4月4日(水)
◇決勝
 快投強打の根尾、9回140球完投&2安打1打点
智弁和歌山(和歌山) 2 = 000|200|000
大阪桐蔭(大阪)    5 = 000|200|12×

 

 4日、第90回記念選抜高校野球大会決勝が阪神甲子園球場で行われ、大阪桐蔭が智弁和歌山を5対2で下し、36年ぶりとなる史上3校目の選抜連覇を成し遂げた。

 

 昨秋の近畿大会決勝と同一カードとなった決勝戦。90回記念にふさわしい好勝負となった。大阪桐蔭の先発は前日の準決勝・三重戦で2番手として8イニング99球を投じた根尾昂。初回、連戦の疲労からか球がバラつき、2つの死球を与えて2死一、二塁のピンチを招く。ここは5番の冨田泰生をセンターフライに打ち取って難を逃れた。その後は立ち直り、序盤をゼロで切り抜けた。

 

 一方の智弁和歌山の先発は2年生の池田陽佑。準決勝の東海大相模戦で先発しながら1死も取れずに降板した右腕は、リベンジと言わんばかりに決勝の舞台で腕を振った。立ち上がりから大阪桐蔭の強力打線の前に臆することなく、3回まで無失点に抑える。

 

 先手を取ったのは智弁和歌山だった。4回表、無死満塁で、7番・高瀬宗一郎は投ゴロ併殺に倒れたものの、なおも2死二、三塁のチャンス。8番・東妻純平がこの場面で根尾のスライダーをレフト前に運び、2点を奪うことに成功した。


 先制こそ許したが、無死満塁から高瀬を併殺に取った根尾のピッチングは特筆すべきものだった。引っ掛けさせるための外角低めに沈むスライダーをキャッチャーの要求通りに投じた根尾は、見事狙い通りに打者をピッチャーゴロに仕留めてホームゲッツーを奪った。こうした隙のない守備は、やがて試合の流れを引き寄せる力となる。

 

 その裏、大阪桐蔭は早速反撃を開始。4番・藤原恭大、5番・根尾の連打に死球が絡んでこちらも無死満塁とすると、7番・石川瑞貴のショートゴロが相手エラーを誘い1点を返す。次打者の小泉航平がセカンドゴロ併殺に倒れる間に三塁ランナーが生還し、同点に追いついた。

 

 両チームとも4回以降は得点を奪えない展開が続いた。試合が動いたのは7回裏。智弁和歌山の池田が先頭の小泉に四球を与えたところで降板し、前日180球を投げたエースの平田龍輝にバトンタッチ。犠打で1死二塁とされると、1番・宮崎仁斗が高めに浮いた速球を逃さずにレフト前に運び、大阪桐蔭が3対2と勝ち越しに成功した。

 

 さらに続く8回にも藤原、根尾に連続タイムリーが飛び出し、大阪桐蔭が2点を追加。5対2と広げたリードを、根尾が守り切った。根尾は強打の智弁和歌山を相手に、6安打2失点で完投勝利し、史上初の2年連続胴上げ投手となった。

偉業を成し遂げた根尾は「何とか最後まで粘れた。素晴らしいところで投げさせていただいて、貴重な経験。次の試合にも生かしたい」と堂々とした表情で語った。3番を打った主将の中川卓也は「連覇するという強い気持ちを持って、根尾がしっかり投げてくれた。部員41人全員で勝ち取った」と、大阪桐蔭野球部の部訓「一球同心」の体現を誇った。


 根尾、藤原、中川らプロ注目選手を揃え、圧倒的な総合力で優勝候補と目されていた大阪桐蔭。こうした前評判を受けて「最強世代とはおこがましい」と大会前に口にしていた大阪桐蔭の西谷浩一監督は優勝に顔をほころばせながらも、「開会式で優勝旗を返還しましたが、“必ず持ち帰ろう”と話しました。この大会中にも成長しましたので、夏までもっともっと鍛えて力をつけて甲子園に戻ってきたい」と早くも夏を見据えていた。

 

 一方の智弁和歌山は惜しくも決勝で敗れはしたが、“強打の智弁和歌山”復活を大いに印象づけた。今大会の躍進で高嶋監督の春夏通じての甲子園通算勝ち星は68まで伸びた。前人未到の70勝越えを懸けた戦いが、またすぐに始まる。

 

(文/交告承已)