近かった。元々、避暑地としても知られている町でもある。しかし試合会場となった海岸沿いのレシフェ、ナタール、内陸のクイアバはいずれも高温多湿で、日射しも強かった。少なからずとも気候のギャップがあったように感じられた。

 

 カザンの6月の平均気温は18度ほど。試合会場の3都市はカザンからそう遠くないことから、気温差は激しくないと思われる。

 また、グループリーグにおける日本の会場から会場への移動距離は合計2422kmで、全体の中では13番目に長いとか。かつ、日本が属するグループHでは日本が最長。コロンビアにいたっては605kmと32チーム中最も短い。ちなみにポーランドが1567km、セネガルが2200kmとなっている。とはいえ距離が長いから不利になるとは一概に言えず、ベースキャンプ地から空港間のアクセスの状況なども加味しなければならない。その点でもカザンは40分ほどの距離に空港があり、イトゥや2010年南アフリカワールドカップでベースキャンプ地となったジョージと変わらない。

 

 日本協会は南アフリカワールドカップで指揮を執った岡田武史監督が重視した(1)安心安全(2)選手がリラックスできる環境(3)トレーニング施設の充実(4)空港まで近い。この4項目をブラジルでも踏襲したわけだが、今回のロシアでは試合会場の環境に近いことを追加したと言える。

 

 事前キャンプ地についてはオーストリアが有力候補に挙がっているようだ。試合会場に近い環境というばかりでなく、最後の強化試合でどのチームと戦えるのかも重要な条件になってくる。初戦のコロンビア戦、2戦目のセネガル戦を考えれば、南米勢、アフリカ勢の強豪国とマッチメークしたいところだろう。

 

 過去、5大会連続で本大会を経験してきたノウハウを最大限に活かしてもらいたい。完璧なる準備を期待したいものである。


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