ロシアワールドカップに臨むハリルジャパンは3月の欧州遠征でFIFAランキング69位のマリ代表(23日)、同35位のウクライナ代表(27日)と親善試合を行うことになった。開催場所はいずれもベルギーのリエージュとなる。

 

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、こうコメントしている。

「マリ、ウクライナともにワールドカップ・グループステージで対戦するチームを想定してマッチメークしました。マリは典型的なアフリカンサッカーをするチームで、スピード、フィジカルの強さがストロングポイントです。個で試合を決することができる選手が顔をそろえています。またウクライナは典型的な東欧のサッカーをするチームで、テクニカルでパスをつなぐサッカーに長けています。今回は本大会へ向けたメンバー構成を見極めるための大事な機会となります」

 

 悪くないマッチメークというのが率直な感想だ。

 両チームともW杯出場は逃がしたとはいえ、指揮官の言葉にあるようにアフリカのマリは仮想セネガル、欧州のウクライナは仮想ポーランドになる。

 

 マリはW杯アフリカ最終予選でモロッコ、コートジボワール、ガボンと同組に入って4分け2敗の勝ち点2で最下位に終わっている。アウェーのモロッコ戦を0-6で大敗しているものの、6試合中4試合を無失点で切り抜けるなど守備に粘りがある。FWカリファ・クリバリ(ナント)、MFアダマ・トラオレ(モナコ)、DFモラ・ワグエ(ワトフォード)、DFウスマン・クリバリ(パナシナイコス)など欧州でプレーしている選手が多い。セネガルを想定できるほどの攻撃力はないが、アフリカ独特のフィジカルを押し出すスタイルは十分参考材料になるだろう。

 

 続いて対戦するウクライナ代表はACミランで2度、セリエAの得点王を獲得した“レジェンド”アンドレイ・シェフチェンコが監督を務める。W杯欧州予選はアイスランド、クロアチア、トルコらと同組になり、3位にとどまった。最終節までプレーオフ進出の可能性を残していたが、ホームでクロアチアとの直接対決に0-2で敗れて3大会ぶりとなる本大会出場を逃がしている。

 

 しかしながらタレントは豊富だ。

 ドルトムントで香川真司とチームメイトのMFアンドレイ・ヤルモレンコは「ニュー・シェフチェンコ」と称されるサイドアタッカー。189cmの長身を誇り、高さと速さ、そしてテクニックを併せ持つ。得点能力も高い。

 

 そしてシャルケのMFイェフヘン・コノプリャンカも得点能力が高い。小気味いいドリブルが売りだ。2016年のEUROでは日本と対戦するポーランドとグループステージで戦い、0-1で敗れている。伝統のカウンター攻撃も健在。ポーランドとの特徴とも少しかぶる部分はある。

 

 3月の欧州遠征を終えると5月30日の国内壮行試合(相手未定)を経て、本大会直前の強化試合を行う。6月8日にスイス代表、12日に南米のパラグアイ代表と戦って19日の本大会初戦、コロンビア戦を迎えることになる。

 

 スイスはFIFAランキングで8位。7位のポーランドとほぼ同レベルと見ていい。堅守の印象が強いものの、MFセルダン・シャキリ(ストーク)、FWハリス・セフェロヴィッチ(ベンフィカ)らを中心とした攻撃にも迫力がある。

 

 一方、パラグアイはW杯南米予選7位とふるわずに本大会出場を逃がしたものの、コロンビアにはアウェーながら2-1で勝利している。その意味でも、いいテストになる。

 

 W杯までの強化試合は、未発表の壮行試合を除いて対戦国の大陸に限定されることになった。壮行試合も可能ならば南米勢かアフリカ勢ともう1試合やりたいところだろうか。

 

 以前の岡田武史監督も、アルベルト・ザッケローニ監督も最大の強化は「アウェーでどれだけ強いチームと戦えるか」と語っていた。昨秋にはブラジル代表、ベルギー代表と戦っており、3月のタイミングで欧州に再び出向いて試合をする意義は大きいはずだ。マリ代表、ウクライナ代表、そしてスイス代表、パラグアイ代表というラインアップはベストではないが、ベターに近いと言っていいのではないだろうか。


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