“ハマの大砲”筒香嘉智(横浜DeNA)が今春の結婚を発表した。相手は年上の一般女性で、年内に第一子が誕生する予定だという。

 


 年上女房は、球界においてはスーパースターのパスポートのようなものだ。筒香にはさらなる飛躍が期待できる。


 年上女房の代表格といえば、昨年12月に85歳で他界したサッチーこと野村沙知代さんだろう。ノムさんこと野村克也を公私両面で支えた。


 この2人、当初は愛人関係にあった。南海のプレーイング・マネジャー時代、ノムさんは公私混同を理由に解任された。1977年秋のことだ。


 解任発表を前に、後援会長を務めていた比叡山の高僧は、ノムさんを呼び出してこう告げた。


「野球を取るか、女を取るか、ここで決断せい!」


 ノムさんはこう返した。


「女を取ります」


「野球ができなくなってもいいんだな」


「仕事はいくらでもあるけれど、伊東沙知代という女は世界にひとりしかいませんから」(自著『プロ野球重大事件』角川ONEテーマ21より)


 男勝りの性格のサッチーだが、ある意味、ノムさんよりも腹がすわっていた。私の目には夫婦というより同志のように映った。まさに知将の陰に猛女あり、だった。


 球界には「名選手、名監督に非ず」との格言がある。ノムさんとともにそれを覆したのが落合博満である。現役時代は3冠王3度、中日を率いた8年間では4度のリーグ優勝を果たした。


 ノムさんがサッチーなら、こちらはオッカーである。ノムさんも落合も再婚だ。


 落合は自著『なんと言われようとオレ流さ』(講談社)で女房について<野球のことだけ考えていればいいような環境にあるから三冠王も取れた。>と述べている。一方、オッカーは9歳下の亭主をこう見ていたようだ。


「あなたは野球なら野球のことだけをやっていないとおかしくなる人。髪の毛ひとつにしても私が切ってあげなくちゃいけないし、なにしろ手がかかる」(同前)


 家では日曜大工はもちろん、銀行との交渉、散髪に至るまでオッカ―に任せきりだったというから完全な亭主関白である。年上女房だから「はい、はい」と言いながら、うまくコントロールしていたのであろう。


 一口に「内助の功」といっても、いろいろなかたちがある。プロ野球選手の場合、夫人にはマネジャー的な役割も求められる。飴ばかリではなくムチも必要なようだ。

 

<この原稿は2018年2月23日号『漫画ゴラク』に掲載されたものです>

 


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