王貞治、梨田昌孝、高橋慶彦、小谷正勝、荒川博、広岡達朗、関根潤三……超一流だけが知りえる世界
 講談社「本」で展開していた達人たちへのインタビュー連載を新書にまとめました。その道を極めた野球人ならではの技術論、育成論、人材発掘論を二宮清純が深く掘り下げます。「プロの極意」がわかる貴重な証言を300ページにわたり掲載。野球シーズン開幕にむけ、ファン必携の一冊です。
 本書に登場する名人たちの証言(抜粋)

<はっきり言って、僕は審判よりもストライク、ボールの判定に関しては自信を持っていました。だから僕がボールと判断して見逃したのに、審判がストライクと言おうものなら“審判が間違えたな”と思っていました。それくらいの自信がなければ、バッターボックスには立てません>(王貞治)

<睡眠だけはきっちりと7、8時間とりましたけど、それ以外はバットを振っていた。と言うと“慶彦さんは遊びもしなかったのか?”と思われるかもしれないけど、そうじゃない。小学生の時間割と一緒です。あらかじめ時間さえ決めておけばいい>(高橋慶彦)

<僕の考えでは感性は持って生まれたものだけど、感受性は後で身につけられるもの。決して才能には恵まれていなくても、感受性がいい選手は伸びるというのが僕の実感です>(小谷正勝)

<ONだけじゃなく、あの金田(正一)さんにも僕らは平気で文句を言っていたからね。「カネさん、悪いけど、あなたが来てから給料が上がらなくなったんだよ」なんてね(笑)。「なにぃ、この雑魚が!」って怒っても、こっちは涼しい顔して「まぁ、こういう雑魚がいるから、このチームは強いんです。ONだけじゃ、このチームは勝てませんからね」と言い返してやった>(黒江透修)

<長嶋茂雄を見てください。「どうやって打つんですか?」「どうやって守るんですか?」と聞いても、明確な答えは返ってきませんよ。なぜなら現役時代、彼は無意識でプレーしていたからなんです。そして、これが本物のスーパースターなんですよ。無意識でプレーできなければ一流とは言い難い。そこまで持ってくるのが指導者の仕事なんです>(広岡達朗)

『プロ野球 名人たちの証言』

序章 メジャーリーグと日本野球
・田中将大、大型契約の背景
・日本人ショートはなぜ潰されるのか

第1章 王貞治かく語りき
・WBCと日本代表
・川上哲治監督の遺産
・ボールの中をバットが通り過ぎるように
・大石、山田、江夏……伝説の舞台裏

第2章 極意の証言
・梨田昌孝「監督と捕手のあいだ」
 いてまえ打線の秘密/コンニャク打法の真実/盗塁を刺す極意
・西山秀二「マスク越しの視点」
 捕手は打ってナンボ/打者はボールでも振る/桑田のコントロール、イチローの究極スイング
・高橋慶彦「練習は質より量」
 素振りをする力/盗塁とは反射である/江夏の逆算、古葉監督の器
・得津高宏「打撃の系譜学」
 手の甲で打て/ボールの出所を見よ/金田監督の遺産
・究極を見た打者たち
 内川聖一の感覚/青木宣親のフラットスイング/宮本、稲葉、橋上……“野村野球”の後継者たち/バレンティンは日本育ちの怪物

第3章 投手という世界
・小谷正勝「名伯楽の投手育成術」
 山口鉄也を作った男/軸と回転、ヘッドの走り/水の入った瓶をブチ抜け
・高橋善正「シュートピッチャーの心意気」
 澤村拓一と大学野球の現状/完全試合とON/投手コーチの醍醐味
・スライダーとフォーク
 成田文男=最高のスライダーを投げた投手/上原浩治が打たれない理由

第4章 V9巨人とその遺産
・荒川博「王貞治はいかにして生まれたか」
「坊や、左で打ってごらん」/一本足打法のルーツ/ベーブ・ルースとA・ロッド
・黒江透修「V9巨人の真実」
 二遊間の名コンビ/牧野コーチの力/高い共通目標が勝ち続けた理由/監督とヘッドコーチのあり方
・高田繁「ゴールデングラブとGM」
 外野手の奥義/ONのすごみ/日本ハムはなぜ強くなったか
補論 野村克也の川上哲治論

第5章 達人たちの視点
・広岡達朗「指導者たることの矜持」
 無意識にできるまで繰り返す/ヤクルト、西武、優勝の裏で/監督とコーチのあるべき関係
・関根潤三「元祖二刀流の眼」
 大谷翔平は面構えがいい/根本陸夫との縁
・村上孝雄「伝説のスカウトの着眼」
 確認するのはキャッチボールと、男前かどうか/代打の切り札として対戦した名選手たち

(講談社現代新書/定価:850円+税/二宮清純著)
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