1日、第97回天皇杯全日本サッカー選手権大会決勝のセレッソ大阪対横浜F・マリノスの一戦が埼玉スタジアムで行われ、C大阪が横浜FMに2対1で勝利した。C大阪は前半8分に横浜FMのFW伊藤翔に先制点を決められたが、後半20分にFW山村和也が右足で押し込んで同点に追いついた。延長に入ると5分にMF水沼宏太がヘディングで決めて逆転し、前進のヤンマー時代以来43大会ぶり、C大阪となってからは初めて天皇杯を制した。

 

 山村、1G1Aの活躍(埼玉スタジアム)

セレッソ大阪 2-1 横浜F・マリノス

【得点】

[セ] 山村和也(65分)、水沼宏太(95分)

[横] 伊藤翔(8分)

 

 今季からC大阪の指揮を執るユン・ジョンファン監督はテクニシャンが多いチームにハードワークを植え付けていたが、試合序盤は思うようにプレスがかからず苦しい展開だった。

 

 8分にマークが緩慢になったところを横浜FMに突かれた。左サイドからレフティーのMF山中亮輔にアーリークロスを入れられた。サイドバックの丸橋祐介とセンターバックの木本恭生の中間に相手のワントップ・伊藤に入られる。フリーでボールを受けた伊藤に胸トラップから右足であっさりと先制点を許した。

 

 その後もC大阪は前線からうまくプレスがハマらず、選手間の距離が遠いまま、試合を折り返す。ユン監督は「球際で負けているから、もっと激しく」と指示を出し、イレブンをピッチに送り出した。

 

 指揮官の叱咤がきいたのだろう。水沼、MFソウザら中盤の選手が前線と絡み、徐々に攻撃に厚みが出てくる。すると15分だった。水沼がペナルティーアーク付近から右足を振り抜くと、強烈なシュートは枠内に飛んだ。横浜FMのGK飯倉大樹が何とか弾き、DFがクリアー。しかし、中途半端になったクリアーボールは「良いところに転がってきた」とフリーの山村の前へ。今季DFからコンバートされた山村が右足で確実にゴールネットを揺らした。

 

 同点に追いつくと横浜FMに今季3戦3勝のC大阪が波に乗る。27分にはFW柿谷曜一朗が左足で、42分には途中出場のFWリカルド・サントスが右足トーキックで横浜FMゴールを脅かすものの惜しくもゴールとはならなかったが、勢いそのままに延長戦へと突入した。

 

 延長に入り、最初の決定機はやはりC大阪に訪れた。左サイドから山村がルックアップし、ゴール前を確認。「ファーにサントスと(水沼)宏太が見えた」と山村。クロスは相手GKを越えて、水沼の頭にピタリと合い、ゴールに転がった。

 

 逆転ゴールを奪うと、ユン監督は元々DF出身の山村をセンターバックに下げてフォーメーションを4-4-2から5-4-1に変更。守備をしっかりと固めて、試合終了。C大阪が粘り強さを見せつけて延長戦を制した。

 

 試合後、優勝指揮官は「選手たちを信じていた。苦しい時間帯を乗り越えたことが結果につながった」とイレブンを称えた。

 

 値千金の逆転ゴールを決めた水沼は、得点シーンをこう振り返った。

「どうなったかあまり覚えてないです。(ボールが)来るかなと思って走っていたら来た。急に感覚が研ぎ澄まされたのかなと思います(笑)。合わせるだけでしたが、そこにいることが大事なので、いられてよかったです」

 

 3年ぶりにJ1の舞台に復帰したC大阪がルヴァンカップ、天皇杯と2冠を獲得した。技術に長けるものの、精神的にひ弱だったチームは韓国人監督のもと、着実に成長を遂げている。今年2月から開幕するJリーグではマークが厳しくなることは避けられない。“常勝”と呼ばれるためには、精神的なタフさを身に着けることが必至である。

 

(文/大木雄貴)