半年後に迫ったサッカーW杯ロシア大会の組み分けが決まった。1次リーグで日本(FIFAランキング55位)はH組に入り、コロンビア(同13位)、セネガル(同23位)、ポーランド(同7位)と戦うことになった。

 

 

 W杯はサッカー選手にとって、誰もが出場を夢見る世界最高峰の舞台である。J1、J2、J3合わせた登録選手(日本人)は1400人(2月1日時点)を超える。加えてヨーロッパを中心に国外でプレーする選手が約200人とも言われている。この中から、W杯の登録メンバー入りできるのは、わずか23人。狭き門である。

 

 そんな中、ひそかに注目している選手がいる。浦和レッズのMF長澤和輝だ。

 

 日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督の評価は、すこぶるいい。

「ここ4、5試合から注目し始めた(10月31日時点)。それより前は見ていなかった。アジアチャンピオンズリーグ(ACL)準決勝でのプレーがいいと思った。攻守に渡り運動量が豊富。守備もこなし、攻撃でも何かをもたらせることができる」

 

 11月15日、フランスでのベルギー戦で長澤は代表デビューを飾った。しかもスタメン出場だ。0対1で敗れたものの、長澤のプレーには光るものがあった。

 

 初めてコンビを組むMF井手口陽介(ガンバ大阪)とのコンビネーションも悪くなかった。前線からプレスをかけ、パスカットから何度も有効なスルーパスを通してみせた。後半17分に途中交代するまで攻守両面でチームに貢献した。

 

 スポニチ紙(11月16日付)によると長澤のプレー成功率は先発陣最高の83・6%。ハリルホジッチも「満足している」と合格点を与えた。

 

 日本代表が世代交代の時期にさしかかっているのは誰の目にも明らかだ。10年南アフリカW杯で決勝トーナメント進出の原動力となったFW本田圭佑(パチューカ)は31歳。本人自ら「もうロートルですから」と自嘲気味に語っている。MF香川真司(ドルトムント)、FW岡崎慎司(レスターシティ)も往年の輝きはない。

 

 それを受け、指揮官はこう語る。

「日本は若手を信頼することに少し欠けている。私は経験が浅くても、代表にふさわしいプレーをしていれば、その選手を選ぶ」

 

 この言葉は、これまでチャンスの少なかった若手にとっては、大きな励みとなったに違いない。

 

 今シーズンから浦和に復帰した長澤は、前半戦はベンチを温めることが多かった。こんな思いで、試合を見守っていたという。

「出られないことでくよくよしても仕方ない。出たら思いっきりやろう。チャンスが来た時に結果が出せないことが一番よくない」

 

 この7月30日にミハイロ・ペトロヴィッチから堀孝史に監督が交代したことでチャンスが巡ってきた。それからの時間は、「充実した3カ月」である。

 

 人生、上り坂もあれば下り坂もある。ロシアまでの上り坂を、一気に駆け上がってほしい。

 

<この原稿は『サンデー毎日』2017年12月24日号に掲載されたものです>

 


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