20年前の初出場以来、日本サッカーにとってのW杯は常に“Z旗”を掲げての戦いだった。

 

 皇国の興廃この一戦にあり。

 

 W杯で勝てば日本サッカーは繁栄し、惨敗すれば危機的状況。それだけに、希望が見えない日本代表に対しては、Jリーグの関係者から、どんな辛口ライターよりも辛辣な声が聞かれることも珍しくなかった。どれほど自分たちが魅力的なサッカーを追求していようが、日本代表の結果如何で、再開されるJリーグ観客動員に大きな影響が出てきてしまうのだから当然といえば当然である。

 

 だが、ここにきて風向きが変わってきた感がある。

 

 さる大手スポーツショップの方にうかがったところによると、4年前と比較して、日本代表レプリカ・ユニホームの売り上げは50%ほどのダウンだという。わたしも肌感覚としては、現在の日本代表に対する期待、関心は過去20年の中で最低レベルにあると思っている。代表チーム、監督に向けられる視線も、かつてないほどに冷めたものだといっていい。

 

 ただ、以前であれば日本代表が停滞するたびに湧き上がった「日本サッカー危機論」がまったくといっていいほど上がっていないのは興味深い。さらに、Jリーグの取り上げられ方も、明らかに昔とは変わってきている。チームの勝敗よりも誰がW杯のメンバーに選ばれるかばかりに焦点が当たっていた時代は、どうやら終わりつつあるようだ。

 

 何度も何度も、それほど自分でもうんざりするほど書いてきたが、その国のサッカーの母体は、あくまでも国内リーグである。にもかかわらず、日本では代表チームがあらゆる面での牽引役であり続けてきた。

 

 これはつまり、侍ジャパンが巨人や阪神、ソフトバンクより人気があり(それも圧倒的に)、WBCの結果如何ではペナントレースの人気に大きく影響してしまうようなものなのだ。なんとリスキーで、なんと不安定な構図だったことか。

 

 WBCの結果がどうであれ、阪神ファンは球場に足を運ぶように、W杯での結果がどうであれ、プレミアリーグの人気は不変である。むろん、まだまだ欧州のトップリーグに比べれば足りない点も多々あるが、ここにきてようやく、Jリーグが日本代表の“下部組織”から抜け出しつつあるようだ。

 

 さて、あすからはいよいよ日本代表の欧州2連戦が始まる。ウクライナを仮想ポーランド、マリを仮想セネガルと考えるのは、他の大陸勢が中国と練習試合をして日本を理解した気になることくらいナンセンスなこと。ウクライナを完封したところでレバンドフスキを抑えられるわけではないことは肝に銘じつつ、W杯出場国の意地は見せてもらいたいと思っている。

 

 ちなみにあすの相手マリはアフリカ最終予選で未勝利に終わっている。そんな相手を内容で圧倒できないのであれば、本大会ではアンチフットボールに徹するしかない。

 

<この原稿は18年3月22日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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