横浜市青葉区にある國學院大学硬式野球部グラウンドを訪れたのは、春の陽気に恵まれた3月半ば。東都大学野球リーグの開幕まであと1カ月と迫った時期であった。そこには来るべき勝負の季節に備え、真剣な眼差しで練習に励む西丸泰史の姿があった。

 

 西丸は香川県・尽誠学園高から2015年4月に國學院大に進学した。2018年は大学4年生として臨む、学生最後のシーズンだ。新チームから主将を任され、一層の責任と誇りを胸に戦うこととなる。

 

「今は開幕に向けて状態を上げている時期です。オープン戦はまだ試せる時期でもあるし、自分の感覚だけでなくチームの感覚もじっくりと練ることができる期間だと思うので、試せることはどんどん試したい」
 初対面の私にも清々しい笑顔で、現状を語る。冒頭からチームについての言及が含まれているところに、主将としての自覚が垣間見える。

 

 東都大学野球リーグは、東京を所在地とする21大学の硬式野球部で構成された大学野球リーグだ。東京六大学野球リーグと異なり4部制で、優勝争いのみならず、熾烈な1部昇格・残留争いが、毎年多くのファンの胸を打つ。そうした熱気も相まって、野球レベルの高さは全国随一。「人気の六大学、実力の東都」と言われており、プロ野球界にも多くの人材を輩出し続けてきた。

 

 近年、「戦国東都」のなかで急激に力をつけてきているのが國學院大だ。2部にいる期間が長かったが、1996年に就任した竹田利秋監督(現・総監督)のもとで着実に強豪への礎を築き上げた。そして2010年8月に後を継いだ鳥山泰孝監督が、同年の秋季リーグで、創部80年目での初優勝に導いたのだ。以来、國學院大は1部リーグの常連校としての地位を確立してきた。いまや自他ともに認める大学野球の雄だ。そんな強豪チームで、現在不動のクリーンアップを務めるのが西丸である。

 

 打球判断に“ご注目”

 

 西丸の最大の売りは何と言ってもバッティングである。大学3年生で迎えた2017年の春季シーズンは36打数15安打、打率4割1分7厘と打ちまくり、満票でベストナインに選ばれた。同年の秋季シーズンでも3割近い打率を記録し、春の数字がフロックでないことを証明。実力者が揃う東都の中でも、屈指の好打者のひとりだ。國學院大の主軸として、2018年はより厳しく警戒される年となるだろう。

 

 本人も打撃に自信を持っている。「長所はバッティングです。どこのコースにきても打てるように対応しますし、初球からどんどん振っていくタイプです。今年の冬からは特にウェイトトレーニングなど、体の使い方を見直すことで、もっと長打を打てるようになることを目標にしてやってきました。ここ最近のヒットを見ても長打が結構多いです」

 

 打率4割を記録した打撃のイメージがどうしても強い西丸だが、魅力は打撃だけではない。本人は足にもこだわりを見せる。「走塁もアピールポイントです。それは単純な足の速さなどではなく、打球判断が得意なんです。足が遅くても走塁というのは速くなるし、小さい時から念入りに取り組んできたので自信があります」。打球の速さやクッションボールの方向を察知し、次の塁を果敢に奪うのである。

 

「野球センスが抜群に優れている選手」。それが取材を通して得た西丸選手の印象だ。実際、彼の指導に携わった者の多くが同様の言葉を述べている。四国・香川が生んだ“野球小僧”は、果たしてどんな人物なのか。いかなる野球人生をこれまで歩んできたのか。その道を辿る旅に出発しよう――。

 

<西丸泰史(にしまる・たいし)プロフィール>
1996年10月18日、香川県木田郡三木町生まれ。小学1年で野球を始める。氷上小、三木中を経て尽誠学園高に進学。1年生からショートでレギュラーの座を掴んで以来、不動のレギュラーとなった。高校2年生時、春の四国大会で獅子奮迅の大活躍。クリーンアップとして得意の打撃で、四国大会制覇に貢献した。高校卒業後は東都大学野球リーグの國學院大学に進学。強打の内野手として活躍中。2017年春季リーグ戦ベストナインに、指名打者部門で選出された。2018年からは主将を務める。身長178cm、体重78kg。

 

(文・写真/交告承已)

 


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