16年から2年間連載してきた「白球徒然 ~HAKUJUベースボールスペース~」が、この春、新しく生まれ変わります。リニューアルを前に特別編として編集部スタッフによる「代打コラム」を掲載。まずは虎党スタッフのつぶやきをどうぞ。

 

 バッキー、バースはどこだ

「阪神ファンは一生で優勝3回見られたら御の字です。まあだいたいはその前に……」。以前、テレビでこう語っていたのは虎党の作家・藤本義一氏だったかタレント上岡龍太郎氏だったか……。今となっては記憶は定かではありませんが、この「優勝3回寿命説」はいつの間にかプロ野球の都市伝説のひとつとなりました。

 

 阪神は2リーグ分立後、1962年、64年、85年、2003年、05年とリーグ優勝を果たしています。"21年ぶり"と"18年ぶり"、2度の長期低迷を挟んでいれば都市伝説になるのも納得です。今季、"13年ぶり"のリーグ優勝がなるか、どうか。鍵を握るのは外国人選手の活躍でしょう。

 

 振り返れば阪神の優勝の陰には頼れる助っ人の存在がありました。

 

「ファン歴の長さなどはまったく自慢にならない」と言いながら「帽子のロゴがOマークのときから応援している」と自慢する年長の友人がいます。Oマーク、すなわち大阪タイガース時代から筋金入りの彼によれば64年の優勝は「バッキーの奮投あってこそ」だといいます。

 

 ジーン・バッキー、62年に阪神入りした速球派右腕で、64年には最多勝(29勝)、最優秀防御率(1.89)の二冠に輝き、外国人選手として初めて沢村賞の栄誉を手にしました。阪神在籍7年間で通算100勝をあげ、プライベートでも日本語を覚え積極的にチームに溶け込んだ優良外国人です。

 

 投の優良外国人がバッキーなら、打はランディ・バースでしょう。

 

 85年、阪神はセ・リーグ新(当時)の219本塁打を記録するなど猛打で21年ぶりのリーグ優勝、そして球団初の日本一に輝きました。54本塁打、134打点、打率3割5分で三冠王に輝いたバースはニューダイナマイト打線の牽引役にして象徴でした。シーズンと日本シリーズのダブルMVPにも輝いています。

 

 さて今季の阪神、助っ人外国人で投の軸はランディ・メッセンジャー、打は新加入のウィリン・ロサリオです。

 

 メッセンジャーは今季で入団9年目、阪神の助っ人では最長在籍年数を数えます。昨季まで通算84勝をマークし、14年は最多勝(13勝)、13年と14年に最多奪三振のタイトルにも輝いています。今季もローテーションの中心として首脳陣もファンも期待を寄せています。

 

 メッセンジャーは成績だけでなくあふれる"猛虎魂"でチームを鼓舞する存在です。昨年8月、試合中に打球の直撃を受け右足腓骨を骨折。スポーツ紙には「今季絶望」の見出しが躍りました。だが、アメリカで治療を受けたメッセンジャーは2カ月後、シーズン最終戦で復帰しました。さらにそこから中3日でクライマックスシリーズの先発マウンドに立ち、6回無失点で勝ち投手となったのです。浪花節を好む阪神ファンの受けが悪かろうはずがありません。

 

 新顔のロサリオはどうでしょう。メジャーリーグのロッキーズから韓国プロ野球・ハンファに移り、在籍2年で70本塁打、231打点、通算打率3割3分。実績は文句なしの「大砲」です。阪神はロサリオに年俸3億4000万円を提示しました。

 

 私にはデジャブ、というよりもトラウマがあります。97年、阪神は「メジャー通算130本」のマイク・グリーンウェルと4億円の大型契約を結びました。だが、この外国人、わずか7試合に出場しただけで5月には「神のお告げ」とコメントを残し帰国、そのまま退団しました。とんだハズレ外国人もいたものです。

 

 ロサリオは紅白戦でアーチをかけ、起亜(韓国)との練習試合でもツーベースを放つなど今のところは活躍が期待できそうです。

 

 期待しては裏切られ、裏切られても応援せずにはいられない----。ちなみに今季、13年ぶりの優勝となれば筆者にとって「4回目」です。


(スポーツコミュニケーションズ編集部・西崎ノブユキ)


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