昨季、信濃グランセローズは球団創設以来、初のリーグ優勝を果たしました。ずっと応援していただいているファンの皆さん、スポンサーの方々にようやく恩返しができたという思いでいっぱいです。ただ四国アイランドリーグplusと戦ったグランドチャンピオンシップ(グラチャン)では徳島インディゴソックスに敗れました。今季は改めて優勝、そして日本一を目指して頑張ります。

 

 先発転向の山﨑をNPBへ

 後期、優勝を目指して戦っている中で選手は本当に強くなりました。富山GRNサンダーバーズとのマッチレースで、向こうも負けないから、こっちも負けられないという状況の中、選手は「勝てばいいんだ、勝てば」と精神的な強さを見せてくれました。プレッシャーはまったくなく、いつものうちの野球でつかんだ優勝でした。


 徳島とのグラチャンは両方ともよく似たディフェンスのチームで勝っても負けても接戦だと思っていました。最後は降雨コールドという結果で、9回まで戦わせてやりたかったという気持ちがあります。でも5戦、堂々と戦った選手を褒めてあげたいです。

 

 さて今季ですが、ポイントゲッターだった中心打者が抜けました。特に正捕手の柴田悠介が野球に区切りをつけ引退したのはチームに大きな痛手です。得点力不足が指摘されていて、その点については私も「そうだろうな」と思っています。でも逆に新戦力を含めて機動力を使える選手が揃ったので、より進化した信濃の野球、スピード感のある野球を見せられるんじゃないかと私自身楽しみにしています。

 

 ピッチャーは樫尾亮磨や山﨑悠生ら計算できるピッチャーが残っているので大丈夫でしょう。昨年、抑えとしてフル回転した山﨑を先発に転向させますが、現在、「この選手をとってください」と抑え投手の候補を球団に提出しています。そこが埋まれば今季も優勝争いができるチームですよ。

 

 山﨑を先発に回したのはNPBへ送り出すためです。昨年、一昨年と2年続けて結果を残したものの、やはりスカウトが評価するのは先発投手なんですよ。山﨑は昨季、141~142キロの球速ながら空振り三振を多くとっていました。スピードガンでは分からないボールのキレ、回転があるんですよ。それに山﨑は決して大きくない体(身長173センチ)ですが、マウンド度胸が抜群です。実にプロ向きだと思うので、「今年はうちの試合、もっと見に来てくださいよ」とスカウトの方々にお願いしておきました。

 

 山﨑は2年連続で結果を残したけどドラフト指名されなかったことで、シーズン終了後は引退すると言っていたんです。それを引き止めて、「今年、活躍してそれで胸を張ってNPBにいけ!」とハッパをかけたので、山﨑の頑張りに注目してください。

 

 信濃のファンの皆さんには、創設から11年間も優勝をお待たせしたことで大変申し訳ないな、と思っています。その間に離れていったファンの人もいると思います。V2に向けてプレッシャーはありますが、今季は攻守に期待できる選手が揃っているので、うまく育てられれば連覇も可能だと考えています。

 

 機動力を使う新しい信濃の野球をぜひ見に来てください。期待に応えられるようにチーム一丸となって頑張ります。

 

<本西厚博(もとにし・あつひろ)>:信濃グランセローズ監督
1962年5月15日、長崎県出身。瓊浦高から三菱重工長崎を経て、86年、ドラフト4位で阪急ブレーブスに入団。1年目から一軍に定着。プロ3年目の89年には、外野手としてゴールデングラブ賞を獲得した。延べ4球団を渡り歩き、01年に現役を引退。02年に千葉ロッテマリーンズのコーチを務める。その後、東北楽天ゴールデンイーグルスと韓国のロッテ・ジャイアンツのコーチを経て、16年から信濃グランセローズの監督を務めている。


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