(写真:あわや完全試合の投球で、完封勝ちを収めた上野)

 31日、第51回日本女子ソフトボールリーグ1部の開幕節第1日が愛知・ナゴヤドームで行われた。昨年優勝のビックカメラ高崎BEE QUEENは同2位の太陽誘電ソルフィーユに3-0で勝利した。一昨年の女王・トヨタ自動車レッドテリアーズは昨年ベスト4の豊田自動織機シャイニングベガに4-0で完封勝ち。2部から昇格した大垣ミナモはシオノギ製薬ポポンギャルズに0-4で敗れた。開幕節の残り3試合は4月1日に同会場で行われる。

 

 上野、13奪三振無四球完封

太陽誘電ソルフィーユ     0 = 0000000

ビックカメラ高崎BEE QUEEN 3 = 200100×

勝利投手 上野(1勝0敗)

敗戦投手 藤田(0勝1敗)

本塁打 (ビ)山本1号2ラン、大工谷1号ソロ

 

“女王蜂”は今年も健在だ。2017年のレギュラーシーズンはわずか1敗。ビックカメラ高崎は決勝トーナメントも連勝で駆け抜けた。日本代表でもバッテリーを組む上野由岐子と我妻悠香のバッテリーを中心に王座を2年ぶりに奪還した。

 

(写真:「我妻がどれだけ成長するか」を今季のカギに挙げる上野<左>。試合中も頻繁にコミュニケーションを取る)

 今シーズンもエースの上野がマウンドに上がり、キャプテンの我妻がマスクを被った。赤い“戦闘服”を身に纏い、敵と対峙する。対戦相手はエースで4番、投打の二刀流・藤田倭を擁する2年連続準優勝の太陽誘電だ。昨シーズン優勝を争った2チームによる開幕戦。決戦の地は決勝トーナメントと同じナゴヤドームで行われた。

 

 後攻のビックカメラ高崎は初回、上野が原田のどか、山本晴香、河野美里と続く太陽誘電打線をピシャリと抑えた。実は上野、絶好調でこの日を迎えたわけではなかった。むしろ「どうやってかわしていこうか。不安の方が大きかった」という。それでも役者が違うとばかりに他を圧倒する。

 

(写真:先制2ランを含む2安打を放った山本。今季も打の柱としてチームを支える)

 エースの好投に4番が応える。その裏、2死一塁で山本優がライトへホームラン。昨シーズンのリーディングヒッター。4割を超える打率に加え、7本塁打、18打点と打の柱として大活躍した。日本代表の宇津木麗華監督も「日本の4番として安心して見てられる」と太鼓判を押す右の強打者が、先制点をもたらした。

 

「気持ち的に楽になった」と上野。110kmを超える速球を中心に三振の山を築く。スコアボードにゼロを並べる。7回まで1人のランナーも許さなかった。4回には大工谷真波のソロホームランで1点を加えたビックカメラ高崎。上野は3点のリードで最終回のマウンドに上がる。

 

(写真:軽快なフィールディングを見せる上野。「今できるベストを毎試合してるだけ」と語る)

 大記録まであと3アウト。5回から意識し始めたと言う上野だが、「ピンチになる予感はヒシヒシと感じていた」と振り返る。先頭の原田に4球目を弾き返された。上野を襲った打球はセンター前に抜けそうになる。セカンドの藤本麗が飛び付いて打球を止めたが、内野安打。リーグ戦通算9度目のパーフェクトは消えた。

 

 ここでバタバタ崩れないのも上野の強みか。次打者を空振り三振に切って取った。河野と藤田には連打されたが、佐藤みなみを空振り三振に仕留め、大塚枝里香をショートゴロに抑えた。被安打3、奪三振は13。無四球完封でチームを勝利に導いた。

 

(写真:2発を浴びて敗戦投手となった藤田。「もっとどうにかできた」と悔やんだ)

 敗れた太陽誘電の山路典子監督は「ビックとの試合だけに合わせてきたつもりだった」と悔しがった。昨シーズンの決勝同様、エース上野を打ち崩すことができなかった。「頭が良い投手。その場その場の状況判断でピッチングを変えられる。狙い球を絞らせてもらえなかった」と脱帽した。

 

 連覇へ向けて好スタートを切ったビックカメラ高崎。岩渕有美監督は「活躍してもらいたい選手が結果を出してくれた」と主力の活躍を喜びつつも、「これからが大事」と気を引き締める。「昨年は運が良かった部分もあった。もう過去のこと。新しい挑戦をしないといけない」

 

 キャプテンの我妻と前キャプテンの山本は「個々のレベルアップ」をチームの課題に挙げる。チームの平均年齢は23歳。今シーズンは日本代表の候補合宿にも参加した勝股美咲、山内早織など期待のルーキーも加わった。開幕戦ではどの選手のスイングは鋭かった。相手を一撃で仕留める女王蜂の針は、ライバルたちの脅威となりそうだ。

 

 長﨑、先制打含む猛打賞&2打点

豊田自動織機シャイニングベガ 0 = 0000000

トヨタ自動車レッドテリアーズ 4 = 110110×

勝利投手 アボット(1勝0敗)

敗戦投手 海部(0勝1敗)

本塁打 (ト)峰1号ソロ

 

(写真:完封勝利を挙げ、バッテリーを組んだ峰と抱き合うアボット。コンビを組んで3年目になる)

 トヨタ自動車は豊田自動織機との“豊田ダービー”を制した。

 

 昨シーズンは8年続いていた決勝進出を逃した。一昨年まで不動のトップバッターだったナターシャ・ワトリーの穴は大きかった。今シーズンはアメリカ代表のアリソン・アギュラーを獲得。中西あかね監督は「長打も打てますし、何よりアグレッシブで集中力もある」と期待を寄せる。

 

 早速1番で起用されたアギュラーは日本リーグ初打席で四球を選び、出塁した。続く鈴木鮎美が着実に送り、スコアリングポジションにアギュラーを進める。3番は長﨑望未。初球を弾き返し、左中間を破った。アギュラーは悠々ホームに還ってきた。長﨑は「ヤマを張っていた」というアウトコースのボールを一振りで仕留めた。

 

 先取点をもらったモニカ・アボットは快調に峰幸代のミットにボールを投げていく。「最高のボールがいっぱいあった」(峰)。危なげないピッチングを見せると、2回には女房役の峰に一発が飛び出し、リードを広げた。

 

(写真:長﨑の2本目のタイムリーは外の変化球を巧く拾った技ありのヒット)

 4回に長﨑、5回には峰がタイムリー。着々と点を重ね、4ー0とした。アボットは1安打ピッチング。武器のライズボールも冴え渡り、バットで空を斬らせる場面が目立つ。来日10年目のサウスポーは今年も他チームを悩ませる壁となりそうだ。10奪三振シャットアウト勝ちを収めた。

 

 長﨑は3安打2打点。鈴木は2つの犠打でチャンスを広げた。キャプテンの古澤春菜も2安打を放った。中西監督が主力として期待する世代がそれぞれアピールした。

 

 また新戦力のアギュラーはヒットこそなかったが2度出塁するなどトップバッターの仕事は果たした。「ボール球を振らない。選球眼が良いのが彼女の特長のひとつ」と中西監督の見立て通りの活躍だ。

 

(写真:7番に起用され、三塁打を含む2安打と奮闘した古澤)

 王座奪還に燃えるトヨタ自動車は今シーズンから古澤がキャプテンを務める。「“古澤がキャプテンになって強くなった”と言われたいです。とにかく勝つことにこだわる。元気ハツラツとしたプレーで引っ張るのが私の役目です」

 

 期待が大きいのは長﨑に対しても大きいだろう。日本代表に定着した彼女にはランナーを還す役割を求められている。長﨑本人も「結果を出さなきゃいけない立場」と自覚は十分だ。

 

 今シーズン、打点王のタイトルを個人の目標に掲げる。それは彼女に「打点は勝利に関わる大事な部分」との意識があるからだ。25歳の長﨑は日本リーグ最多タイの28打点を挙げた2013年以来3度目のタイトルを狙う。

 

(写真:ダイヤモンドをゆっくりと回ってきた數原<8>を迎えるシオノギ製薬の面々)

 昨季本塁打王・數原、2打席連発

大垣ミナモ         0 = 0000000

シオノギ製薬ポポンギャルズ 4 = 010102×

勝利投手 池田(1勝0敗)

敗戦投手 ロバーツ(0勝1敗)

本塁打 (シ)古藤1号ソロ、數原1号ソロ、2号2ラン

 

 ホームラン王の數原顕子が開幕戦から2発打ち上げた。昨シーズンは11位。入れ替え戦に回り、なんとか1部残留を果たしたチームが開幕戦白星スタートだ。

 

 1打席目は「緊張した」という數原だが、4回の2打席目と6回の3打席目は「放物線を描くイメージはできていました」と明かす。4回はライトスタンドへのソロ、6回は左中間への2ランを運んだ。

 

(写真:2部を優勝で昇格してきた大垣ミナモ。創部初の1部は黒星スタートとなった)

 數原は本来ミズノのバットを使用しているが、この日は竹林綾香のディマリニのバットを借りていた。これには理由があり、夢でディマリニのバットでホームランを打ったからだという。正夢にしてみせた。

 

 昨シーズン覚醒し、8本塁打でホームラン王に輝いた。數原はお立ち台で「15本打ってホームラン王を獲ります!」と宣言。24歳のスラッガーは、リーグ記録(10本)を大きく上回るノルマを掲げた。

 

(文・写真/杉浦泰介)