(写真:スタメン起用に応え、完封勝ちに貢献した小西)

 28日、世界ランキング9位のアイスホッケー女子日本代表(スマイルジャパン)の平昌五輪壮行試合「スマイルジャパン ブリヂストン ブリザックチャレンジ」が東京・ダイドードリンコアイスアリーナで行われた。同8位のチェコ女子代表と対戦したスマイルジャパンはシュート数で圧倒しながら、なかなか得点が奪えない。決定力不足に悩まされたが、第3ピリオドにFW中村亜実(SEIBUプリンセスラビッツ)が決める。チェコの反撃も凌ぎ切り、1-0で逃げ切った。

 

 仮想スイスからシャットアウト勝ち。スマイルジャパンがチェコを破り、壮行試合3連勝を果たした。

 

 平昌五輪の予選ラウンド(グループB)で対戦するスイス女子代表は世界ランキング6位。ソチ五輪で銅メダルを獲得した強豪は、GKの能力が高いチームである。スマイルジャパンの山中武司監督によれば、チェコも守りの粘り強さがあり似ているという。11月にはチェコとスイスは対戦。スイスが1ー0で辛勝している。スマイルジャパンは仮想スイスに見立てた試合に臨んだ。

 

(写真:床秦留可は鋭いパスで度々チャンスをつくった)

 開始30秒も経たぬうちにチャンスをつくった。FW床秦留可(SEIBUプリンセスラビッツ)がシュート。その10秒後にはDF床亜矢可(SEIBUプリンセスラビッツ)がミドルレンジからゴールを狙った。いずれもGKにキャッチされたものの、得点の予感を漂わせた。

 

 その後もFW久保英恵(SEIBUプリンセスラビッツ)、床秦留可らがチャンスメイク。しかし、ゴール前に迫れどスコアできない時間が続く。2度のキルプレー(一時退場による数的不利の状況)は、GK小西あかね(SEIBUプリンセスラビッツ)を中心に守り切った。

 

 スマイルジャパンの攻勢は第2ピリオドに入ってからも続いた。このピリオドはチェコのシュートをゼロに封じた。シュートは16本。第1ピリオドも合わせれば26本だが、立ちはだかるチェコの守護神からゴールを奪うことはできなかった。パワープレー(一時退場による数的有利の状況)も生かせず、第3ピリオドに突入した。

 

(写真:ようやく生まれた先制点に両手を挙げて喜ぶ)

 迎えた第3ピリオドもスマイルジャパンはなかなか均衡を破れない。引き分けも頭を過り始めた16分7秒、ついに試合が動いた。パワープレーのチャンスで敵陣へ侵入。DF小池詩織(道路建設ペリグリン)がミドルレンジから「(中村)亜実さんがスクリーンに入っていたので、狙って打ちました」と、シュート性のパスを送る。

 

 これを中村がコースを変えて流し込む。前線で身体を張り続けていた中村。この試合チーム最多7本のシュートを放ったムードメーカーが待望の先取点を奪った。殊勲の中村は「“ここで決める”と全員がそう思って戦っていた。チーム全員での得点です」と胸を張る。

 

 チェコはGKを下げて“6人攻撃”を仕掛けてきたが、守備陣が踏ん張り、最後までゴールを許さなかった。「最後得点が欲しい場面でパワープレーで取り切れたのは非常に良かった。今日のような難しい場面はオリンピックでも想定できる」と山中監督。キャプテンのFW大澤ちほ(道路建設ペリグリン)は「最後の1点を取れずにズルズルいってしまうことが多かったんですが、今日は1点取れて勝ち切れたので自信にしていいのかなと思います」と手応えを口にした。

 

(写真:シュートを7本に抑え、チェコにチャンスらしいチャンスはつくらせなかった)

 平昌五輪の予選ラウンドと同じ中1日で臨んだ3試合を3連勝である。うち2試合で完封とディフェンス面は機能している。山中監督も「シュートを7本に抑えたディフェンスは満足している。打たれたシュートも崩されてはいない。ディフェンスは完璧な仕事をやってくれた」と、この日の守備面を高く評価した。

 

 中でもスタメンで起用したGK小西に、指揮官は「シュートがなかなかこない中で落ち着いたセーブをしてくれた」と称える。春名真仁GKコーチも「(相手の)シュート機会が少ない中でしっかりとGKの仕事をこなしてくれた。守りづらい状況でも止めるべきところで止めて、勝利に貢献してくれた」と合格点を与えた。

 

 この日の課題を挙げるとすれば、34本のシュートを打ちながら1得点しか取れなかったことだろう。山中監督は「3点くらい取れていれば完勝だった」と語った。壮行試合は残り1戦。勢いを付けて、平昌に乗り込みたい。

 

(文・写真/杉浦泰介)