(写真:男子は4年ぶり2度目、女子は37年ぶり6度目の優勝を目指す)

 10日、日本バドミントン協会は都内の味の素ナショナルトレーニングセンターで記者会見を行い、国・地域別対抗戦の男子トマス杯、同女子のユーバー杯の日本代表各10人を発表した。男子は桃田賢斗(NTT東日本)をはじめ、ダブルスの嘉村健士(トナミ運輸)らを選出。女子はリオデジャネイロオリンピックのダブルス金メダリスト・髙橋礼華&松友美佐紀(日本ユニシス)、昨年の世界選手権シングルス優勝の奥原希望(日本ユニシス)などが入った。男子は嘉村、女子は髙橋礼華がキャプテンを務める。両大会は20日からタイ・バンコクで行われる。

 

(写真:パクHCが2004年に指揮を執ってから好成績を残している)

 4年前のトマス杯で初Vの快挙に沸いた男子。前回大会がベスト8だったこともあり、パク・ジュボンHCは「ベスト4」を目標に掲げる。好材料は優勝メンバーの1人・桃田が戻ってきたことだ。当時は19歳。「一番年下でイケイケどんどんだった」という男は紆余曲折を経て、日本のエースとなった。

 

 本人もその自覚は十分。「全勝してチームに貢献したい」と誓う。予選リーグはチャイニーズ・タイペイ、香港、ドイツと同組となった。まずは2位以内に入った決勝トーナメント進出を狙う。その先は第1シードの中国、第2シードのデンマーク、第3シードのインドネシアなどの強豪国がライバルとなる。

 

「自分が全勝すれば優勝するチャンスがある」と桃田。4月のアジア選手権ではリオデジャネイロオリンピック金のチェン・ロン(中国)、同銀リー・チョンウェイ(マレーシア)らを倒し、初優勝を成し遂げた。パクHCは「桃田のカムバックはチームにとって良かった」と、彼の復活を喜んだ。

 

(写真:繊細な技術は折り紙付き。フィジカル強化でネットプレーの精度は増した)

 一度は圏外まで落ち込んだBWF世界ランキングを13位(5月10日現在)まで上げてきた。日本人トップである。出場停止期間にも努めたフィジカル強化が実を結び、持ち前のテクニックとマッチし始めている。「ネット前で勝負をせずリスクを避けていた。足を使って技術で勝負する。時には我慢もしつつ、長いラリーにも持っていく。そういった戦い方がわかってきた」。帰ってきた“ヒーロー”が4年ぶり2度目の戴冠に導く。

 

 ユーバー杯4大会連続表彰台の女子は、37年ぶりの優勝を狙う。

 

 10度優勝の強豪・中国を差し置いて第1シードを獲得した。女子ダブルス3組はいずれも世界ランキング5位以内。3位の福島由紀&廣田彩花組(岐阜トリッキーパンダース)、4位の髙橋礼華&松友組、5位の米元小春&田中志穂組(北都銀行)とタレントは豊富だ。シングルスは4月19日付けの世界ランキングで1位(現在は2位)になった山口茜(再春館製薬所)、リオオリンピック銅メダリストで昨年の世界選手権女王の奥原と二枚看板を揃える。

 

 これまでエースダブルスとして日本を牽引してきた“タカマツ”ペアだが、ランキングで日本人2番手となったため、今大会は第2ダブルスでの起用が濃厚だ。4度目のユーバー杯となる髙橋は「第2ダブルスの経験は少ないので楽しみ」と語る。2番手の第1ダブルスと違い、第2ダブルスは4番手。決勝トーナメントであればチームが0勝3敗で出番なしに終わることもあるが、1勝でもすれば終盤のより緊迫した場面での登場となる。福島&廣田、山口、奥原に続く“タカマツ”ペアが相手にトドメを刺す役割を担う。

 

(写真:ライバルだが仲の良い女子ダブルスチーム。練習でも笑顔が目立った)

 日本バドミントン界初の金メダルを手にしてから、苦悩の日々を送っていた。髙橋礼華は一時、引退も頭を過ったという。昨年末、2人で話し合った。「あのままダラダラと中途半端な気持ちでやっていても辞めた方がいい。先輩ともう一度オリンピックで金メダルを獲りたいという想いがあった。2人で覚悟を決めました」と松友。互いに胸の内をぶつけ合い、「松友と続けるか、引退するのかの2つしかなかった」という髙橋礼華は腹をくくった。

 

「リオの時以上の気持ちで、“オリンピックで絶対2連覇する”。もう何も迷わない」(髙橋礼華)。東京オリンピックに向けて、気持ちを新たに走り出した。2大会連続のキャプテンを任された髙橋礼華は「チームメイトがコート内で私の背中を見て、“よし、やろう!”という気になってくれればいい」と抱負を口にした。覚悟を決めたリーダーが、背中でチームを引っ張る。

 

(写真:新ユニホームを纏って会見に出席した男女キャプテン嘉村<右>と髙橋礼華)

トマス杯・ユーバー杯日本代表

・男子

シングルス

西本拳太(トナミ運輸)、坂井一将(日本ユニシス)、常山幹太(トナミ運輸)、桃田賢斗(NTT東日本)

ダブルス

遠藤大由&渡辺勇大組(日本ユニシス)、園田啓悟&嘉村健士組(トナミ運輸)、井上拓斗&金子祐樹組(日本ユニシス)

 

・女子

シングルス

山口茜(再春館製薬所)、佐藤冴香(ヨネックス)、奥原希望(日本ユニシス)、髙橋沙也加(日本ユニシス)

ダブルス

福島由紀&廣田彩花組(岐阜トリッキーパンダース)、髙橋礼華&松友美佐紀組(日本ユニシス)、米元小春&田中志穂組(北都銀行)

 

(文/杉浦泰介)