ロシアワールドカップを4カ月後に控えた今冬、ハリルジャパンの面々が移籍に踏み切った。

 

 セリエAのインテルに7年在籍した長友佑都がトルコの名門ガラタサライへ、原口元気はドイツ1部ヘルタから2部デュッセルドルフに移籍。Jリーグ勢では21歳の井手口陽介が海を渡り、イングランド2部相当のリーズに完全移籍。そのままスペイン2部クルトゥラル・レオネサへとレンタル移籍となった。所属クラブで出番が限られていた長友と原口に関しては、出場機会を優先する形となった。

 

 ロシアW杯での活躍を目標にするのであれば、本大会まで半年を切ったタイミングで環境を変えることのリスクは小さくない。しかしサッカーの世界にリスクを伴わない移籍などない。それを乗り越えられれば、成長につなげることができる。

 

 3者とも、良い移籍となるのではないだろうか。

 長友が移籍するガラタサライの監督は、トルコの名将ファティ・テリムだ。2000年にはガラタサライでUEFA杯を制して注目を浴び、フィオレンティーナ、ACミランの指揮を執って再びトルコに戻った。10年前にはスイスとオーストリア共催のEUROで、トルコ代表を率いてベスト4に進出。その攻撃的なスタイルは、世界から高い評価を得ている。長友の攻撃性がより活きる環境がここにはあると言っていい。

 

 また、原口が移籍したデュッセルドルフは宇佐美貴史も所属している。フリートヘルム・フンケル監督は日本人選手との関わりが深い。

 

 64歳のフンケル監督はフランクフルト時代に高原直泰、稲本潤一、ボーフム時代に乾貴士、1860ミュンヘン時代に大迫勇也ら、これまでも多くの日本人選手と仕事をしている。原口獲得に非常に熱心であったとも聞く。日本人選手の勤勉的な働きを非常に評価する監督であり、まさに攻守に精力的な原口は監督好みと言えよう。1部昇格の切り札的な存在として大きな期待を感じる。

 

 そして最後に井手口が移籍したレネオサのルベン・デ・ラ・バレーラ監督は、スペインで注目されている若手監督の1人。2年半前、スペインに赴いて飛び込みでコーチ修行をしていた安永聡太郎氏(J3相模原前監督)から「まだ30歳だけどすごい監督がいる」と教えてもらい、彼のことを知った。当時3部のCDギフェロを率いていたルベンの采配に「衝撃を受けた」と語っていた。

 

「ルベンはジョゼップ・グアルディオラ(現マンチェスターC監督)の信奉者で、とにかく戦術を細かくチームに落としこめる人。ある練習試合で彼は状況を考えてフォーメーションを変えずに選手の“立ち位置”を変えて数的優位をつくり、攻略したことがあった。近い将来、ウナイ・エメリ(現パリSG監督)のようにのし上がってくる監督だと僕は思う」

 その安永の見立て通り、キャリアを着実に進めている。

 

 現在、移籍した3者はそれぞれ状況が違っている。

 長友はスタメンに定着し、評価も上々。原口は2月2日のサントハウゼン戦で2試合連続となるアシストをマークしながらも、接触プレーで頭部を強打した。脳震とうの疑いから大事を取って離脱し、現在は3試合連続でベンチから外れている。コンディションが戻れば、先発復帰は間違いないと見ていい。

 

 一方の井手口は18日のラージョ・バジェカーノ戦で先発出場を果たしており、これからが勝負と言ったところか。

 

 せっかくの縁を生かすも殺すも自分次第。ロシアの舞台で活躍するためにも移籍したクラブでレギュラー争いに打ち勝ち、成長しなければならない。


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