(写真:ザ・ロイヤルGCのアスリートチャレンジ。今回は元サッカー日本代表でもある中田浩二氏。ゴルフ歴4年、「思い切って飛ばせるザ・ロイヤルGCは大好きなコース」とチャレンジに意気込んでいた)

 

「世界へ発進! 脱日本式ゴルフのすすめ」ではザ・ロイヤル ゴルフクラブ(ザ・ロイヤルGC・茨城県鉾田市)を舞台に、ゴルフの新たな楽しみを提案していきます。


 今回、全長8000ヤードを超す世界基準のロングコースに元アスリートのゴルフ愛好家がチャレンジしました。挑んだのは元サッカー選手で日本代表としても活躍した中田浩二さんです。トルシエジャパンでは左ストッパーとしてフラット3を支え、日韓ワールドカップ2002ベスト16進出に貢献しました。現役時代、クレバーな判断力と正確無比なミドルキックに定評のあった中田さんは、"世界基準"をどう攻めたのか? 早速、レポートしましょう。

 

 きっかけは同僚の誘い

 中田さんは1998年、鹿島アントラーズに入団。以後、鹿島、マルセイユ(フランス)、バーゼル(スイス)でプレーし、2014年に現役を引退しました。ゴルフを始めたのは引退前年の13年からだといいます。

 

「アントラーズの納会はゴルフが恒例だったんですが、いつも人数が足らなかったそうです。それで同期の小笠原(満男)に"ゴルフをやれ"とずっと言われていて、それがきっかけでクラブを握りました」

 

 多くのビギナーと同様に、始めた途端にゴルフの魅力にどっぷりとハマりました。中田さんは引退後、アントラーズのクラブリレーションオフィサー(CRO)として、スポンサー企業とチームのつなぎ役を務めています。ゴルフは趣味と同時に重要なビジネスツールでもあり、年間ラウンド日数は公私含めて約20日にのぼるとのこと。アントラーズが毎年1月末にキャンプを実施する宮崎県を始めとして、全国各地のコースでラウンドの経験があります。

 

 アントラーズの本拠地・鹿嶋市の隣、鉾田市にあるザ・ロイヤルGCでのプレーは今回で6回目。さて、意気込みは?

 

「いつもこのコースではスコアは100を越えます。距離が長くて、そして難しい。でも広々としていて気持ち良くゴルフができるから大好きなコース。他のコースのように林に打ち込む心配がほとんどないので、今日は思い切ってドライバーが振れそうです」

 

 今回、中田さんと一緒にラウンドするのは新崎弥生プロです(写真)。02年にプロテストに合格し、15年まで現役としてツアーに参戦。08年にはマンシングウェアレディース東海クラシックで不動裕理さん、上田桃子さんと優勝争いを繰り広げ2位に入った実力派です。現在はツアーからは引退し、ザ・ロイヤルGCで副支配人を務めています。

 

 軽くスイングするコツ

 アウトスタートの1番ホール、300ヤードのパー4で中田さんのティーショットは右のラフへ。続く2番ホールのティーショットは芯でボールを捉えたもののフェアウエイ脇の木に当たって右ラフに落ちました。さらに3番ホール、今度はティーショットでバンカーを越えたもののボールはラフの中へ……。

 

 久しぶりのザ・ロイヤルGCで、少し苦しいラウンドスタートとなりました。

 

(写真:中田さん愛用のキャロウェイ"サッカーボール"。こうした小ネタも同行者と会話のきっかけになると言う)

「ティショットはいつも右に曲がるんですよ。だからといって左を向いて打つと、今度はスコーンと真っすぐに突き抜けてしまう。言い訳じゃないんですけど聞いてもらえますか」と言って、中田さんはこう続けました。

 

「いつも使っているクラブセットが3日前にラウンドしたコースから期日までに届かず、今回は初心者の頃に使っていたカーボンシャフトのクラブを持って来ました。最初、カーボンシャフトのクラブを買ったらどうも僕の筋力に対して軽すぎたので、スチールシャフトに買い替えたんです……。まあ、本当に言い訳じゃないんですけど(笑)。ゴルフはメンタルに左右されるスポーツだと実感しています。"クラブがいつもと違う"と思っただけで、ティーショットがあっちこっち行っちゃうんですから」

 

 悩める中田さんに、新崎プロからアドバイスが入りました。「クラブを逆さに持って、グリップ部分を地面に向けて、それでスイングしてみてください」と。

 

(写真:新崎プロのアドバイスでクラブを逆さに持ってスイングする中田さん。腕力ではなく軽く振ることが意識できる)

 新崎プロによれば逆さに持ってスイングすることで「腕力に頼らない軽いスイングが意識できる」というのです。早速、中田さんは逆さに持ったクラブを振りながら、「軽く。軽く。軽く振る」と自らに言い聞かせながらラウンドを進めました。

 

 足で蹴るよりも難しい……

 新崎プロのアドバイスの甲斐もあり、ティーショットはもちろんセカンド以降のアイアンも曲がらなくなりました。しかもアプローチの距離感が抜群です。「サッカー選手はアプローチがうまいイメージがあるんですよ」と訊ねた新崎プロに対して、中田さんはこう持論を展開しました。

 

「サッカー選手は広いピッチで狙い所にボールを蹴るのが商売ですから、ゴルフ場でも距離感に優れているんでしょうかね。サッカー選手とゴルフをすると、小笠原もアプローチは抜群にうまいし、澤登(正朗)さんや三浦アツ(淳宏)さんも寄せるのが相当に上手です。ただサッカーの狙いは"だいたいあの辺り"でいいけど、ゴルフの狙いはもっとシビア。足で蹴るよりも手で打つ方が難しいって、どういうことなんでしょうね」

 

 午前中のハーフを55で終えた中田さん。ショットは安定してきたものの、「まだまだホールごとに気持ちの波があります」と自己分析していました。現役時代、どんな局面でもプレッシャーに打ち勝ってきた中田さんの本領が発揮されたのは後半のラウンドからでした。まずは11番ホールを振り返りましょう。

 

11番ホール

 176ヤード、パー3の11番はフェアウエイ左側、グリーン手前まで池が広がっています。「こういう池のプレッシャーに弱いんですよ」と言いながらティーアップした中田さん。ナイスショット……のはずがなんとチョロ。ティーグラウンドの数メートル先に転がったボールを見ながら、「池を意識して力んでしまったー」と叫びました。だが、ここからプロアスリートらしくリカバーして見せたのです。

 

 ナイスリカバー!

 ティーグラウンド先、ラフからの2打目。まっすぐにグリーンを狙ったショットはナイスオン。ピンまで約7メートルのロングパットをきっちりと1メートルまで寄せて4打目でカップインしました。チョロスタートながらボギーで切り抜けた中田さんは、「チョロを打ったときに"ああ、打ち直しができたら……"といつも思うんですが、ゴルフにもう1回はない、と言い聞かせています。ミスをしても切り替えていくしかないですからね」と語りました。

 

15番ホール

 さらに15番ホール。ここは389ヤード、パー4。左曲がりのドッグレッグで距離の割に攻め方が難しいホールです。ティーショットを左ラフに打ち込んだ中田さんは、続くセカンドでもフェアウエイを捉えられずに右ラフへ打ち込んでしまいました。グリーン右側にバンカーがあり、"右曲がり"の癖がある中田さんにはプレッシャーのかかる3打目です。

 

 だが、これをピンから4メートルの位置にナイスオン。パーパットはショートしたもののセカンドパッドを沈めてボギー。「ラフからラフを渡り歩いたけど1オーバーなら上出来でしょう」と、後半になって中田さんはザ・ロイヤルGCの攻略を楽しんでいるようでした。

 

18番ホール

 そして迎えた最終18番ホール(399ヤード・パー4)。1日の集大成とばかりに中田さんはティーショットでフェアウエイをキープして、セカンドもフェアウエイ右に。この18番のグリーンは2段になっていて、しかもうねりのある難所です。落とし所によっては3パットどころか4パットもありえます。そんなプレッシャーのかかるアプローチでしたが、中田さんはグリーン奥に切られたカップのさらに奥を狙って、ボールはグリーン向こう側のラフへ。「手前に落とすよりも、いい攻め方です」と新崎プロも称賛する見事な攻めでした。

 

 

 ラフからカップ右1メートルにつける絶妙の寄せの後は、「PKのときのようなプレッシャーでした」という、"決めて当然"のボギーパットを沈めてホールアウト。アウト55、イン61、トータル116で中田さんのザ・ロイヤルGCチャレンジは終了しました。

 

 ゴルフは波を楽しむ

 

 ラウンド後、改めて話を伺いました。

 

--5年前にゴルフを始めたときのスコアは?
「最初、コースに出たときは120でした。そこから順調にベストスコアを更新していって、3カ月くらいで100を切りました」

 

(写真:「公開できるようなスコアではないのですが……」という中田さんだが、広々としたザ・ロイヤルGCを思い切り楽しんでいた)

--ゴルフの楽しさ、難しさは?
「楽しさも難しさも、どちらも"ゴルフには波がある"ということですね。"明日もまた回りたい"という絶好調の日もあれば、途中で帰りたくなるひどいスコアのときもある。さらに1日の中でも、いいホール、ダメなホールと波があるし、さらに1ホールの中にも良いショットと失敗ショットが混じるなど波だらけです。それを如何に安定させるかを目指すのがゴルフの難しさであり、楽しさだと思っています」

 

--ザ・ロイヤルGCでプレーしてみての感想は?
「やはり広くてきれいなコースなのでとにかく気持ちがいい。僕はボールが曲がる癖がありますが、ここなら思い切ってクラブを振れる。フェアウエイにもグリーンにもアンジュレーションがあって難しいコースですけど、それもまた楽しい。今日は前から3番目のティーグランドでしたが、ザ・ロイヤルGCのティーは最前から最後方まで6個ある。だから何度来ても飽きないという面もある。アントラーズの納会はだいたい一番後ろのティーですよ。初心者のときには酷い目にあいましたけど、その方が絶対に盛り上がりますからね(笑)」

 

 最初は付き合いでと始めたものの、4年の間にどっぷりとゴルフの魅力にハマったという中田さん。サッカー選手時代を含めて芝とは切っても切れない関係にあるようです。

 

<中田浩二(なかた・こうじ)プロフィール>元サッカー選手
1979年7月9日、滋賀県生まれ。小学校3年生から本格的にサッカーを始め、小5で全日本少年大会、中学時代は全国中学校大会に出場。帝京高校に進学後、ボランチに転向し頭角を現すと、高3時にキャプテンとして全国高校サッカー選手権に出場し準優勝を果たした。98年、鹿島アントラーズに入団し、リーグ優勝2回、天皇杯優勝1回、ナビスコカップ優勝1回。05年、オリンピック・マルセイユ、06年から08年はFCバーゼルと海外で活躍後、08年7月に鹿島に復帰した。以後、14年まで現役を続け同年いっぱいで引退。02年日韓、06年ドイツワールドカップ日本代表。現職は鹿島アントラーズ・クラブリレーションオフィサー(CRO)。引退前年から始めたゴルフ歴は4年。ベストスコアは88(袖ヶ浦カントリーなど)。得意なクラブはサンドウェッジ(56)。

 

(文・まとめ/SC編集部・西崎暢之 写真/ザ・ロイヤルGC、SC編集部 取材・監修/二宮清純)


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