ラグビーの全国大学選手権は12日、東京・国立競技場で決勝が行われ、帝京大が早稲田大を41−34で破り、5連覇を達成して前人未到の記録を更新した。帝京大は関東大学対抗戦も全勝で制しており、今季の対大学の公式戦を無敗で締めくくった。帝京大は先制を許したものの、ブレイクダウンの攻防を制して逆転し、後半に4トライをあげて一気に突き放す。5年ぶりの優勝を狙った早大も追い上げて一時は5点差に迫ったが及ばなかった。
 強力FWで初の大学日本一に輝いて始まった連覇をまたひとつ伸ばした。突破力のあるBK陣に、勝負どころを心得たチームとしてのまとまり……。年々、着実に進化を遂げる帝京ラグビーの強さがみえた80分だった。

 立ち上がりは出鼻をくじかれた。ディフェンスの間隙を突かれて突破を許し、早大のWTB荻野岳志にノーホイッスルトライを許す。帝京は相手陣内に攻め込むも、ハンドリングエラーが続き、思うようにボールがつながらない。

 しかし、選手たちに慌てる様子はなかった。ミスが出たBK陣をフォローするように、体格で上回るFW陣が相手を押し込み、ゴールに迫る。そして12分、ゴール手前のラインアウトから一気にモールで突破を図り、最後はLO小瀧尚弘がねじ込んでトライ。5−7と反撃を開始する。

 その後も帝京はボールを持った早大の選手に激しいタックルをしかけ、前に進ませない。敵陣内でボールを奪ってチャンスをつくり、23分には再びゴール手前のラインアウトからPR深村亮太が密集を乗り越えて右腕を伸ばし、逆転のトライを決める。

 ただ、早大は必死のディフェンスでそれ以上の失点を防ぎ、前半終了間際にPGで3点を還す。12−10と帝京が僅差のリードで試合を折り返した。

 後半になると、帝京BK陣が本領を発揮する。立ち上がり、自陣でのターンオーバーから小瀧が右サイドを破り、ゴール手前まで前進する。そこから大きく左へ展開すると、早大のディフェンスはついてこられない。誰もいない左隅に俊足のCTB磯田泰成が飛び込んだ。

 後半9分にもPGで3点を追加し、22−10と点差を広げた帝京は12分、相手の左陣内でボールを奪うと今度は右へボールを素早くまわす。2年生のWTB森谷圭介、4年生FB竹田宜純、1年生SO松田力也とつないでトライ。直後も相手のキックオフのボールをキャッチしたFL杉永亮太が右サイドで早大のディフェンスを引きずりながら突破を試みる。相手を充分に引き付けてからパスを受けた松田が手薄な中央を駆け抜けると、早大に止められる選手はいなかった。連続トライで34−10。このまま試合は帝京の一方的な展開になるかと思われた。

 しかし、早大も諦めなかった。18分に荻野がこの日2つ目のトライを決めると、その1分後には早いパス回しから、FB藤田慶和が左ライン際を駆け抜ける。藤田からのボールを受けたCTB坪郷勇輝がタックルされながらも片腕一本でゴールに届かせた。これで22−34と試合は白熱の度合いを増してくる。

 そして27分、早大がゴール前でペナルティを得ると、荻野が帝京のディフェンスが整う前にリスタートして一気にトライ。ついに29−34と5点差に迫り、勝負の行方が分からなくなった。

 だが、足元に火がついても帝京の選手たちは落ち着いていた。早く攻めたい相手のパスミスを逃さず、ボールを奪ってゴール前に突進。強力FWがじわじわと押し込んでいく。時間を使った上に、体を張って守る早大の選手たちを消耗させながら、最後はHO坂手淳史が強引にボールをグラウンディング。勝負どころでのトライで41−29となり、5連覇が大きく近づいた。

 残り時間は10分。早大の反撃を帝京はがっちりと受け止め、試合をコントロールする。終了間際にトライを許したものの、直後にノーサイドのホイッスルが鳴った。

「上級生を中心に誠実な積み重ねをしている」と帝京大の岩出雅之監督は偉業を達成した選手たちを称えた。この日のスタメンで4年生はキャプテンのCTB中村亮土や竹田、No.8の李聖彰ら4人のみ。トライをとったのは小瀧、磯田が3年、深村が2年、松田が1年と、下級生が伝統を受け継ぎつつ、経験を積み、強い組織を形成している。

 帝京大の今季の目標は「打倒トップリーグ」だ。「トップリーグにも立ち向かっていきたい」と中村キャプテンは言い切った。2月16日から始まる日本選手権で社会人のチームにどんな戦いをみせるか。彼らのシーズンはまだ終わっていない。