9日に開幕した平昌五輪は大会4日目を消化した。予選ラウンドグループBの女子アイスホッケー日本代表(スマイルジャパン)は2戦2敗で決勝トーナメント進出を逃した。これにより、目標としていたメダル獲得の可能性は潰えたことになる。14日に予選ラウンド最終戦、韓国代表と北朝鮮代表の南北合同チームと対戦し、オリンピック初白星を目指す。

 

 4年前のソチ五輪で、スマイルジャパンはメダル獲得を目標に掲げながら予選ラウンド3連敗を喫した。順位決定戦も含めれば5戦全敗だった。前回に続きキャプテンを務めるFW大澤ちほ(道路建設ペリグリン)は「(当時とは)環境も状況も違う。オリンピックに出るチームだったのが、今はメダル争いをできるチーム」と大会前に豪語。守備の要であるDF床亜矢可(SEIBUプリンセスラビッツ)も前回との違いをこう口にしていた。「ソチオリンピックは出場権獲得から1年でメダルに目標を上げました。今回はソチで負けてから本気で目指した4年でした」

 

 2016年7月より就任した山中武史監督(写真)の下、国内外で合宿を行った。課題となっていたフィジカルを徹底して強化した。バンクーバー五輪銀メダルのアメリカ代表のデータを基に数値を上げた。60分間走り切り、当たり負けない身体づくり。逞しさを増して、再びオリンピック切符を勝ち取った。DF出身の山中監督は選手たちに、1試合の被シュート数「25本以下」「2失点以内」という目標を設定した。前線からのチェックで相手にプレッシャーをかける戦術がハマれば、格上にも勝機を見出せる。手応えを得ての韓国に乗り込んだはずだった。

 

 課題は試合運びと決定力

 

 しかし10日、初戦のスウェーデン戦はアップセットを起こせなかった。4年前のソチ五輪と同じ1点差での敗戦だった。シュートの数では31-26と相手を上回っていた。チャンスも多くつくったが、ゴールが遠く1-2で敗れた。一方で目についたのが試合運びの拙さだった。失点はいずれもピリオドの序盤にスキを突かれたものだ。特に第3ピリオドの決勝点は自陣でパスカットされて奪われた。

 

 続く12日のスイス戦は1-3。スウェーデン戦を上回る38本のシュートを放ちながら、ゴールは1点のみ。この試合はキルプレー(数的不利の状況)で凌ぎ切れず、2度失点を喫した。逆に第1ピリオドには2人多いパワープレー(数的不利の状況)を生かせなかった。シュートを打ち切れない印象も少なくない。世界ランキング9位でオリンピック未勝利のスマイルジャパンに対し、同5位のスウェーデンは2006年トリノ五輪で銀メダルを獲得している。同6位のスイスはソチ五輪で銅メダル。同大会MVP&ベストGKを受賞したフローレンス・シェリングを擁する。女子の2強であるカナダ、アメリカよりは劣るものの、いずれも強豪。2連敗という結果は順当と言えば順当だ。

 

 ただ大会直前に行った国内の壮行試合4戦で、山中監督は「いろいろなかたちの勝ち方ができた」と手応えを掴んでいた。平昌五輪に出場しないとはいえ、世界ランキングでは格上のドイツ、チェコに4連勝。内容が悪くても勝ち切る力は付いていたようにも思えた。FW米山知奈(道路建設ペリグリン)が「4試合ともいろいろなパターンを経験し、確認することができた」と口にしていたようにポジティブな印象の方が強かった。しかし、パワープレーで得点をするシーンはあまり見られなかったことも気になった。

 

 試合運びと決定力。これがスマイルジャパンに突きつけられた課題だ。平昌でも2戦合計でパワープレーは8度あったが、いずれも得点に結びつけられていない。決定力に関しては確固たる得点パターン、絶対的なエースがいないことも無関係ではないだろう。床亜矢可をはじめDF陣も攻撃への意識を強め、積極的にミドルシュートを狙っている印象もある。壁をこじ開けるためにある程度シュート数が多くなるのは仕方がない。69本中2得点で決定率は2.9%。この数字は寂しいが、一発で決め切る力がない以上は、手数で勝負することも必要だ。何よりシュートは打たなければ入らない。もっと打ってもいいと思えるくらいである。

 

 カギ握る20歳のチャンスメーカー

 

 14日に対戦する南北合同チームもスマイルジャパンと同じ2戦2敗。無得点16失点と攻守に精彩を欠いている。スマイルジャパンメダルはメダル獲得という夢こそ絶たれたが、オリンピックでの初勝利こそ次に繋げるための重要なミッションとなる。長野、ソチに続いて3度目のオリンピック。そろそろ勝って、彼女たちの代名詞である笑顔を試合後も見せてほしいところだ。

 

 予選ラウンド最終戦のキープレーヤーに挙げたいのが、SEIBUプリンセスラビッツのFW床秦留可(写真)である。床亜矢可の妹。ソチ五輪では直前で落選という憂き目に遭ったが、オリンピックデビューとなったスウェーデン戦で度々チャンスを演出している。2戦合計11本のシュートはチーム最多。その積極性も買っていい。山中監督が「僕の想像を超えたプレーをする。驚かされることが多いです」と称える攻撃センスは光るものがある。スマイルジャパンの次代を担う存在だ。

 

 レフトハンドから繰り出される意表を突くパスが得点という花を咲かせる。この2戦の鬱憤を晴らすようなゴールラッシュで順位決定戦(5~8位)に臨みたい。

 

(文・写真/杉浦泰介)