久しぶりにスペインから帰国した知人が、日本の高校サッカーを見て驚いていた。

 

「いや、上手いのは上手い。ひょっとしたらスペイン人より上かもしれない。でも、体格が貧弱すぎますよ」

 

 だよな。

 平均身長だけを比較するならば、日本人とスペイン人に大差はない。若干スペイン人の方が大きいようだが、わたし自身、日常生活の中にいる限り、体格の差を覚えることはほとんどなかった。

 

 だが、サッカーの現場に行くと愕然とさせられた。誰も彼も、とにかく身体が分厚いのである。これはトッププロに限った話ではない。U-18年代の試合を観に行っても、太腿の太さ、胸板の厚さは日本の高校生とはまるで違っていた。日本であれば全国トップクラスの体格であっても、スペインならば平均以下……ぐらいの差があった。

 

 何度もこのコラムで書いてきているが、サッカーは体格が関係しない競技とは言われているものの、貧弱な体格が有利に働くというわけでは断じてない。同じスキル、同じ速さを持っているならば、大きい方、強い方がアドバンテージを持っていることは言うまでもない。海外へ移籍した日本人選手が、その圧倒的な体格差に愕然とする場面は、数えきれないほど見てきた。

 

 これって、どうにかならないものだろうか。

 

「なりますよ」というのは、件のスペイン帰りの友人である。

 

「Jのユースや高校生を見ていると、とにかく食べないんですよね。お昼ご飯を食べる。3時か4時ぐらいから練習をして、夜、家に帰ってからようやく夕食。これじゃ、身体が太くなるどころか、ダイエット・トレーニングですよ」

 

 スペインの現場をつぶさに見てきた彼によれば、スペインの若者たちが、栄養学の知識に長けているわけではないという。ただ、とにかく食べる。練習前にも食べるし、練習が終わったらすぐに食べる。家に帰ってからもまた食べる。そうすることで、エネルギーを欲する身体が筋肉まで燃焼させてしまうことを防ぎ、結果、日本の高校生とは比べ物にならない立派な体格が出来上がっているのだとか。

 

 確かに、同じ日本に暮らす高校生でも、野球やラグビーをやっている子供たちの体格はスペインのサッカー選手と比較しても遜色がないぐらいガッチリとしている。体格の重要性を認識した指導者が、選手たちに食べることを強く要求しているからだろう。

 

 試しに、「高校野球 食育」で検索してみると、膨大な数の記事や写真がヒットするが、「高校サッカー 食育」になるとその数はガクンと落ちる。残念ながら、サッカーはそれだけ遅れている。

 

 見方を変えれば、サッカー界にはまだ伸びしろが残っているということ。若年層の食育。考えていかなければいけないテーマである。

 

<この原稿は18年1月25日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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