9日、FIG世界体操競技選手権の男子個人総合決勝が中国・南寧で行われ、世界王者の内村航平(KONAMI)が点で5連覇を達成した。内村は世界選手権通算7個目の金メダル、総数でも15個のメダルを獲得し、日本人最多タイ並んだ。2位には前回大会4位のマックス・ウィットロック(英国)90.473点が入った。3位には個人総合で自身初の決勝進出を果たした田中佑典(KONAMI)は90.449点で入り、銅メダルを獲得した。
 場所がどこであろうと関係ない。王座は微塵も揺るがなかった。0.1点差に泣いた団体戦から2日後の個人総合決勝で、内村が6種目でほぼ完璧な演技を見せてV5を達成した。

 予選1位の内村、同6位の田中は第1班でスタート。第1ローテーションは内村が得意とするゆかからだ。第1班の5番目で演技を開始した内村は、「全部止めてやろうと思った」と技を繰り出すことにビタッと止まる着地。力強い美しい圧巻の演技のフィニッシュはD難度の後方宙返り3回ひねり。大きく深呼吸をしてから助走すると、着地も決めた。Dスコア(難度点)は6.6点、Eスコア(10点満点の出来栄え点)は9.166点と15.766点を叩き出した。第1ローテーションでは、別の班にいたウィットロックがあん馬で16.000のハイスコアをマークしたため内村は2位スタート、内村の次に演技し15.200点をゆかで出した田中は7位スタートとなった。

 第2ローテーションはあん馬。内村はいつものように競技を待つ間、目を瞑り、両手を動かしながら演技をイメージしていた。E難度のウ・グォニアンで少しぶれたが、しっかりまとめて演技を通した。9点近いEスコアで15.133点をマークした。これで内村は第2ローテーションを終えて、全体トップに立った。一方の田中は14.200点で8位に順位を落とした。

 続くつり輪でも安定した演技を見せる内村。力強いパフォーマンスで繋ぎ、最後は後方2回宙返り2回ひねりで着地もピタリと止めた。15.000点でトップをキープ。第4ローテーションの跳馬で、内村はさらに凄みを増す。「ヨー2」(前転とび前方伸身宙返り2回半ひねり)に挑み、着地も完璧に決めた。マットに止まった直後に、内村は破顔一笑。それほど納得の出来だったのだろう。ジャッジもEスコアに9.633という高得点を付けた。跳馬は全体1位の15.633点だった。

 残り2種目となり、1位は61.522点で内村のまま。2位とは0.533点差をつけていた。9位と出遅れていた田中も平行棒と鉄棒は得意種目。ここからの巻き返しに懸けた。まずは内村が着地で少し下がったものの、15.200点で2位との差を1.2点以上に広げた。田中はEスコア9.283点という美しいパフォーマンスで15.833点と全体トップを叩き出し、一気に順位を5位に上げ、メダル争いに名乗りを上げた。

 最終種目は鉄棒。先に演技をした田中は、Dスコア7.1点、Eスコア8.400点の15.500点で平行棒に続き全体トップの得点を出し、この時点でトップに立った。後に演技したウィットロックに抜かされたものの、最終演技者の内村を迎えた時点で2位につけていたため、ここでメダルは確定した。「(加藤)凌平が出れない分、メダルを獲ろうと思っていた。(前回の加藤と同じ)銀メダルではないけど良かった」と喜んだ。

 個人総合の大トリを務めるのは、ディフェンディングチャンピオン。落下などの大過失がない限りは、優勝は決まっていると言っても過言ではない。G難度のカッシーナから入り、アドラーひねりからコールマン、アドラー1回ひねりからヤマワキと技を決めていく。最後の伸身新月面は着地で動いたが、こらえた。15.233点を上乗せし、91.965点。2位に約1.5点の差をつけて5連覇を達成した。

 前人未到のV5、そして金メダルの獲得数は日本人最多タイの7個目となった。総メダル数でも日本人最多タイの15個目のメダル。それでも内村は、頂点に立つだけでは満足しない。「結果として見たら金メダル、5連覇だけど平行棒と鉄棒はしんどかった。いい演技ができていない。あそこで失速してしまった。まだまだかなと思います」。出場選手でただ1人全6種目で15点オーバーをマークした。それでも絶対王者は完璧を追い求める。

<男子個人総合決勝>
1位 内村航平(KONAMI) 91.965点
2位 マックス・ウィットロック(英国) 90.473点
3位 田中佑典(KONAMI) 90.449点