連覇を狙う優勝候補・ドイツが本命だ。ベテランセンターフォワードのミロスラフ・クローゼが現役引退し、点取り屋が不在だった。だが、スピードスター、ティモ・ヴェルナー(ライプツィヒ)の覚醒で問題は解消された。この22歳は史上最年少でブンデスリーガ100試合出場を達成。今季は13ゴールを決めて勢いにのっている。

 

 若きFWを豪華なMF陣がサポートする。トニ・クロース(レアル・マドリード)が3列目からゲームを組み立てる。2列目のユリアン・ドラクスラー(パリ・サンジェルマン)らアタッカー陣が相手を切り崩し、アシストだけでなく自らも得点を奪える。

 

 ドイツの攻撃に創造性をもたらせる唯一の存在のメスト・エジル(アーセナル)。彼が2日のオーストリア戦でひざを負傷したのは気がかりだが、マルコ・ロイス(ドルトムント)らが控える。エジルがいなくても十分な戦力が整っている。

 

 コンディションのピークを決勝トーナメントに合わせたとしても地力が他国とケタ違い。万が一、このグループを2位で通過するとなると決勝トーナメント初戦でブラジルと対戦することが濃厚となる。史上3カ国目の連覇に向けて難儀な道は避けたい。いざとなれば彼らも本気を出すはずである。

 

 対抗にはメキシコをあげたい。パスサッカーをベースに組織だったポジショニングでボールを保持するスタイルは健在だ。4-3-3のサイドバック、インサイドハーフ、両ウィングがリズムよくボールをつなぎ、敵陣を崩す。フィニッシャーは円熟期を迎えたハビエル・エルナンデス(ウェストハム)。マンチェスター・ユナイテッドやレアル・マドリードなど強豪クラブを渡り歩いたゴールゲッターがとどめを刺す。

 

 大穴はスウェーデンだ。ヨーロッパ予選プレーオフでイタリアと対戦し見事、本戦出場の切符を手にした。武器はフィジカルを生かした堅い守備だ。センターバックのヴィクトル・リンデロフ(マンチェスター・ユナイテッド)、アンドレアス・グランクビスト(クラスノダール)を中心に我慢のサッカーを展開する。焦れずに相手の攻撃をはね返し続けることができれば、2位通過も見えてくる。

 

◎ドイツ

○メキシコ

▲スウェーデン

 韓国

 

(文/大木雄貴)

 

 ドイツ、史上3カ国目の連覇へ

 

 FIFAランキング1位、前回王者ドイツのグループリーグ(GL)突破はほぼ間違いないだろう。あとは1位通過か2位通過かの問題だ。メキシコ、スウェーデン、韓国の順に対戦する。メキシコに5勝1敗5分け、スウェーデンには15勝12敗9分け。試合数こそ少ないが、韓国にも2勝1敗と勝ち越している。いずれの国との相性は良い。

 

 欧州予選は無傷の10連勝でトップ通過を果たした。北アイルランド、チェコ、ノルウェー、アゼルバイジャン、サンマリノ相手とはいえ43得点、4失点は特筆すべき数字だ。

何より際立つのはチームの熟成度。2016年ブラジルW杯を経験した選手は8人おり、その多くが現在の中核を担っている。GKマヌエル・ノイアーとセンターバックのマッツ・フンメルスとジェローム・ボアテング、右サイドバックのヨシュア・キミッヒはブンデスリーガ王者バイエルンで共にプレーしており、連係に不安はない。

 

 サミ・ケディラ(ユベントス)、トニ・クロース(レアル・マドリード)で組む堅実なドイスボランチは攻守にスキが見当たらない。メスト・エジル(アーセナル)、ユリアン・ドラクスラー(パリ・サンジェルマン)の中盤のテクニシャンに、“シャドーストライカー”トーマス・ミュラー(バイエルン)が絡むアタッカー陣も魅力だ。ポゼッションもカウンターも使い分けられる緩急自在の攻撃で相手に脅威を与える。

 

 中でもミュラーはW杯男。過去2大会はいずれも5得点を挙げている。10年南アフリカW杯の得点王である。W杯通算10得点は歴代8位の得点数。歴代トップのミロスラフ・クローゼの記録まで、あと6得点だ。勝ち上がり次第では新記録も見えてくる。相手の守備網をかいくぐり、一撃で仕留めるミュラー。“必殺仕事人”がドイツの命運を握る。

 

 ドイツは今年行われた4試合のテストマッチは1勝2敗1分けと結果が出ていない。だがあくまで本番をどう戦い抜くのかが重要だ。その点を熟知しているのがドイツである。2000年代に入ってからのW杯成績は02年日韓大会が準優勝、06年ドイツ大会と10年南アフリカ大会が3位。そして14年ブラジル大会で4度目の頂点に立った。この安定感がドイツのドイツたる所以だろう。

 

 7大会連続16度目出場のメキシコはパスサッカーを武器とする。W杯はここ6大会いずれもベスト16入りを果たしている。守備も堅実で大きな穴は見当たらない。ドイツに続くのはメキシコが有力だ。大穴に挙げる韓国はJリーガー5人が最終メンバー入り。GKキム・ジンヒョン(セレッソ大阪)、MFチョン・ウヨン(ヴィッセル神戸)のほか、元J戦士のDFパク・チュホ(蔚山現代)ら日本にも馴染み深い選手は多い。ソン・フンミン(トッテナム)など欧州で活躍するアタッカーも出てきており、2位に入るチャンスもゼロではない。スウェーデンは堅守速攻。組織力で勝負するが3大会ぶりのGL突破は厳しい。

 

(文/杉浦泰介)