昨季、Jリーグは川崎フロンターレが制覇し、天皇杯とルヴァンカップはセレッソ大阪が優勝した。両クラブとも初となるタイトルを獲得。当然、今季もこの2クラブに注目が集まるが、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)に出場するなどで過密日程がネックになってくる。そこで本命にはACLに出場できず、日程的に余裕がある浦和レッズを推す。

 

 昨季の前半戦、浦和は不振に陥った。リーグ戦20試合を消化した時点で9勝2分け9敗の8位。7月30日、5年半に渡りクラブの指揮を執ったミハイロ・ペトロビッチと契約を解除した。後任には、コーチだった堀孝史が昇格した。ここから浦和の戦い方が変わった。

 

 まず、堀監督はシステムにメスを入れた。ミハイロビッチ前監督は攻撃的な3-4―2―1を長年採用していたが、堀監督は攻守のバランスを取るために4-1-4-1に変更した。センターバックの前にMF青木拓矢ら守備に特化したアンカーを置き、DF陣の攻撃参加も自重させて守備を安定させた。

 

 さらに、堀監督は競争原理を現場に蘇らせた。ミハイロビッチ前監督はメンバーを固定して戦っていた。自身がかつて監督を務めたサンフレッチェ広島から連れてきた選手たちの起用が目立っていた。堀監督は今まで控えでくすぶっていた選手にもチャンスを積極的に与えた。その結果、先述した青木やドイツリーグでもプレー経験のあるMF長澤和輝がレギュラーを奪取。長澤は元々定評のあるパスセンスとドイツで鍛えたフィジカルコンタクトの強さを生かし、浦和の中盤を支えた。昨年11月には日本代表入りも果たした逸材だ。

 

 浦和はJリーグでのうっ憤を晴らすようにACLを勝ち上がり、10年ぶりにアジアの頂点に輝いた。決勝第1戦では粘り強く守り、カウンターからワンチャンスをものにして勝利した。第2戦、ホームに戻るとサポーターの後押しを背に受けて果敢に攻めて、勝ち切ったのだ。守る時と攻める時の切り替えができるようになったのが堀体制になってからの最大の強みである。

 

 今季はFWラファエル・シルバが中国リーグに移籍したが心配は無用だ。元々前線にはFW興梠慎三、MF武藤雄樹、FW李忠成らタレントがそろっている。それに加え、横浜F・マリノスから左利きのアタッカーのMFマルティノスを獲得した。彼らがポジションを変えながら仕掛けの部分でアクセントをきかせる。相手にとっては脅威でしかないはずだ。

 

 守備陣の厚みも増した。DF槙野智章とDF阿部勇樹が並ぶセンターバックにはヴィッセル神戸からDF岩波拓也が加入した。岩波はケガさえなければリオデジャネイロ五輪メンバーに選出されることが有力だった実力の持ち主。さらにDFマウリシオも控えている。

 

 バランスの取れた戦いができるようになり、的確な補強にも成功。加えて日程的に余裕のある浦和がJリーグを制覇する可能性は高いのではないだろうか。

 

 対抗には昨季王者の川崎をあげる。横浜FMのエースだったMF齋藤学、ガンバ大阪からFW赤崎秀平を補強し、FC東京からFW大久保嘉人を1年で復帰させた。ACL、リーグ戦、ルヴァンカップをにらみ前線の駒に厚みを持たせた。既存の戦力に彼らがフィットした時の爆発力はすさまじいだろう。

 

 一方で守備陣のバックアップが手薄な印象がぬぐえない。センターバックの谷口彰悟と奈良竜樹はフル稼働が求められる。GKチャン・ソンリョンのバックアップにも不安がある。シーズン終盤、守備陣がガス欠を起こし、負傷者が出ないことを祈るしかない。逆に言えば、ここのやりくりさえうまくいけば連覇は見えてくるだろう。

 

 その他、DF内田篤人を約7半ぶりにドイツから呼び戻した鹿島アントラーズ、ボランチが本職のMF遠藤保仁をシャドーストライカーの位置で試しているガンバ大阪、元ブラジル代表FWジョーを獲得した名古屋グランパスと注目チームが目白押しだ。23日にサガン鳥栖vs.ヴィッセル神戸が他に先駆けてスタートし、残りのカードは24日と25日に行われる。果たして、Jの頂きに立つのは、どのクラブなのか――。

 

(文/大木雄貴)