福島ホープスの高橋元気です。4月の月間MVP(投手部門)を受賞できたのは監督、コーチ、スタッフ、そして何よりもいつも後ろから助けてくれるチームメイトのおかげです。ピッチャーの成績は仲間の助けなくして得られないので、これからも感謝と謙虚な気持ちを忘れずに、チームのために戦っていきます。今、前期優勝争いという緊張感の中でマウンドに上がれるので非常にやりがいを感じています。

 

 テングになった新人時代

 子供のころから野球を始め、ピッチャーに転向したのは高校からです。小中ではたまに投げていましたがメインは内野(ショート)で、高校の野球部にも野手として入部しました。監督に「ピッチャーをやれ」と言われたのですが、ずっとピッチャーをやりたかったので嬉しかったですね。元々、目立ちたがりな性格でピッチャーというポジションに憧れがあったんです。

 

 僕は青森県弘前市で育ちましたが、高校は野辺地にある光星学院野辺地西(現八戸学院野辺地西)に進学しました。ここの野球部は全国からスカウトされた選手が集まっていて、全然、青森の学校という感じはしませんでしたね(笑)。でも全国レベルの選手と一緒にプレーすることでものすごく刺激を受けました。

 

 卒業後の進路を考えたとき、大学は自分の中でちょっと違うと考えていました。たぶん大学に進学したら、自分の性格からして甘えが出ると思ったんです。それに周囲が大学に行く中で他人と違うことをしたいと考え、それでBCリーグを選びました。BCはプロ野球だから成績を残せないとクビになるけど、頑張れば1年目からでもNPBに行ける。そう考えてBCのトライアウトを受けました。

 

 2011年、富山に入団した1年目、たまたま開幕戦で中継ぎとして起用されて好投したんです。お立ち台に上ったんですが、そこでテングになってしまいました(笑)。「こんなもんなの?」と勘違いして、当然、だんだん結果が出なくなって……。そこで気づいたのが学生時代と違って、BCではやらされる練習ではなく自主的に練習をやらないとダメだということです。とはいえルーキーイヤーに気づいたわけではなく、2年目、3年目と進む中でようやく気づいたという感じでした。

 

 BCで野球人として成長

 そういうタイプの選手だったので、富山時代は監督によく怒られていました。よく言われたのは野球選手としてのマナーだったりルールだったりです。野球は団体競技ですが、ずっとワガママでお山の大将でやってきた自分はそれがわかってなかった。

 

 たとえば先発して5回ももたずに5失点でベンチに下げられると、そこでムスッとしてふてくされていたんです。そうしたら当時監督の進藤達哉さんに「お前のせいで投げなくてよかった他のピッチャーがマウンドに上がって投げてくれてんだぞ。お前はもうこの試合、マウンドに戻れないんだ。それなら声出すしかねーだろ!」と。

 

 他にもいろいろと怒られて、でもすぐには変われずに、徐々に徐々にプロのピッチャーとしての自覚が芽生えてきたという感じです。

 

 福島に移籍後、岩村明憲監督からは「責任と覚悟を持て」とよく言われています。岩村監督曰く「それがあったら準備不足でマウンドに上がるなんてことはないはずだから」と。今季、好調なのは投げる前の準備の段階からきちんと野球に取り組んでいけてるのが大きいですね。

 

 実はこのシーズンオフにピッチングフォームを変えました。これまでもフォーム変更はしていますが、そのときは「調子が悪いから」というある意味でネガティブな理由でした。でも今回は、去年の後期から調子は悪くなかったんですが、良いからこそチャレンジ、よりレベルアップするためのフォーム変更でした。

 

 具体的には投げる腕の位置を下げて、より腕を振りやすいスリークォーター、サイド気味に変更したんです。それとグラブ側の手をもっと使うことを意識して右腕だけでなく左腕、そして全身を使って投げられるようにしました。結果としては平均球速が上がって、球の質が向上した。これまで以上にストレートでファウル、空振りがとれてカウントを稼げるようになりました。

 

 今季はここまで7勝と数字がついてきていますが、それでも自分のピッチングに満足していません。常に自己否定できる選手でありたいと思っていて、「これじゃダメなんじゃないか?」と常に不安な気持ちを持つようにしています。満足したらそこで進化が止まるという意識は常に持っていますね。

 

 今季、栃木に村田修一選手が入団しました。対戦すると打席での雰囲気もあって、まだ怖いと感じる部分もある。でもそういう意識があるうちは自分はNPBには行けないと思っているので、シーズンを通してそうした意識をなくせるように、もっと自分を高めたいですね。

 

 チームの優勝に向けて自分ができることはマウンド上できちんと仕事をすること。そのために投げる前の準備をきちんとしてチームに貢献したい。福島のファンのみなさん、これからも応援をよろしくお願いいたします。

 

<高橋元気(たかはし・げんき)プロフィール>福島ホープス
1992年4月20日、青森県出身。弘前市で育ち小学校時代から野球を始める。ポジションは内野、主にショートを務めた。幼馴染に埼玉西武・外崎修汰がいる。高校は光星学院野辺地西(現・八戸学院野辺地西)に進学、ここでピッチャーに転向し頭角を現す。2年夏、県大会ベスト4が最高で甲子園出場は叶わなかった。卒業後、BCリーグのトライアウトを受験し2011年、富山GRNサンダーバーズに入団。15年までの5シーズンで通算21勝をあげ、翌16年から福島ホープスへ移籍。17年、キャリアハイの年間9勝をマーク。今季は開幕から4試合4連勝をマークし4月の月間MVPに輝いた。6月10日現在、リーグトップの7勝をあげている。右投右打。身長177キロ、体重82キロ、


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