(写真:下位からの脱却を図る秋元監督)

 今季も1部リーグ戦う伊予銀行VERTZは日本女子ソフトボールリーグ開幕まで着々と準備を進めている。2人の新人選手を迎えてシーズンを戦う。昨季は8勝14敗の10位。1部では最多勝利数を記録し、全日本総合選手権ではベスト4に入った。伊予銀行のメンバーを中心に構成した愛媛県代表は国民体育大会優勝。着実に力を付けていると言っていいだろう。就任4シーズン目となる秋元理紗監督は「4強入り」という高い目標を掲げる。

 

 

「どこのチームもそうだと思うのですが少しずつ勝ち星が増えていけば、目標は頑張ったら届くところに設定していきたい。ウチもいよいよ4強を目指してやっていこうとスタートを切りました」

 シーズン開幕を控え、秋元監督をはじめ、チームの士気も高まっている。 

 

 昨シーズン4位の豊田自動織機シャイニングベガは13勝9敗。10位の伊予銀行とは5つの勝ち星の差があった。「もう1点取れていれば勝ち切れる試合がいくつかあった」(秋元監督)。1点差負けは4試合、前シーズンに比べれば減少したが、接戦をモノにする力がなければ上位進出は狙えない。

 

 そのためには何が必要か。

「バッテリーを中心にとにかく無駄な失点をなくしていく。1点をもぎ取って勝ち切りたい」

 投手陣は大西里帆子が引退したものの、内海花菜、庄司奈々、山口清楓、原田悠が残った。昨シーズン5勝の内海、同3勝の庄司には更なる活躍を、日本リーグデビューを果たした山口と原田には先発の軸に割ってはいるような成長を期待したいところだ。

 

(写真:昨シーズンは開幕投手を務め、完投勝利を挙げた庄司)

 自らも投手出身である秋元監督は、個性の違う4人をこう評する。

「内海は左ピッチャー独特のボールの軌道や回転をいかしてバッターを抑えていくタイプです。庄司はコントロールが良く、多彩な変化球で的を絞らせずに打ち取っていく。原田は庄司と似ていますが、特に緩急のつけ方が巧いですね。山口はまだコントロールは粗削りですけど、スピードボールと変化球を武器にしてバッターを圧倒していくピッチャーです」

 

 キャラクターが異なる4投手をうまく使い分け、起用していくこともカギになる。「最終的には4人で協力していくことになると思うんですが、今の時点ではどちらかと言えば競争。“自分が1試合1人で投げて勝ち切っていくぞ”というくらいの気持ちで準備してほしいですね」。それぞれがひとり立ちすれば層の厚みは増す。そうすれば「相手チームとしては、対策をすることが難しくなってくるのかなと思っています」と指揮官は期待を寄せる。

 

 新入団は内野手と捕手の2人。日本文理大学の甲斐はづき、飛龍高校の柴三奈だ。甲斐はマルチに守れる内野手で、彼女の日本文理大と伊予銀行は練習試合でも対戦経験がある。秋元監督は甲斐に対して、こう活躍している。「人間的にもしっかりしています。コツコツと自分で考えて努力できる選手です。身体も強いし、パンチ力もある。まだまだ伸びる子だなと。ウチのチームカラーに合うようなタイプの選手だったので採用を決めました」。一方の柴は強肩のキャッチャーだ。昨年の全国高校総合体育大会(インターハイ)準優勝に貢献した。「大舞台でも憶することなく、結構強気な配球ができます。洞察力もあり、キャッチャーとしては、高校生で一番良いんじゃないかなと私は思っています」

 

 2人のルーキーのほか、スタッフ陣にも新戦力が加わった。村上忠興スコアラーがコーチに代わり、キャッチャーの西山絵梨香が分析スタッフに転身した。分析スタッフは伊予銀行で初めて置くセクション。西山本人の提案により、実現に至った。日本リーグで5年プレー。転向後は捕手としての経験や洞察力を生かす。「データ収集は重要。チームとしても戦力になる」と秋元監督も“新人”スタッフを歓迎している。

 

(写真:キャプテン2年目の對馬。監督から寄せられる期待も高い)

 キャプテンは昨シーズンに引き続き、對馬弥子が務める。彼女の仕事ぶりは秋元監督も評価している。主にトップバッターを任された對馬は出塁率3割6分3厘をマークした。指揮官は今シーズン、リーダーシップを求める。

「去年1年はいろいろ大変だったと思うのですが、2年目はさらに成長してほしい。去年は地元開催の国体があり、結果を残さないといけない年でした。だから對馬にとっては、チームを引っ張っていくこと以上に自分が結果を出してチームを勝利に導くような活躍をしたいという想いが強かったと思うんです。だから今シーズンは、もっとチームを引っ張っていくこと。私の方からは『若い選手にいろいろなことを教えていきながら、自らも結果を出す立場になっていってほしい』と伝えています」

 

 日本リーグは3月31日に愛知・ナゴヤドームを舞台に開幕。伊予銀行の開幕戦は4月1日、Honda Revertaと対戦する。来るべき春に向けて、まずは合宿やオープン戦で新戦力の見極め、チームの底上げを図る。秋元監督の手腕も問われるところだ。

「コーチもできましたし、西山も分析スタッフでサポートしてくれます。周りの人たちの力を借りながら、選手もキャプテンもひとつずつ年をとって、いろいろできることが増えてきている。みんなの力をうまく引き出しながらやりたいと思っています」

 

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