第94回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)は3日、神奈川・芦ノ湖から東京・大手町までの復路5区間(109.6キロ)が行われた。往路2位の青山学院大学は6区からトップに立つと、そのまま逃げ切った。合計タイムは10時間57分39秒で史上6校目の4連覇を達成した。2位に往路優勝の東洋大学が4分52秒差で、3位には早稲田大学が11分29秒差で入った。

 

 上位10校までに与えられる来年のシード権は日本体育大学、東海大学、法政大学、城西大学、拓殖大学、帝京大学、中央学院大学までが獲得。往路11位の中央学院大、12位の帝京大は復路で追い上げ、次回大会への出場権を掴みとった。一方、駒澤大学は12位で9年ぶりにシード喪失。優勝候補にも挙げられていた神奈川大学は13位、最多出場の中央大学は15位でシード権を得られなかった。

 

 フィニッシュ地点の大手町・読売新聞社前。今年も先頭でやって来たのはフレッシュグリーンの襷だった。青学大は史上6校目の総合4連覇が懸かる今大会で、層の厚さを見せつけた。

 

 復路のスタート6区は、36秒差で逃げる東洋大は初の箱根駅伝となる今西駿介(2年)、追う青学大は3年連続6区の小野田優次(3年)がエントリー変更なく起用された。今西は前半から早いペースを刻む。5.1km通過の芦ノ湯まではその差はほぼ変わらず。しかし、下り始めてからが小野田の本領発揮だった。9.1kmの小涌園前で差は28秒と迫ると、大平台のヘアピンカーブでは15秒差、首位を走る今西の姿は視界にはっきりととらえることができた。

 

 15kmを過ぎると、ついに追いついた。「ここから抜けるなと思いました」。そこから一気に突き放しにかかる。残り3.8kmの函嶺洞門を通り過ぎると、逆に13秒差をつける。昨年、日体大の秋山清仁(現愛知製鋼)が記録した区間記録(58分1秒)に迫る走り。58分3秒で、2位の東洋大に52秒の差を付けて次走者に襷を渡した。小野田は2年連続区間2位。「やっと獲った」と“山下りのスペシャリスト”は3年目にして初の区間賞を手にし、笑顔を見せた。

 

 首位に立った青学大はここから独走状態に入る。7区を任された林奎介(3年)は初の箱根駅伝だったが「応援がすごいので力になって、いつも以上に走れた」と、のびのびと走った。コンパクトで安定したフォームで前進する。6年前に東洋大の設楽悠太(Honda)がマークした区間記録を上回るペースで走り抜ける。最後まで落ちることなく、1時間2分16秒でフィニッシュ。区間記録を17秒塗り替え、2位との差を3分28秒と広げた。

 

 8区は満を持してダブルエースの1人、下田裕太(4年)の登場だ。3年連続の8区を走る下田は2年連続区間賞を獲り、青学大の連覇に貢献してきた。先頭で襷を受け取ったのも3年連続である。前のいない湘南海岸。慣れた景色を眺めながら、下田は最後の箱根駅伝を力強く駆け抜ける。区間記録ペースで中盤まで進んだが、最後はペースダウンで21年前の記録には届かなかった。1時間4分46秒。「自分のベストを尽くせた」と、3年連続の区間賞獲得だ。差は6分15秒までに広がり、優勝をほぼ決定付けた。

 

 9区は最初で最後の箱根駅伝となった近藤修一郎(4年)、アンカーの橋間貴弥(3年)も初の箱根路だ。近藤は東洋大の小早川健(4年)、橋間は小笹椋(3年)に差を詰められたものの、青学大の4連覇は動かなかった。原晋監督は「6区の小野田、7区の林、8区の下田には絶対的な信頼を置いていました。ここで勝つというような6、7、8区が勝負所だったと思います」と振り返る。指揮官の期待通りにフレッシュグリーンの襷は勝利のハーモニーを奏でた。フィニッシュタイムの10時間57分39秒は昨年よりも6分半速い大会記録となった。

 

 来シーズンは田村、下田のダブルエースが卒業。戦力ダウンは免れない。一方で下級生を軸に戦った2位の東洋大、3位の東海大が力を付けてくれば、青学大にとっては更に怖い存在となる。最上級生となる小野田が「今年のチームを超えられるようにしたい」と口にすれば、花の2区区間賞の森田歩希(3年)は「自分らの代で5連覇、3冠を掲げていきたい。今年よりいいチームにしていきたいです」と続いた。就任10年、箱根駅伝で4割の勝率を誇る原監督は「今後の青山学院もぜひ期待してください」と語る。ここから史上3校目となる5連覇の挑戦がスタートする。

 

 総合成績は以下の通り。 

(1)青山学院大(2)東洋大(3)早稲田大(4)日本体育大(5)東海大(6)法政大(7)城西大(8)拓殖大(9)帝京大(10)中央学院大(11)順天堂大(12)駒澤大(13)神奈川大(14)國學院大(15)中央大(16)大東文化大(17)東京国際大(18)山梨学院大(19)国士舘大(20)上武大(※)関東学生連合

※OP参加のため順位なし

 

(文/杉浦泰介)