飛行機を乗り継ぎ6時間、日本代表のグループリーグ最終戦(対コロンビア)が行われるクイアバにやってきた。飛行機を降りて、空港内まで外を歩いた数分間で、クラクラするほどの暑さに驚いた。さすがは6月の最高気温が37度を記録したこともある灼熱地帯。レシフェとナタルは海沿いで、風もありまだ爽やかさが感じられた。だが、クイアバは風も少なく、さらに湿地帯ということもあってズシッと体にのしかかるような暑さである。
(写真:クイアバの街並み。発展中の市街地の前に未開拓地が広がる)

 筆者は到着後に、少し街を散策してみたが、信号待ちをしている時でさえ、汗がにじみ出てきた。その分、建物内は冷房がガンガンに効いており、寒さを感じるほど。この内外の気温差で体調を崩さないように、訪れる日本サポーターも気をつける必要があるだろう。

 日本代表にとっては、ここで米国・フロリダで行った暑熱対策を生きてくるのではないか。事前合宿地だったタンパでは気温30度を超える日もあり、気温だけをとればクイアバに似ている。キックオフ時間は16時。まだまだ暑さが残っている時間帯だ。体力が削られていく中で、どれだけ集中力を保てるか。これがコロンビア戦のポイントになるだろう。

 もちろん、サポーターの声援も欠かせない。大型ショッピングモールでは、ブラジル代表より、コロンビア代表のユニフォームを着用している人の方が多かった。コロンビアはここまでの2試合ともに、スタジアムがホームカラーの黄色に染まった。日本戦にも熱狂的なサポーターが多く駆けつけているようだ。数で不利なのは仕方ないとして、日本サポーターにはコロンビアサポーターに負けない“熱い”応援を期待したい。

 さて、クイアバで暑さ以外に印象に残ったのは、同都市のW杯歓迎ムードの薄さだ。これまでに訪れた都市は道路沿いにサッカーボールの建造物があったり、各国の国旗を掲げたりしていたが、クイアバではまだ見かけていない。

「この街の人々はそこまでサッカーに熱狂的ではないんだ」
 こう語ってくれたのは筆者が乗ったタクシーの運転手だ。何でも、クイアバには「Cuiabá Esporte Clube」というクラブがあるが、ブラジル全国選手権は3部所属であり、クラブも2001年にできた新興クラブ。運転手は「俺はサッカーにあまり興味がない」と苦笑していた。クイアバの住民全員がそうではないだろうが、少なくともサッカー王国の中では、サッカーへの関心度が低い土地なようだ。
(写真:じりじりと焼けるような日射しが照りつける)

 そんなクイアバの人々に、ザックジャパンが魅力あるサッカーを披露すれば――日本の試合を見て、1人でもサッカーにもっと関心を抱いてくれれば、日本サッカー界にとってそれほど嬉しいことはないだろう。最も、ブラジルの真裏である日本では、国全体がザックジャパンの戦いに注目している。コートジボワール戦、ギリシャ戦は不甲斐ない結果に終わった。コロンビア戦でも同じ轍を踏むわけにはいかない。勝っても、負けても、引き分けても、観ている人々の心からの拍手が送られる。そんなサッカーを、ザックジャパンにクイアバで見せてもらいたい。

(文/写真・鈴木友多)