4回8安打5失点。ほろ苦いプロ初登板となった。

 

 カープ期待のサウスポー、高橋昂也が4月4日、神宮での東京ヤクルト戦でプロの洗礼を浴びた。

 

 4回、2点を許し、なおも2死一、二塁。ここで迎えたバッターは長距離砲のウラディミール・バレンティン。カウント1-2からの4球目のストレートを左中間スタンドに運ばれた。この3ランが致命傷となった。

 

 高橋は「石原さんの要求より中に入った」と悔やんだが、後の祭りだった。

 

 蛇足だが、バレンティンの残留を決めたのは、昨季までカープの一軍打撃コーチを務めていた石井琢朗である。球団内部には、「そろそろ切ろうか」との声もあったそうだが、これに石井が反対した。

 

「中から見るのと、外から見るのとでは違うんでしょうね」と4年ぶりに監督に復帰した小川淳司は語っていた。

 

 そのバレンティンに19歳は打ち砕かれてしまった。石井の判断は正しかったと言えるだろう。

 

 バレンティンにストレートを投げるなら、彼にとって窮屈なスイングを迫られるヒザ元か胸元だ。それもボール球が基本である。普通のバッターならアウトローでも、バレンティンの場合は、手が届いてしまうのだ。

 

 高橋は変化球のコントロールに課題がある。そのためカウントを悪くすると、どうしてもストレートを投げざるを得なくなる。これを待たれると、どうしようもない。この日も悪いクセが顔をのぞかせた。

 

 ボクシングで言えば“4回KO負け”を喫した高橋。しかし、緒方孝市監督は「まだチャンスはある」と、しばらくはローテーションで投げさせることを言明した。順当なら、次の登板は4月11日の阪神戦になる見通しだ。ヤクルト戦の教訓を次にいかして欲しい。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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