第16回えひめスポーツ俳句大賞の受賞作が発表され、去る3月25日、愛媛県松山市内で表彰式が開催された。今回は全国47都道府県から計3471作品(一般の部2080句、ジュニアの部1307句、ハイブリッド部門84点)の応募があり、俳句部門(一般、ジュニア)、俳句と写真を組み合わせたハイブリッド部門から大賞、入賞作が選ばれた。


 えひめスポーツ俳句大賞は2002年にスタート。愛媛県ゆかりの俳人・正岡子規の野球殿堂入りを記念したもので、表彰式において主催者の愛媛県体育協会・大亀孝裕会長はこう式辞を述べている。

 

「皆様からお寄せいただいた素晴らしい作品を拝見しますと、スポーツへの思いや情景が呼び起され、感動しております。
 このスポーツ俳句大賞は、スポーツに接して得られる感動やときめきを俳句に詠み込むことにより、スポーツに対して、より関心を持っていただくことを狙いとするものであります。今年は全国47全ての都道府県から応募があり、"スポーツ俳句"という文化が全国に浸透し、関心が年々高まってきていると実感しております。
 さて、昨年は国内最大のスポーツの祭典である第72回国民体育大会・愛顔つなぐえひめ国体が、天皇・皇后両陛下のご臨席を仰ぎ、盛大に開催されました。64年ぶりに愛媛県で初めて単独開催されたえひめ国体では、様々な競技が県内各地で実施され、本県の選手をはじめ、全国の代表選手の素晴らしい活躍を、観戦することができた貴重な機会となりました。皆様方には、各競技会場へ足を運んで、臨場感あふれる作品ができたものと確信しています。
 本会といたしましては、えひめ国体によって生まれた県民のスポーツに対する意識の高まりや感動、施設やスポーツボランティアなどを国体レガシーとして、次世代へ引き継ぐために、今後も、継続的にスポーツ振興を図りたいと考えております」

 

 今回の一般の部大賞とジュニアの部大賞、ハイブリッド部門の大賞作品は以下の通り。今回は国体開催記念として「えひめ国体・えひめ大会特別賞」が設けられ、10作品(一般5句、ジュニア3句、ハイブリッド部門2点)が選ばれた。

 

一般の部大賞

 

接戦の最後の一矢射て涼し 大阪府 藤本としこさん

 

審査委員長の講評(福谷俊子・愛媛県俳句協会会長)
<勝ち抜くことの厳しさが"接戦"の詩語から伝わってきますが、堅固な精神力で最後の矢を放った一瞬を"涼し"と捉えたところが見事です>

ジュニアの部大賞


秋晴やのぼつてのぼつてのぼりぼう 愛媛県 大政創士さん

 

審査委員長の講評(福谷俊子・愛媛県俳句協会会長)
<のぼり棒は握力と力のいる運動ですが、秋晴の空へ向かって力強くのぼってゆく少年が見えてきます。繰返しのリズムが心地よい句です>

 

ハイブリッド部門大賞

 

汗したる 力出し切り 滑走す 愛媛県 尾崎雄一さん

 

 

審査委員長の講評(福谷俊子・愛媛県俳句協会会長)
<ボートは漕ぎ手の強い意志、体力、技量を備えたチームワークが要求されますが、一糸乱れぬ体系から、それらのすべてが感じとれます。"滑走す"にひとしおの爽快感があります>

 

審査員の講評(宮内幸男・愛媛県美術会常任評議員)
<本年はえひめ国体が盛大に開催され、ハイブリッド部門も楽しみに審査させて頂きました。国体での写真もたくさん応募して頂き、大賞には愛媛県の尾崎雄一さんの作品を選びました。国体でのボート競技でスピード感を出すために流し撮りで、力強さを上手く表現出来ていました。(ハイブリッド部門は)金賞3名、銀賞2名、銅賞3名を選び、今年は記念の国体賞も2名選びました。スポーツ俳句にも季語が大切です、俳句と写真とがマッチングしている作品を上位に選びました>

 

◆えひめ国体・えひめ大会特別賞
一般の部
SEEYOUの人文字揺れる秋うらら
愛媛県 平岡喜代美さん

 

開会式のホルンに映る秋の空
愛媛県 藤内俊子さん

 

両陛下遠くに拝し秋高し
愛媛県 尾上摂子さん

 

秋麗の石鎚はろか炬火点る
愛媛県 河野紀恵さん

 

国体の祝賀の機影秋澄みぬ
愛媛県 井門敬之さん

 

ジュニアの部
国体をエアロビクスで盛り上げよう
愛媛県 松林佳音さん

 

雲のばし秋空をとぶインパルス
愛媛県 松永菜々花さん

 

秋空へみきゃんのタオル回したよ
愛媛県 窪田結衣さん

 

ハイブリッド部門
秋晴や万のえがをのおもてなし 愛媛県 山内和子さん

 

 

ガシャガシャと音が身に入む車イス 愛媛県 藤原利忠さん

 

審査委員長の講評(福谷俊子・愛媛県俳句協会会長)
<「両陛下遠くに拝し秋高し」の句、開会式で拝した両陛下に対する敬愛の念が伝わってきます。「国体の祝賀の機影秋澄みぬ」の句、ブルーインパルスに驚きながらも祝意の昂ぶりが感じられます。「秋空へみきゃんのタオル回したよ」の句、大会のマスコットのみきゃんをモチーフにしたタオルをみんなで一緒に振って大会を盛り上げました。ハイブリッド部門の「秋晴や万のえがをのおもてなし」の句、「万のえがを」のあたたかさは何よりのおもてなしです。「ガシャガシャと音が身に入む車イス」の句、「ガシャガシャ」という擬音語がひときわ胸にひびきます。今後ともスポーツ俳句の一段のレベル・アップと新鮮な作品へチャレンジをされますように期待いたしております>

 

 なお、大賞作品およびその他の入選作は愛媛県体育協会のウェブサイトで閲覧できる。

 

◆愛媛県体育協会
http://www.insnet.ne.jp/hp/etaikyo/


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