15日、世界バトミントン連盟(BWF)公認のスーパーシリーズ(SS)・ヨネックスオープンジャパン最終日が東京体育館で行われた。女子ダブルスでは高橋礼華&松友美佐紀組(日本ユニシス)が垣岩令佳&前田美順組(ルネサス)との日本人対決で勝利し、SS初制覇。大会の日本人同種目初優勝を成し遂げた。その他の種目では男女シングルス、混合ダブルスでリー・チョンウェイ(マレーシア)、リー・シュェルイ(中国)、ツァン・ナン&ツァオ・ユンレイ組(中国)とBWF世界ランキング1位の選手・ペアが優勝。リー・チョンウェイは同大会3年連続5度目、ツァン・ナン&ツァオ・ユンレイ組は2年連続3度目、リー・シュェルイは初の優勝だった。男子ダブルスはイ・ヨンデ&ユー・ヨンソン組(韓国)が制した。
(写真:5度目のSS決勝で念願の初優勝を手にした高橋<奥>と松友)
 5度目の挑戦にして、ついに栄冠を手にした。宮城の聖ウルスラ学院英知高校時代からダブルスを組み、日本のトップダブルスまでに成長した高橋、松友の“タカマツ”ペアが、SS初優勝を達成した。

 女子ダブルスは北京五輪では末綱聡子&前田の“スエマエ”ペアが4位、ロンドン五輪では藤井瑞希&垣岩の“フジカキ”ペアが銀メダルを獲得。その系譜を継ぐ者として期待される“タカマツ”ペアは、ロンドン五輪以降、全日本総合を3連覇。SSでも安定した成績を残すようになった。5月には国・地域別対抗女子団体戦のユーバー杯で、第1ダブルスとして、6戦全勝。日本の33年ぶりの準優勝に貢献した。BWF世界ランキングは現在4位につけている。

 12年のデンマークオープンに始まり、13年のマレーシアオープン、シンガポールオープン、今年のマレーシアオープンと準優勝は4度経験してきた。SSの下位のグレードにあたるグランプリゴールドなどの国際大会を制したことはあったが、五輪、世界選手権に次ぐSSの頂点にはわずかに届いていなかった。

 今大会は、1回戦で中国ペアをストレートで下すと、2回戦はBWF世界ランキング14位のオランダペア、準決勝では同5位の韓国ペアもストレートで撃破した。決勝の相手は、垣岩&前田組。本格的にペアを組んで1年足らずだが、同6位まで上げてきた。ともに別のペアで五輪を経験しているナショナルチームの先輩である。5月には国・地域別対抗女子団体戦のユーバー杯で33年ぶりの準優勝を果たしたチームメイトだった。

 相手が決まった時点で高橋は「(ヨネックスオープンの)日本人初優勝は自分たち」と固く決意したという。一方の松友は前日に用意された表彰台を見て、「一番高いところに立ちたい」と闘志を燃やした。

 互いに知っている相手ということもあり、苦戦を予想していたが、第1ゲームは高橋&松友組がコート上を支配した。松友が前衛でゲームを作り、後衛の高橋が決めるという得意の型がハマり、序盤から得点を重ねた。13−7、18−8の場面では高橋が強打と見せかけて、コート前方に落とす技ありのショットを見せるなど、終始相手をリードした。最後は相手のシャトルがアウトになり、21−13で1ゲーム目を先取した。

 第2ゲームは垣岩、前田の強打に押され、6−2とリードを広げられた。それでも慌てない高橋&松友はここから8連続ポイントで一気に逆転。1点を返され、3点差に迫られたところで松友のショットが決まり、再び4点リード。松友は左手を握り、ガッツポーズを作った。

 その後も小刻みに加点を続け、前田のリターンがネットを揺らすと20−14でマッチポイントを迎える。そこで少し優勝を意識したのか、3点連続で返される。それでも最後は押し切り、21−17で制した。その瞬間、松友は跳び上り、高橋は噛みしめるようにガッツポーズを何度も作った。そして2人は抱き合って、喜びを分かち合った。

 昨年の世界選手権では初戦敗退と悔しい思いをした。その敗戦が糧になっている。松友曰く「やることが明確になった」という。決勝で優勝ペアのワン・シャオリー&ユ・ヤン組(中国)のプレーを見て、それを手本にした。押されていてもレシーブから攻撃へと展開する。松友が前、高橋が後ろと縦の関係を作れれば、負けない自信がある。今大会でもレシーブ拾いながら、相手の型を作らせず、自分たちのペースへと持っていった。決勝の対戦相手の垣岩も「攻めていても押されている気持ちになった」と、その術中にはまったかたちだ。

 ロンドン五輪の日本代表入りを逃し、「次は自分たちが」と誓い合った高橋と松友。リオ五輪の選考レースでもトップを走るが、2人の目標はあくまでリオデジャネイロ五輪での金メダル。SSはその通過点に過ぎないと捉えている。松友は「まずひとつ達成できた」と喜びつつも、それに浸るつもりはない。SSに出始めた頃は初戦敗退ばかりだったという2人。そこから初優勝までの道のりを「長かった」と口を揃えるが、高橋は「勝てなかった時期があって、今がある」と経験を無駄にはしなかった。

 地元開催とはいえ、SS初優勝の経験は更なる成長を促すに違いない。明日からSSプレミアのインドネシアオープン(ジャカルタ)が控え、8月に世界選手権(デンマーク・コペンハーゲン)、9月にアジア競技大会(韓国・仁川)と大きな国際大会が続く。最大のライバルはランキング上位を占めるパオ・イーシン&タン・ジンファ組ら中国勢になるだろう。五輪の頂点を狙うならば、こちらも通過点としてクリアしなければならない。

(文・写真/杉浦泰介)