トレーニングキャンプ中のサッカー日本代表が最終日となった9日、流通経済大学と練習試合(45分×2)を行った。1本目はゴールをあげられなかったが、2本目にFW川又堅碁(新潟)、MF南野拓実(C大阪)がゴール。2対0で勝利し、国内組のみで行ってきた3日間の合宿を終了した。
(写真:積極的な仕掛けでアピールした南野)
 合宿最終日、23人の選手たちが、文字通り“サバイバルマッチ”に臨んだ。その中で、指揮官の心を揺さぶった選手は何人いたのか――。

 1本目のメンバーは以下の通り。
 FW豊田陽平(鳥栖)、MF工藤壮人(柏)、高萩洋次郎(広島)、齋藤学(横浜FM)、青山敏弘(広島)、長谷川アーリアジャスール(C大阪)、DF今井智基(大宮)、昌子源(鹿島)、山下達也(C大阪)、安田理大(鳥栖)、GK権田修一(F東京)※30分に東口順昭(G大阪)と交代。

 今井、昌子、山下以外は過去に代表招集経験のある選手がピッチに立った。各々が代表生き残りをかけて積極的なプレーを見せたいところだったが、逆に、流経大にチャンスを幾度もつくられる苦しい展開。急造の守備陣ということもあり、ラインコントロールやマークに受け渡しなどでミスが多かった。

 攻撃面では、サイドからかたちをつくろうとしたものの、クロスの精度を欠き、なかなかシュートにまで持ち込めなかった。17分、青山がピッチ中央付近から縦にロングボールを出し、豊田が抜け出すも、シュートはGKの正面。32分には工藤がPA内でシュートを放ったが、ゴール右へ外れた。結局、1本目はスコアレスのまま終了した。不完全燃焼の感が強く、工藤は「(合宿の)要所要所で良さは出せたと思うが、今日に関しては結果を出せなかった」と悔しさを口にした。
(写真:サイドハーフで出場した工藤はノーゴールに終わった)

 そんな1本目と一転して、個々の良さを前面に押し出せていたのが、2本目のメンバーたちだ。出場選手は以下の通り。
 FW川又、MF南野、原口元気(浦和)、石原直樹(広島)、柴崎岳(鹿島)、高橋秀人(F東京)、DF槙野智章(浦和)、水本裕貴(広島)、鈴木大輔(柏)、塩谷司(広島)、GK東口※30分に林彰弘(鳥栖)と交代。

 5人が初の代表というフレッシュさもある陣容だった。ディフェンスラインの選手たちは積極的に声を出して周囲を動かし、うまく連動して流経大にチャンスをつくらせない。特に初代表の塩谷は、右サイドバックとして効果的なオーバーラップで攻撃参加し、チームのリズムを活性化させた。20分からは鈴木とポジションチェンジし、センターバックとしてもプレーした。「自分の持ち味である攻撃力を出したいと思ったていたので、いいタイミングで攻撃参加できていたと思う」と塩谷。リーグ戦で6戦4ゴールという好調ぶりを代表でも示した。

 オフェンスでは、各選手がゴールに向かう意識を強く出していたように映る。SBを含めて両サイドが高い位置を保ち、流経大を押し込む。ボランチからのロングボール、少ないタッチ数でのパス回し、そしてドリブル突破。各自の得意なプレーで、指揮官にアピールした。20分には、左ハーフの南野が、トップ下・原口とポジションチェンジ。これにより、南野も原口もボールを受ける回数が増え、より積極的にドリブルで仕掛けるようになった。

 得点が生まれたのは30分だ。右サイドからのクロスに、南野がニアサイドでつぶれ約となり、流れてきたボールに川又が左足で押し込んだ。そして35分には、南野が追加点。左サイドから柴崎がゴール前に入れたボールがこぼれる。これを南野が拾い、左足でゴールに蹴り込んだ。南野は「ゴールに関われたのはよかった」と納得の表情で試合を振り返った。それでも今合宿最年少の19歳は、「いくつかの場面では仕掛けられたけど、もうちょっと攻撃のところで形になっていなかったし、フィニッシュまで行けなかった。もう一つ高い質にこだわっていくことがチームに帰ってから大事」と更なるアピールを誓った。
(写真:クロスに合わせる川又。奥は南野)

「今日できたことを評価するのではなく、何をしようとしていたのか、何がこの3日間で能力的にできるのか、そういったことを重点的に見ていこうと思っていた」
 ザッケローニ監督は練習後、合宿を総括してこう語った。今日の試合では特に、所属クラブとは異なるポジションでの動きをチェックしたようで、「(異なるポジションでも)いけるかなというポジティブな反応があったのは良かった」と収穫を口にした。その意味で、南野や塩谷はいいアピールができたと言っていいだろう。

 今合宿で指揮官が強調していたのは、「情報量の少ない選手を手許で見たい」ということだった。ゆえに、この3日間でW杯登録メンバーに当確したかどうかという判断にはならないはずだ。ザッケローニ監督は今後、欧州組の視察に向かい、帰国後、再び国内組の視察を行う。
「(メンバー発表まで)360度、全面的に何一つ疎かにすることなく、情報を集めていきたい。海外組、国内組、全員を平等に見ていく。できる限り、ギリギリまで悩みたい」
(写真:塩谷はSBでもCBでも安定したプレーを見せた)

 5月12日のメンバー発表まで、約1カ月。ブラジル行きのチケットをかけた争いが、クライマックスに突入する。