細貝野乃花は工作や絵を描くことが大好きな少女だった。

「工作が好きでした。家にないものは自分で段ボールを使って作ったりしていました。友達にプレゼントする色紙作りも画用紙を使って可愛く仕上げたり……」と彼女は語る。

 

愛媛新聞社

 

 

 

 

 母・亜砂子は「手先が器用で工作が上手でした。あとは絵を描くことも好きで、賞に入選したこともありましたね」と娘の幼少期を振り返る。読者プレゼント用のサインを書いた際に、彼女はとてもチャーミングなうさぎの絵をそえた。

 

 きっと、こういった作業が好きなのは“自由に表現できる”からではないか。細貝は「人にやらされるのは好きではないので、自分で考えて自分で取り組みたい」と口にする。彼女はどこか、表現者としての一面を持ち合わせている。

 

 小学生の時には学校の図書室に足を運び、お菓子づくりの本を手に取る。お菓子づくりは彼女にとって大好きな遊びの1つだ。それ以外でも細貝は活発でいろいろなことに興味を示し、実際に自分でやってみる子供だった。両親は彼女をのびのび育て、自由に、好きなことに取り組むことを止めなかった。

 

「スポーツも好きでしたか?」と問うと笑みを浮かべながら「体を動かすのは好きでしたが、体育の授業は嫌いでした」と返ってきた。理由は「やらされているから」である。自由を望む彼女らしい理由だ。

 

 そんな細貝がバスケットボールを始めたのは2歳上の姉の影響だった。姉が小学3年生の終わり頃に地元・宮城県のミニバスケットチーム・松陵ドリームに入団した。「最初は姉について行って、(ボールで)遊んでいただけなんです」と細貝。姉がハツラツと練習に励む姿に感化されたのだろう。2年生になると細貝も正式にチームに加わった。

 

 信頼関係を築いた交換ノート

 

 のちにカテゴリー別日本代表に選ばれるほどの実力を持つ細貝だが、初めからバスケットが上手なわけではなかった。入団当初を本人はこう振り返った。

 

「ドリブルがつけなくて(笑)。うまくボールが扱えなくて表面をペタペタ叩いているだけ。手は痛いし、ターンはできない。コーチにはかなり怒られましたよ」

 

 それでも細貝は松陵ドリームを辞めることはなかった。コーチとの信頼関係は築けていた。「厳しいけど、優しさもありました」。コーチは各選手と交換ノートでのやり取りを重視にしていた。それが細貝の心の支えになっていたのだ。

 

 ノートの内容は、バスケットのスキルについてだけではなかった。「心に響く言葉がたくさんあったんです」。具体的な描写は恥ずかしそうに「なんだったっけなぁ」と明かさなかった。それでも多感な時期に、親以外の大人との言葉のキャッチボールが彼女の人格形成に大きく関わったことは間違いない。

 

 ミニバスケットに励む娘の様子を母・亜砂子はどう見ていたのだろう。

「お姉ちゃんと同じ学年の子たちと自分も“同等でいたい”という感じはありましたね。小学生ですから(笑)。お姉ちゃんたちとは体格的にもちろん劣っていました。それでも“負けるもんか”という気持ちで食い込もうとしていましたよ。“同じコートに立つんだ”と負けず嫌いを発揮して野乃花なりに必死にやっていました」

 

 ミニバスケットは学年ごとにチームを分けるわけではない。小学1年生から6年生までが1つのチームを結成する。そして第3クォーターまでに10人のメンバーが出場しないといけないルールがある。細貝曰く、「その10人のメンバーにはずっと入れてもらっていました」。負けず嫌いが奏功し、入団後、すぐに試合に出場していた。

 

 細貝が小学6年生の頃、転機が訪れる。通常、ミニバスケットにはスリーポイントシュートはない。どんなに遠くからゴールしても2点、フリースローは1点である。だが、仙台市に1年に1回行われる大会ではスリーポイントシュートのルールを採用した大会が催される。母・亜砂子はこう述懐する。

 

「その大会で野乃花がスリーポイントを1試合で4本くらい入れたんです。いっぱい入って喜んでいました。遠くからシュートを放ってスポーンと決まる瞬間、すごく気持ちよさそうな顔をしていました。それでのちのち、スリーポイントをもっともっと練習したいと思うきっかけにも、なったのではないでしょうかね」

 

 今はシューターとして鳴らす細貝。この武器に磨きをかけるのは中学校に入学してからになる。彼女の武器は親子での努力の結晶なのである――。

 

(第3回につづく)

 

<細貝野乃花(ほそかい・ののか)プロフィール>

1997年8月26日、宮城県仙台市生まれ。小学2年からミニバスケットボールを始める。松陵ドリーム-仙台市立八乙女中学-聖カタリナ女子高校(現聖カタリナ学園高校)。シューティングガード。スリーポイントシュートが最大の武器。聖カタリナでは2年時からレギュラーの座を掴む。2014年度のインターハイとウィンターカップでチームを3位に導いた。高校時代には年代別の日本代表にも選出された。早稲田大学女子バスケットボール部入部後、2年生からレギュラーとして活躍。身長169センチ。

 

(文・写真/大木雄貴)

 

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