今月は日本、韓国、北朝鮮、中国が参加した東アジアE-1選手権が行われました。日本はホーム開催だったにも関わらず、韓国に大敗を喫して2大会ぶりの優勝を逃しました。約半年後に迫るロシアW杯に向けて、暗雲が立ち込める大会になってしまった。“まだまだやらなければならないことがたくさんあるぁ”と感じましたね。

 

 代表戦は国の名誉が懸かっている!

 

 北朝鮮、中国に連勝し、韓国には引き分け以上で優勝を手にできました。しかし、宿敵相手に1対4と惨敗。ホームで韓国相手に4失点は63年ぶりです。大量失点の原因は選手たちの“タイトルを獲るんだ”“必ず勝つ”という気迫や戦う姿勢だったのでは、と感じます。根性論の一言では済まされませんが、そこの部分を強く感じてしまいました。

 

 国際試合はプレーしている自分たちの名誉だけでなく、国の名誉も懸かっています。今回のメンバーには強く認識して欲しいです。厳しいことを言えば、国を背負う覚悟が希薄だったと思います。

 

 韓国戦に関しては選手間の距離が遠かったとの声もあったようです。今回は国内組のみの編成。初選出の選手も多かったことは事実ですが、ベストメンバーでないのは韓国も同じです。日本は戦術の共有が全くできていなかった。チームとしてゲームプランが構築されておらず、仕方なく個で対応しますが、激しさの部分で競り負け失点を重ねてしまいました。

 

 北朝鮮、中国に連勝したとはいえ、前者には終了間際のMF井手口陽介のゴールでからくも勝ちました。東アジアのこの4カ国だと国内の選手のみでチームを作ると決して力の差が大きいわけではないとわかりました。今後、Jリーガーの底上げが課題です。

 

 意識の面で海外組と国内組に温度差がやはりあると感じますね。日本人を代表して海外クラブでプレーしている選手とはやはり意識に差がある。球際や寄せの速さの場面で甘さがプレーに出た気がします。こういうところにも戦う姿勢が出てしまいますよね。非常に残念です。

 

 井手口の嗅覚は武田級

 

 過去にはこの大会をステップボードにFW柿谷曜一朗やDF森重真人がW杯のメンバー入りを果たしました。E-1選手権では国内組の選別の意味合いもあります。今大会を通じて、今後、A代表に絡んできそうな人材となると……。僕としては収穫の乏しい大会だったというのが率直な意見です。もちろん、初戦の北朝鮮戦でファインセーブを連発したGK中村航輔あたりには頑張って欲しいなとは思います。

 

 それ以外となるとやはり井手口の出来は目を引きましたが、彼は新戦力ではない(笑)。既に定着している主力です。自分がゴール前でボールに関与していなくても、ペナルティーエリア周辺でこぼれ球の予測に長けている。ポジション、プレーエリアは全く違いますが元日本代表FWの武田修宏に似てるなぁと。嗅覚が鋭く、こぼれてきたボールをどうするのかと、次のイメージを常に持ってプレーできている素晴らしい若手ですね。

 

 さて、1年を振り返ってみるとロシアW杯出場を決めることができてよかったですね。Jリーグに目を移すとゴール前のワクワク感が少なかったような気がします。マンネリ化してしまっているのかな、という気がします。今季から優勝賞金が跳ね上がっていますから、来季は前線の選手たちのさらなる奮起に期待したいです。

 

 また、1年間、僕のコラムの読者の皆様、誠にありがとうございました。半年後にはいよいよロシアW杯が開幕します。引き続き、来年もこのコラムでサッカー界のことを語っていきますので、宜しくお願いいたします。それでは、よいお年をお迎えください。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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